
ノーベル化学賞の受賞が決まった、東京理科大学名誉教授の硤合憲三さん(76)。
“生命の起源に迫る”とも言われる研究の裏には、知られざる硤合さんの素顔がありました。
【画像】教え子「配慮の人」ノーベル化学賞・硤合憲三さんの素顔
一夜明け…道行く人からも祝福

東京理科大学名誉教授 硤合憲三さん
(Q.自転車でどちらへ)
「その辺へ買い物に」
一躍、時の人となった研究者は、自転車を押してコンビニに。道行く人からも祝福されます。
素朴な人柄は、報道陣を気遣うこんな場面にも表れていました。
東京理科大学名誉教授 硤合憲三さん
「皆さん外で長い時間過ごされると思う。そこに志木市の公園があって、お手洗いもありますから。コンビニはそこに」

午後3時過ぎ、快挙に湧く大学には何重にも人だかりが。
拍手と花束で硤合さんを迎えました。
“生命の起源”迫る研究で受賞
1950年、広島で生まれた硤合さん。高校時代はバスケと数学に打ち込んでいたそうです。

高校の同級生 大崎裕章さん
「彼は受験勉強にはあまり興味がない。興味のあることに対しては深く深く入って勉強していた。公式を解いたりとか、世の中で解いていない問題を解いてやるっていう」
そんな硤合さんが大学で学び始めたのが、有機化学です。長年、東京理科大学を拠点に研究を続けました。
東京理科大学名誉教授 硤合憲三さん
「少し暗い所を頭にヘッドライトをつけて、そこをずっとたどっているような気分で。そういう研究ですね」
ノーベル賞の栄誉に輝いた硤合さんの発見は、“生命の起源”に迫る可能性を秘めています。

アミノ酸などの物質には、鏡に映したように対になっている『右手型』と『左手型』がありますが、人間を含めた生命体はほぼ片方のみしか持っていません。なぜ片方だけなのか。これは生命の長年の謎でした。
硤合さんは、最初はほぼ同じ量でも、ほんの少しの違いで、どちらかだけがどんどん増え、最終的にその型だけになる反応を発見しました。
これが“偏りの謎”、ひいては“生命の起源”そのものを解くカギになるかもしれないのです。
教え子「配慮の人」「細かく分析」
硤合さんの教え子で、20年以上、研究を共にしてきた川崎常臣さん(※崎=たつさき)。
硤合さんは「配慮の人」だと話します。

東京理科大学 川崎常臣教授
「例えば外国からお客さんをお呼びすると、この出口から出るとエレベーターがある、この出口は階段を歩かなくてはいけない、重い荷物を持っていると大変だから、こっちの出口を案内してとか。本当に細かいことまで配慮されて色んなことをする」
その姿勢こそが、研究者としてのすごみにつながっているといいます。

東京理科大学 川崎常臣教授
「非常に細かい所まで注目されて、細かく分析・解析をして、それを次の方針に転換して、硤合先生独自のアイデア・考え方を次の研究に注入して。うまくいくことが非常に多いのではないかと」
「前人未到の領域 面白い」
8日夜、硤合さんに話を聞くことができました。まずは、硤合さんの原点に迫る質問から。

東京理科大学名誉教授 硤合憲三さん
(Q.科学者を志したきっかけは)
「本人の持って生まれた方向性というか、そうだと思うんですよね。研究者になりたいというのは、今のサイエンスじゃなくても、人文科学・文学・歴史学でも研究やりたいということは本人の素質だと思うんですよね」
(Q.『暗闇の中ヘッドライトをつけて探す』なぜ研究を続けてこられたのか)
「たしかにね。そういう今ご質問いただいているように、意気込んでいるわけじゃないんですが、不斉自己触媒反応そのものは、まさに前人未到の領域なんです。ズバリすごいのが見つからなくても、検討した範囲ではこういう結果だったというのは、それはそれなりの結果というかな。私は非常に面白いテーマと思って」
基礎研究への思いも、熱く語ってくれました。

東京理科大学名誉教授 硤合憲三さん
「基礎研究はファンダメンタルというか、根底の方。奥が深いというと偉そうになるが、可能性としてはそういうことになる。応用はできるに越したことはないが、基礎は基礎で面白い。それはそれで評価していただいたということで、基礎研究を行っている皆さんにも喜んでもらえるんじゃないか」
(Q.根源に迫るのは時間も労力も要る)
「だけど面白いというか、やりがいがあること。『これが根源です』とは言えないが大事なこと。そういうことに携われるのは生きがいの一つ」
