
「高収入」や「簡単な仕事」など、一見すると普通のアルバイトにも見える募集から、犯罪に巻き込まれていく「闇バイト」。
中高生1万人以上へのアンケートから、少年らの意識及び実態の一端が見えてきた。

神奈川県警相模原南警察署が7月から8月にかけて、相模原市南区の中学校、高校、中等教育学校の生徒を対象に、「闇バイトに関するアンケート調査」を実施。
調査は、5月に栃木県内で発生した強盗殺人事件で、相模原市在住の高校生を含む少年らが逮捕されたことを受け、今後の防犯指導や広報活動に活用することを目的に行われた。
対象となったのは、1万2886人。
「闇バイト」という言葉はほぼ全員が認知
「『闇バイト』という言葉を知っていますか」と尋ねた設問では、「よく知っている」が7085人、「聞いたことはある」が4018人だった。「名前は知らなかった」は14人、「わからない」は68人にとどまった。
回答者の大半が「闇バイト」という言葉を認識しており、「よく知っている」と「聞いたことがある」を合わせるとおよそ99%に達した。
少なくとも言葉の認知という点では、「闇バイト」は中高生にとって決して知らない言葉ではなくなっている。
しかし、次の設問では、認知と理解の間に差があることが分かった。
「闇バイト」 十分理解は4人に1人
「『闇バイト』について、どのような内容か理解していますか」との問いに、「十分理解している」と答えたのは3000人。「ある程度理解している」は7077人だった。
一方、「あまり理解していない」は883人、「まったく理解していない」は142人。「十分理解している」と答えたのは4人に1人程度だった。
「闇バイト」という言葉を知っていることと、それがどのような仕組みで犯罪につながるのかを、十分に理解していることは、必ずしも一致していないことがうかがえる。
25人に1人が「勧誘を受けた」

さらに注目されるのが、実際の経験について尋ねた結果だ。
「これまでに『闇バイト』と思われる勧誘を受けたことがありますか」との設問では、453人が「ある」と回答。全体の4%にあたる。
単純に人数の割合で見ると、およそ25人に1人が、闇バイトと思われる勧誘を受けた経験があることになる。
「ない」は9973人で90%、「わからない」は652人で6%だった。
ここでいう「闇バイトと思われる勧誘」は、実際に犯罪行為を依頼する勧誘だったかどうかまでは、この調査結果だけでは分からない。
それでも、1万人以上の調査で400人を超える生徒が「勧誘を受けたことがある」と答えたことは、闇バイトが中高生から遠い存在ではないことを示す数字ともいえる。
「自分」だけでなく「友人から聞いた」も4%

さらに、「知人や友人から『闇バイトに誘われた』『怪しい仕事を紹介された』という話を聞いたことがありますか」と尋ねたところ、「ある」は442人で4%だった。
「ない」は1万221人で92%、「わからない」は393人で4%。
こちらもおよそ25人に1人が、友人らから闇バイトや怪しい仕事に関する話を聞いた経験があることになる。
闇バイトをめぐる接触が、少なくとも一部の生徒にとって「ニュースで見る遠い犯罪」だけではなく、身近な人間関係の中でも話題になる程度に近づいていることは読み取れる。
SNSやLINEなどから勧誘 中には街中でも

勧誘を受けたと答えた生徒に、「どこで勧誘されましたか(複数回答可)」と尋ねたところ、最も多かったのは、インスタグラムやXなどの「SNS」で288人だった。次いでLINEなどの「メッセージアプリ」が250人。
このほか「ゲーム内チャット」が31人、「知人・友人・先輩」が29人、「アルバイト募集サイト」が21人となった。
なかには「街中で直接」声をかけられたと答えた生徒も15人いた。
勧誘の多くはインターネット上で行われている一方、ゲーム内のやり取りや知人からの紹介、さらには街頭での声かけまで、入り口が1つに限られていない実態も浮かんだ。
「知っている」から「見抜ける」へ

今回の調査結果を並べると、特徴的な構図が浮かぶ。
「闇バイト」という言葉を知っている、聞いたことがある生徒はおよそ99%。
一方で、その内容を「十分理解している」のはおよそ27%。
そして、「闇バイトと思われる勧誘を受けたことがある」はおよそ4%だった。
つまり、「闇バイト」という言葉自体は広く知られている一方で、それがどのようなものなのか、実際の勧誘をどう見抜くのかというところまで、理解が追いついているとは言い切れない。
アンケートに答えた生徒からは、「闇バイトと気づかずに加担していたら怖い」「闇バイトと普通のバイトを区別できずに間違えるか不安」「勧誘に騙されてしまいそう」などの声が上がった。
生徒たちが不安に感じているのは、単に「闇バイトは怖い」ということだけではない。自分が知らないうちに犯罪に巻き込まれてしまうのではないかという不安もみえる。
実際「闇バイト」は、最初から「犯罪に加担してください」と明示して募集されるとは限らない。「簡単に稼げる仕事」「高収入」「即日払い」など、一見すると通常のアルバイトにも見える形で接触し、やり取りを重ねる中で、犯罪に巻き込まれるケースもある。
だからこそ、「闇バイトと普通のバイトの区別を教えてほしい」「勧誘の手口など具体的な手段を教えてほしい」「授業などで闇バイトについて知れる機会があればいい」などといった声が上がった。
一方で、不安の対象は「自分」にとどまらない。
「断ったり、無視したら、殺されたりしないか」「家族が狙われないか心配」「ネットで知り合った友人が闇バイトに加担していたら不安」など、勧誘を断った後や、身近な人が巻き込まれた場合まで想像した声もあった。

また、SNS上での勧誘が多い実態を踏まえ、「SNSでの闇バイト勧誘に関する規制を強化すべき」「未成年にDMを送ることができないようなシステムがあれば、被害は阻止できる」とSNS側の仕組みや社会全体の対策を求める声もあった。
今回のアンケートから見えてきたのは、「闇バイトを知らない」中高生ではなく、「知っているけれど、自分が見抜けるかは分からない」という中高生の姿だった。
言葉を知っているだけではなく、どんな誘いが危険なのか。どこで立ち止まるのか。そして、困ったときに誰に相談するのか。そこまでを具体的に知っていることが、被害を防ぐためには重要になる。
