
フランスで先月中旬から続いている学生による抗議デモが今、大きく変化している。一部が暴徒化し、市庁舎へ放火するなど混乱が広がっている。
治安部隊は催涙弾や放水で応戦
火の手が急速に広がり、激しく燃え上がる鐘楼(しょうろう)。これはフランス中部、リモージュの市庁舎だ。
19世紀に建てられた歴史的建造物がほぼ全焼する事態になった。原因は暴徒化したデモ参加者らによる放火だ。
デモ参加者
「バカ野郎マクロン!くそったれマクロン!」
17日、物価高への抗議や教育環境の改善を掲げ、フランス全土でデモが行われた。
当初、高校生らが始めたデモが今、様変わりしているという。
デモ参加者(21)
「今、最低限の食料品を買うだけでも100ユーロ(約1万8000円)は軽くかかる。一体どうやって生きていけばいいんだ?」
デモ参加者(59)
「不安なのは若者だけではないわ。私たちの声が届くまでこの状況があとどのくらい続くのでしょう」
内務省によると、参加者はおよそ55万人に達したという。
パリ市内の広場では、暴徒化した一部の参加者と治安部隊が衝突。デモ参加者が投石などを繰り返す中、治安部隊は催涙弾や放水で応戦。デモ参加者へ向けて一斉に突進する姿も見られた。
デモに乗じた放火も相次ぐ
一方、デモに乗じた放火なども相次いだ。
路上の車が、複数台まとめて炎上。燃え盛る車に、ごみ箱を投げつける人もいた。
物を投げつけられているのは、警察車両。その場から逃れようと、猛スピードで走り抜けていく。
さらに略奪行為も横行。スポーツ用品店の中にデモ参加者の一部が押し入ると、次々に商品を略奪し始めた。
そこに駆けつけた治安部隊。1人を取り押さえたようだ。
現地メディアによると、逮捕・拘束者の数はおよそ2400人に上り、警察官らおよそ1000人が負傷したという。
欧州各国はデモ拡大に注意
マクロン大統領は17日、デモに乗じた破壊行為について自身のSNSで「私たちの共和国に暴力の居場所はない」と非難した。
番組は、ヨーロッパの政治に詳しい慶応義塾大学の鶴岡路人教授に話を聞いた。
鶴岡教授は、ヨーロッパ各国はデモがさらに拡大しないかと神経をとがらせていると分析する。
「今回のデモの対応を誤ると、来年の大統領選にも響くというのが、フランスでは非常に大きな問題。他の国でもいくつか選挙を控えている国があります。そういった国の現職の政府は自国でどのようなデモが起きるのか。他の国からのデモがどのように波及してくるのか。非常に戦々恐々として見ている」
抗議デモ 欧州各地に拡大
フランスでのデモが激しくなる中、ヨーロッパ各地にも広がっている。
現在、分かっているだけでもベルギーやポルトガル、イタリア、アルバニア、ギリシャでもデモが起きているという。
フランス同様、教育環境の改善を訴えているだけでなく、物価高による生活の困窮が主な原因となっていて、中でも「住宅価格の高騰」が問題となっているようだ。
例えばポルトガルでは住宅価格は2017年以来、2倍に跳ね上がり、住宅取得の困難さは欧州でも最も深刻な水準にあるとロイター通信が報じている。
アルバニアでは平均月収がおよそ17万9000円。現地メディアによると、首都のティラナでは平均家賃がおよそ12万8000円と高騰している状況だ。
背景にトランプ一族計画?
アルバニアで家賃が高騰する背景の一つに、トランプ大統領の長女イバンカ氏の夫・クシュナー氏が関わるリゾート計画があるという。
クシュナー氏が関わっている投資会社の計画では、自然保護区に近い沿岸地域に高級ホテルや別荘などを建設するとしている。
現地メディアは、不動産関係者の話として、この計画が家賃相場を押し上げる要因になっていると指摘している。
今後、ヨーロッパでのデモはどうなっていくのか。鶴岡教授によると「家賃の高騰だけでなく、物価高で生活が苦しくなっているのが欧州各国で共通の課題となっている。一方で有効な経済対策を打つことができるかは、国によって限界と制約があるため、今後さまざまな国でデモの連鎖は続いていく可能性がある」と指摘している。
(2026年10月19日放送分より)
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