
65歳以上の就業者の数が過去最多となっています。物価高で年金だけでは生活が苦しく、働き続けるシニアも多くいます。
【画像】高齢者の“暮らしの助け”に 東京・荒川区内の町内会で商品券を配布
79歳介護職 再就職のワケ
森さん(仮名)(79)。障害のある18歳から64歳までの利用者が暮らすグループホームで食事や入浴など、日々の生活を支えています。
「皆さんに一生懸命やってあげたいから、大変だけどこの仕事好き」
森さんは、一緒に暮らす86歳の夫と合わせて月に16万円ほどの年金を受け取っていますが、79歳になった今も仕事を続けるのには訳があります。
「(仕事を辞めたら)もう何もぜいたくできない、つましい生活。もう楽しみがほとんどできないのね。もう生活をやっとやっていくみたいで」
実は森さん、年齢や体調を心配する家族の勧めや、老後資金にある程度のめどが立ったことから、今年1月に介護の仕事を辞めていました。
しかし、物価高が続く中、年金だけで暮らすようになると、長年の趣味や夫と楽しむバスツアーなどに使うお金を控えるようになったといいます。
「(チラシを見て)どこどこのしょうゆが安い、どこどこは高い、それが日課みたいで、それを見て高いところは買わない。もう細かい生活、恥ずかしいけどね」
そして今年7月、再び介護の職場に戻った森さん。働くのは日中だけではありません。
週2回の日勤に加えて、週1回、夜勤も担当。勤務時間は午後4時から翌朝10時までです。
「(Q.夜勤は?)慣れちゃっているから。今年で15年目、ほとんど夜勤」
以前勤めていた老人ホームなどでも夜勤を経験。体力には自信があると話しますが…。
「腰痛めて初めて、きょうは2回目」
「(Q.腰は今大丈夫なんですか?)いっぱい湿布を貼って、もうダメかなって思っちゃった」
重労働でもある介護の現場。年齢と共に身体への負担を感じることも。それでも“介護の仕事”を続けるのには理由があります。
なぜ“介護の仕事”?
「65歳から面接をしても受かんない。パート雇ってくれなくなっちゃったじゃない。介護はずっといまだに雇ってくれて、それは感謝」
森さんが介護の仕事を始めたのは65歳の時。パートの面接を受けてもなかなか採用されなかったといいます。
そんな中、働く機会を得たのが介護の現場でした。現在、日勤と夜勤で月に10万円ほどの給料を受け取る森さん。今では生活に欠かせない収入源です。
森さんが働く間、自宅で待っている7歳上の夫が食事を作るなど夫婦で支えあっているといいますが…。
「お父さんはちょっとね、私がいないとさみしいっていうか、今年86歳で心細そうなことは言うんだけど。私が働くのと働かないのでは(生活への影響が)分かっているから、お父さんも感謝してくれているね」
最後の入居者をお風呂に入れ終わると、ようやく束の間の休憩。夜勤の前半戦を終えて森さんは…。
「お風呂はね、ちょっと大変だね。疲れてない、このくらいは平気。(夜勤)頑張ります」
夜勤18時間に密着
「夜は2時間ぐらいすっきり寝てね。何もない日って少ないわ、何かしら(あるから)ね」
夜中は大きなトラブルなく、仮眠も取れたという森さん。
朝は起床時間に合わせて入居者の食事をサポート。夜勤もまもなく終わるというタイミングで、自分よりも一回り大きい入居者の男性をベッドから車いすへ移そうとしますが…。
森さん
「大丈夫?ちょっと待ってね」
上手く車いすに移すことが出来ません。
森さん
「もう少し持った方がいいね」
入居者
「明らかにストップする」
森さん
「危ない気がするね。ちょっと重いね。どうしよう応援呼ぶか」
入居者
「3人でもきのうは」
森さん
「大変だったもんね。ちょっと待ってて。来てくれるかな」
「ごめんね、ちょっと応援頼める?」
持ち上げるのが困難だと判断した森さん。他の階で作業をするスタッフにも応援を頼むことに。最終的には3人がかり。すると…。
「1、2、3、はい」
入居者
「ありがとうございます」
森さん
「ありがとね」
その後も休む暇なく、別の入居者のご飯の支度や掃除など、夜勤の終わりが近づいても作業は続きます。同じく夜勤を担当するスタッフは…。
森さん(仮名)の同僚
「すごいなの一言ですね。私だったら夜勤はできないなって思いますね、79歳だったら」
前日午後4時の勤務開始から18時間あまり、ようやく仕事を終えた森さんは…。
「無事終わってよかった」
「(Q.体はどうですか?)私は全然、平気、元気」
次の目標「あと5年は…」
仕事に復帰したことで、それまで失われていた生活の張り合いが戻ってきたと話します。
「仕事しているから好きなことがやれる、うれしい」
現在、ホームヘルパー2級の資格を持つ森さん。さらに国家資格である「介護福祉士」の取得に向けて勉強を進めています。
そして今、新たな目標があると話します。
「テレビで100歳以上のおばあちゃんたちが元気でいるのを見てね。私もあと5年くらいは仕事できるなって思っています」
今、森さんのように65歳を過ぎても働き続ける人が増えているといいます。
総務省の最新の統計によりますと、65歳以上の人口は過去最多の3624万人。そのうち、仕事に就いている65歳以上の人口は過去最多の943万人に上りました。
「働きたい」78歳男性
