
10日後に迫った、アメリカの中間選挙。 争点として急浮上しているのが、トランプ大統領が推し進める「AIデータセンター」の建設です。全米で広がる反対運動の現場を取材しました。(サタデーステーション10月24日OA)
“ばらまき策”繰り返す…共和党劣勢か
アメリカ・トランプ大統領(フロリダ州 日本時間24日 午前3時すぎ)
「これを国民に約束できるのは私だけ。これは確約だ。もし共和党が上下両方で過半数を獲得したら、私はアメリカ合衆国の成人市民全員に5,000ドル(約78万円)を支給する」
日本時間24日に行った演説でも“ばらまき”発言を繰り返したトランプ大統領。一方、弱気ともとれるこんな発言も…
アメリカ・トランプ大統領(ワシントン 23日)
「もし民主党が勝っても、拒否権を使い続ければ、民主党側が折れてくる。そこで取引をするんだ」
最新の世論調査ではトランプ氏の支持率は31%と、過去最低まで落ち込んでいます。
また、政治情報サイトによると、上院選の主な激戦州のうち、テキサス州やミシガン州、アラスカ州では、民主党候補が1ポイント以上リード。さらに、共和党の牙城、カンザス州でも接戦に。
下院はもともと民主党が優勢とみられていましたが、上下両院で過半数を奪還する可能性が出てきています。
「AIデータセンター」争点に急浮上 トランプ氏“肝いり”も…広がる反発
報告・鈴木大二朗(ロサンゼルス近郊 18日)
「地域住民らがデータセンターに反対するデモ行進を行っています」
地元住民
「データセンターは出ていけ」
劣勢が報じられる共和党。さらに逆風となりかねない争点として急浮上しているのが「AI データセンター」です。
アメリカでは生成AIの急速な普及を背景に、データセンターの建設ラッシュが起きています。
トランプ大統領(オハイオ州 3日)
「私たちは大手 IT 企業のデータセンターが地域社会に恩恵をもたらすよう、歴史的な取り組みを進めている。私たちはデータセンターを歓迎している。彼らが去れば、中国へ行ってしまう」
トランプ氏は、AI開発で中国に勝つため、データセンターの建設を強力に後押ししています。
しかし、建設をめぐっては反発の動きが全米に広がっています。
「AIデータセンター」抗議で銃撃も 選挙結果が与える“変化”は?
インディアナ州では、建設に肯定的な立場をとった市議会議員の自宅に銃弾が撃ち込まれる事態に。
インディアナ州 市議会議員
「夜が明けて、このドアを見て初めて、自分の家が銃撃されていたことに気づいたんです」
AIを動かすには、膨大な量のデータ処理が欠かせません。そのため施設は巨大化し、大量の電力に加え、設備の冷却用に多くの水が必要となるのです。
地元住民(ロサンゼルス近郊 18日)
「あそこに巨大なデータセンターが建てば、水を吸い上げる。ここには昔から水が少ない。だから、データセンターが水を全部持っていけば、光熱費は上がる」
データセンターの数が全米で3番目に多いカリフォルニア州でも反発が急速に広がっています。
報告・鈴木大二朗
「こちらですね、膨大な駐車場とショッピングモールの建物、こちらを取り壊して巨大なデータセンターを作る計画が立ち上がっています」
ロサンゼルス近郊にある小さな町。データセンター建設の計画があったものの…
地元住民
「ノーデータセンター。データセンターはいらない」
建設に反対する住民らが市に対し、計画の停止を求め抗議活動。
別の日、市役所で開かれた公聴会にも「反対」のプラカードを持った住民らが計画の一時停止措置を延長するよう求め詰めかけました。
建設反対の住民
「悪影響とリスクが、いかなる恩恵をも大幅に上回っています。例えば、データセンター 1 基を運営するための雇用はごくわずかです。せいぜい 10 人程度でしょう」
その一方で…
建設団体の職員
「共働きの夫婦でさえ生活を維持するのに苦労しています。これらのプロジェクトは生活賃金が得られる雇用を提供し、それこそが私たちの目の前にある未来なのです」
民主党は環境への負荷などからデータセンター建設に慎重な姿勢です。しかし、上下両院で勝ったとしても規制を一気に進められるわけではないといいます。
アメリカ情勢に詳しい 上智大学 前嶋和弘 教授
「そもそも今回のデータセンターの許認可的なものは連邦政府ではなくて、おそらく州になっていくんですね。そうすると州の議会の問題になって、その州が決めていく形になっていきます」
ただ、選挙結果が今後の政策に影響しないわけではありません。
アメリカ情勢に詳しい 上智大学 前嶋和弘 教授
「AIに対する反発もかなりありますので、トランプ大統領は旗を振っても議会、特に民主党の方はNOですし共、和党の方も NOの方に動く議員もいると思います。ここら辺が今のAI開発のどんな方向性になるのか、選挙を経てもより混沌としてくるかもしれません」
高島彩キャスター:
「アメリカではデータセンターの建設が選挙の争点にもなっていますが、日本ではどのような状況なのでしょうか?」
板倉朋希アナウンサー:
「日本でもデータセンターは重要な役割を果たしています。例えばスマートフォンで検索や買い物をしたり、動画を見たり、生成AIを使ったりすると、実は 手元の端末だけで全てを処理しているわけではありません。離れた場所にあるデータセンターのコンピューターが計算し、その結果を個人の端末に返しているんです。いわば、『ネットの世界を裏で支える、巨大な倉庫と頭脳』。現在国内では、東京や大阪など都市部を中心に260ヶ所以上が稼働しています。都市部に多いのは、利用する企業も多く通信網や電力設備が整っていて、高速で安定したデータのやり取りができるからだということです。一方で今後は、北海道や秋田県などの地方でも大規模な建設計画が進められています」
高島彩キャスター:
「急速な発展で分からないことも多いですが、アメリカのような建設をめぐるトラブルは、日本では起きていないんでしょうか?」
板倉朋希アナウンサー:
「実は、千葉県の印西市や白井市などで、建設許可の取り消しを求めた住民訴訟が起きています。環境科学研究者で『都市型データセンターあり方検討会』の伊瀬洋昭さんに聞いたところ、『データセンターは建築基準法に明確な定義がない』ということで、発火リスクがあるリチウム蓄電池などが大量に設置されていても、用途を工場ではなく、事務所やその他として申請すれば、住居専用地域でなければどこでも建設が可能だということなんです。そんな中、周辺環境への影響を軽視する事業者もいて騒音や排熱、日照権などをめぐるトラブルも起きやすく、とにかく国が早急にルールを作る必要があると指摘しています」
高島彩キャスター:
「この『明確な定義がない』というのが問題なのかと感じますが、柳澤さん現状をどう見ていらっしゃいますか?」
ジャーナリスト柳澤秀夫氏:
「やはり規制する法律を早急に作る必要があるなと。データセンターとは一体何なのか?メリット、デメリットは何なのか?課題は?問題は?ということを丁寧に説明して周辺住民の理解を得るということは、もう避けて通れない問題だと思うんですよね。データセンターというのは今のAI社会に不可欠ですし、AIが無い社会というのは考えられないと思うんです。とはいっても利便性だけを追求するのではなくて、時には立ち止まって、一体我々にとって何が大切なのか?を考えることも必要だと思うんです」
高島彩キャスター:
「こうしたAI時代の社会の在り方と私たちの暮らし、どうバランスをとっていくのか、さらに問われそうです」
