
今年のノーベル化学賞に東京理科大学名誉教授のそあい憲三さん(76)ら2人が選ばれました。
【画像】“生命起源の謎”解明に貢献…ノーベル化学賞 そあい憲三さん 最先端医療にも

ノーベル委員会は、そあいさんらの研究について、「医薬品や香味料などの製造のための反応を開発する化学者にとって革命的なものだった」と評価しました。
今回、受賞決定の理由となったそあいさん自身の名前がつけられた『そあい反応』。

これは全ての生命体に関係するメカニズムの話です。
化学の世界には『右手型』と『左手型』と呼ばれる2つの分子が存在します。
これを人工的に作ろうとすると、通常は『右手型』と『左手型』が50%ずつ均等に生成されます。
しかし、そあいさんが発見した反応は違いました。
例えば、最初に左手型の分子が、ほんの1粒だけ多かったとします。すると、その1粒が猛烈なスピードで自分と同じ型の分子を作る触媒として働き、少なかった右手型を圧倒します。少しでも不均等になった瞬間に、最終的には、ほぼ100%片方の分子だけが生成されることになるのです。

実際の実験データを見ると、そのすごさがよくわかります。
そあいさんは、スタート時の偏りが『わずか 0.00005%』という小ささでも、反応を繰り返すと、ほぼ100%に達することを証明しました。
「なぜ、地球上の生命体は、どちらか一方の分子だけに偏っているのか」。このモデルを示したことは、生命の起源そのものに迫る業績でもあると称賛の声が上がっています。

また、最先端の医療にも直結します。
薬の世界では、分子の型の違いによって、片方が「効き目のある薬」であっても、もう片方は「体に害を及ぼす毒」になってしまうケースが数多くあり、このそあい反応の応用によって、安全な新薬開発にもつながることが期待されています。
◆東京理科大学のそあい憲三名誉教授が、成し遂げた研究とは、どれだけすごいものなのでしょうか。日本科学未来館の加藤昂英さんに聞きます。

そあいさんが行った研究についてですが、“生命の謎”を解き明かすことに大きく貢献しています。
生命をつくるアミノ酸には、『右手型』と『左手型』のような“2種類”の形があります。ところが、地球上の生命は、なぜか『左手型』のアミノ酸を一方的に使っています。

なぜ、生命は『左手型』を選ぶのか、長年の謎でしたが、これをそあいさんは研究し、最初は、0.00005%というごくわずかな偏りだったのが、自己増殖して、最終的には99.5%まで増幅するという仕組みを科学的に世界で初めて実証しました。

(Q.そあいさんの研究成果が、生命の起源の解明にもつながっていくと評価されています。これはどういうことか、わかりやすく教えてください)
日本科学未来館 加藤昂英さん
「生き物の中のアミノ酸は、左手型のアミノ酸を使っているということですけれども、右手型のアミノ酸を使っても、生き物って、できそうな感じがあるかなと思います。どちらでも使えそうな感じがあるのですが、結果としては、左手側だけを生き物が使っているというわけです。それが、どうしてなのかというところが、謎だったわけなんです。そあい先生の不斉自己触媒反応というものを、やっていくことによって、もしかしたら、たまたまそうなっただけかもしれないんですけれども、たまたまの、わずかな違いというのが、どんどん増幅されていって、最終的には、どちらか片方にすごく偏ってしまう。そういった反応だったわけなんです。まさに、そういったことが、もしかしたら生命が誕生したときに起こっていたのかもしれない。そこが生命の起源の謎に迫る、迫り得る研究かなというふうに言えるかと思います」
(Q.今後、どういう分野に生かされていくのでしょうか)
日本科学未来館 加藤昂英さん
「やはり、基礎研究・基礎化学の受賞というところもありますので、そういった基礎化学、人類や生命の起源というのは何なのかというところに迫る研究というのもそうですし、応用面でいえば、医薬品の合成などもあるかなと思います。医薬品も左手・右手と、きちんと設計したものをつくらないと、人体に悪影響が出てきたりしますので、そういったものをきちっとつくっていく。そういう1ツールにもなり得るかなとは思います」
(Q.日本人のノーベル科学賞が2年連続と、研究者の功績が世界的に評価をされています。そのあたり、どのように受け止めていますか)
日本科学未来館 加藤昂英さん
「やはり、基礎研究の成果、基礎化学の成果がノーベル賞受賞ということになったのは、率直にうれしいなとは思っています」
