
砂漠化が進む中央アジアの「アラル海」。その土地を再生し、緑化に挑戦する大学生の奮闘と、さらなる広がりを見せるその思いに密着しました。
【画像】中央アジア・アラル海の縮小 海岸だった場所が1年で…
宮城県で海岸林の再生
見渡す限り広がる広大な大地。ここは中央アジアにあるアラル海。年々、水は干上がり、砂漠化が進行。縮小の一途をたどっています。
そんなアラル海の緑化に、奮闘する大学生がいます。
東北大学 4年生
柚原結女さん(22)
「負の場所であると思われている所に、何か新しいプラスなことを作っていく」
「私は諦めたりしないかな」
世界の環境問題に挑む、彼女の挑戦を取材しました。
今年6月に番組が訪れたのは、宮城県名取市。海岸沿いには、松林が広がっていました。そこにいたのが、東北大学農学部の4年生・柚原結女さんです。
大学で水や土壌について研究する傍ら、砂や潮などの侵入を防ぐ、海岸林の再生プロジェクトに参加してきました。
2011年に起きた東日本大震災。名取市の海岸林も津波により、大きな被害が出ました。
それから15年、名取市には再び松林が…。市民生活や農業の復興に不可欠な海岸林が、徐々に戻ってきています。
大学進学を機に、ボランティアに興味を持つようになったという柚原さん。この場所は柚原さんにとって、原点となった場所だといいます。
「大学生活の転機になった場所。ここに来なかったら、やっていなかったことがたくさんあると思って、そういう意味では“始まりの地”」
ボランティア活動を通じ、柚原さんの心に芽生えた緑化への思い。その強い思いは、海を渡りました。
アラル海の緑化目指す
かつて、世界で4番目の大きさを誇った湖・アラル海。中央アジアにあるウズベキスタンとカザフスタンの国境に広がる塩湖で、旧ソ連時代には漁業も盛んに行われていました。
しかし、年々、水が干上がり、わずか半世紀で面積は10分の1にまで縮小してしまいました。
1960年以降、アラル海に注ぎ込む2つの川から、周辺の砂漠地帯に水路を引いたことで、湖の水が激減してしまったのです。
塩分が残された土地は植物が育ちにくく、砂漠化が進行。アラル海で起きたことは「20世紀最大の環境破壊」と言われています。
日本で海岸林の再生に取り組むなか、アラル海の現状を知った柚原さんは、単身ウズベキスタンの大学に留学。そして、現地政府主導の植林プロジェクトに参加しました。
一体どうやって、砂漠化してしまった大地を緑化していくのでしょうか。
塩に強い木で緑を増やす
カギを握るのが、中央アジアに自生する「サクサウール」という木です。
「サクサウールは砂漠気候に適していて水分がない環境でも生きられる。塩にも強い植物で、塩害地でも育つことができる」
こうした植林により、現地の人たちの生活を苦しめている、砂の移動を止め、失われた湖を森に変えていこうとしているのです。
しかし、塩分が強く残ってしまった地域では、ただ植えるだけでは植物が育ちません。そこで…。
「(Q.黒い液体は何のために?)土壌の中の水分を保持する役割があるので、これを入れることによって土の中の水分を保つことができる」
柚原さんたちは、保湿効果のある、さまざまな素材と一緒に植えることで、サクサウールを効率的に育てる方法を模索していたのです。
そんな柚原さんの奮闘は、地元の人たちの心も大きく動かしています。
植林活動に参加 エルブルースさん(当時40)
「日本からアラル海の問題を解決しようと、植林活動をする人が来るとは、夢にも思いませんでした。来てくれてすごくうれしく思います。外国の人がアラル海の問題解決に取り組んでいる姿を見て、私たちも何かしなくてはと感じます」
さらに柚原さんは、森を作るためだけではなく、地元の人たちの生活を支える植林も行っていました。一体、どういうことなのでしょうか。
現地の新しい収入源に
砂漠化が進むアラル海で、柚原さんらが進める、地元の人たちを支える緑化とは?
「これから、ニクジュヨウの講習会を行ってきます」
「ニクジュヨウ」とは、サクサウールなどに寄生して成長する植物。茎を乾燥させたものが漢方薬として使われ、日本でも栄養ドリンクなど、身近な商品に使われています。
柚原さんは、そのニクジュヨウの育て方を現地の人たちに教えています。
「アラル海の縮小によって、現地の方の仕事が奪われてしまっている現状があるなかで、新しい収入源を見つけることは、こちらに住む方の生活向上につながると考えています」
収益を生むことでアラル海の緑化を加速させることができる。そんな思いが込められています。
「正直、アラル海(の問題)も日本にいる時は感じていなかったんですけど、この(留学)1年じゃもったいないなって思うぐらい、もっと何年もかけて関わりたいなという考えに今は変わっています」
直面した厳しい現実
今年3月にも、再びアラル海を訪れた柚原さん。目の当たりにしたのは、厳しい現実でした。
看板が立っているのは、2025年時点で海岸だった場所。しかし、今年になると海岸はずっと奥にありました。
「それ(海岸)を見て、アラル海の縮小というものを肌で感じました」
しかし、柚原さんは諦めません。今月もアラル海へと向かっています。なぜ、そこまで強い思いを抱き続けられるのでしょうか。
「アラル海という場所が自分にとって、大事な場所になっているからだと思います。言語も何も分からないまま飛び込んだなかで、現地の方が受け入れてくださって、人生のなかで大事にしたいこととか深く考えさせられる時間でもあって、感謝が強くて、恩返ししたい」
柚原さんが描く未来図
アラル海の緑化を目指す柚原さんに、思い描く未来図を描いてもらいました。
10年から20年後のアラル海を描いたということで、植樹された木などの間に、足跡や車の轍(わだち)が描かれています。
「砂漠化して人の健康を害する要因となっていた不毛の地・アラル海が、植林が進み、緑で覆いつくされ、ニクジュヨウなどを生み出すことで、多くの人が目的地として訪れるようになり、地元の人々にとっても、意味のある場所になってほしい」という思いが込められているということです。
(2026年9月30日放送分より)
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