こちらは都内のシルバー人材センター。先月、説明会には仕事を求める高齢者およそ20人が参加しました。
その中の一人、厚木強さん(78)。2年ぶりに仕事を探しています。
「年金が全然足りないから」
「(Q.月々の年金は?)月々だと7万円くらい。稼がないと、息子にばかりおんぶに抱っこではいられないと思って」
月およそ7万5000円の年金だけでは、暮らしを支えきれない。それが仕事を探す理由です。
後日、自宅を訪ねました。
昼ご飯の支度をする厚木さん。この日のメニューは、インスタント麺にコロッケ、納豆とご飯です。
現在、家賃およそ11万円の集合住宅に、息子と2人で暮らす厚木さん。以前は、介護施設のドライバーとして月およそ18万円の収入を得ていましたが…。
「(契約がおととしの)3月までで終わりっていうことになって」
年齢を理由に仕事を失ったといいます。
「その時に息子が『じゃあ俺家賃出すよ』とか言った。とてもうれしかったですね。助けてもらえるようになって」
それ以来、家賃は息子が負担。それでも年金だけでは生活費をまかなえず、わずかな貯金を切り崩しているといいます。
そのため、厚木さんはできるだけお金を使わない生活を続けています。
節約の日々、楽しみも
鍋で作ろうとしているのは、夕食用のご飯。その理由が。
「この炊飯器、壊れちゃって使えないので」
10年以上使った炊飯器が半年前に故障。それ以来、鍋でたくようになったといいます。
「(Q.炊飯器を買い替えることは?)息子が『買おうか』って言うから、『これで炊けるんだから十分だよ』って」
炊き上がると、鍋を新聞紙で包み、電子レンジの中に置いて温かさを保ちます。
「面倒くさいけど、わざわざ高い炊飯器を買う必要もないなと思って、お金もないし。食費も結構削っているんで、これ以上の節約っていうのはね、ちょっと勘弁してほしいですね」
節約を続ける暮らしの中でも、大切にしている楽しみがあります。
30代のころから、仕事として続けてきた“弾き語り”です。この経験をもう一度、仕事に生かしたいといいます。
「今は弾き語りをね、またやってみたいなと思っているんです」
厚木さんが希望するのは家賃が自分で払える、月15万円ほど稼げる仕事。しかし…。
「(シルバー人材センターからは)清掃が一番多かった。時給1300円、1500円」
「(Q.1500円は結構高い)でも(労働時間は)3時間で終わっちゃうかもしれないしね。大した時間じゃないですよ。2時間か3時間」
紹介されたのは短時間の仕事が中心で、希望する収入を得るのは難しいといいます。
「もうちょっと、年寄りでも働ける場所を作ってほしい。やりたいことをやりたいようにやれる場所がほしいなと」
物価高 年金暮らしを直撃
今、高齢者を取り巻く暮らしの変化は働くことだけではありません。
年金暮らしの高齢者を直撃する物価高。身近な食品の値上げは直近2カ月で8000品目以上に上ります。
こうした高齢者の“暮らしの助け”になればと、東京・荒川区内の町内会が始めた取り組みが…。
年金受給者(80代)
「(商品券)500円ですね」
年に1度、75歳以上の高齢者を対象に地域のスーパーや飲食店などで使える500円分の“商品券”の配布です。
年金受給者(90代)
「500円でも助かります」
「(Q.何に使いたい?)やっぱり食べ物」
年金受給者(70代)
「500円でももらえるものならさ、うれしいわよ」
79歳男性 予期せぬ老後
こちらの男性は?
佐藤さん(仮名)(79)
「金額的には『何だこんなの』と思うけど、それが“ないとある”ではえらい違いですから」
そう話すのは、近くの集合住宅で暮らす佐藤さん(仮名)。
「住みにくい世の中になりました。本当に」
相次ぐ値上げに“やり切れない思い”がこぼれます。
「(厚生年金を)三十何年かけたけど、月に15万弱ですよね」
月におよそ15万円の年金を受け取る佐藤さん。しかし、物価高のあおりを受け生活に余裕はありません。
かつてはスーパーに勤め、店長も任されていた佐藤さん。余裕のある老後を思い描き、70代も同じ職場で働き続けるつもりでした。
しかし、経営が悪化し15年ほど前に閉店。さらに、期待していた退職金も受け取ることができず、老後の人生設計は大きく狂いました。
今、生活の頼みの綱は年金のみです。
「(食品は)冷蔵庫に入ってないですよ、ほとんど」
冷蔵庫の中は、ほぼ調味料や飲料。生鮮食品はありません。
「ある程度の値段が全部分かるのでね。(商品を)手に取って一瞬置きますよ。なんだこれ(値段)って感じになって。(前に比べ)今、倍ぐらいになっている商品がいっぱいありますもの。本当に怖いです」
そんな佐藤さんの暮らしに、追い打ちをかけるのが家賃の値上がりです。
「(今年4月に)5000円近く上がりました、大きいですよ。5000円あればなんだかんだね、1週間分買えますものね、食材にしろ何にしろ」
食品と家賃の値上げに直面する佐藤さん。
「(Q.年金が物価に合わせ値上がりするが?)去年と比べて多少2、3千円は上がったのかな。2、3千円って言っても、2カ月でね。(値上がりには)追いつかないですよね、全然ね。やっぱり大変ですよ“末端”は」
(2026年10月20日放送分より)
この記事の画像一覧
