
「すべてがひっくり返った。空中に投げ出された人もいた」
その事故で一命を取り留めた乗客はロイター通信の取材に当時の状況を語った。そして、問いかけた。
「これだけの技術がある現代に、なぜこんな事故が起きるのか?」
スペイン中部で28日、列車同士が衝突し、少なくとも68人が死亡した。現地当局は人為的なミスが原因だった可能性を指摘している。
(ロンドン支局・立田祥久)
【画像】“人為的ミス”で後続列車に誤った進行指示か 68人死亡のスペイン高速鉄道追突事故
脱線、転落、大破…少なくとも68人死亡 続く救助活動
現場を空から撮影した映像には脱線した2本の列車が映っている。一方は左へ、もう一方は右へ車両が傾き、一部は線路脇の斜面に転落。その周りに駆け付けた救急車両の数が緊迫の状況を物語っている。
事故があったのはスペイン中部、首都マドリードから南に約150km離れたトレド県ウルダ。現地28日午前9時ごろ、線路上で停止していた民間の高速鉄道「イリョ」の列車に、国営鉄道の列車が追突した。
当時、両列車にはあわせて540人以上が乗車していた。少なくとも68人が死亡し、80人がけがをしたと現地メディアは報じている。脱線した車両の下敷きになっている人もいるとみられ、現場では救助活動が続いている。イギリスBBCは「近代ヨーロッパ史上最悪の鉄道事故の一つ」だと伝えた。
追突されたイリョの列車は首都マドリードを出発し、南部セビリアに向かっていた。国営鉄道の列車も同じくセビリアへと南進していたと伝えられている。イリョの列車はなぜ停止し、そこへなぜ後続の国営鉄道の列車が追突することになったのか。
システム障害で停止後に後続車へ“誤った進行指示”か
スペインのプエンテ運輸相が、現段階で判明している事故の詳細を語った。それによると、事故の前にLZBと呼ばれる鉄道の運行統制システムに障害が発生し一時、両列車とも停止したという。その後、運行管理の担当者が後続の国営鉄道の列車だけに進むよう誤った指示を出したことで事故が起きたという。人為的なミスが原因との認識を示した形だ。
1月にも46人死亡の鉄道事故…サンチェス首相「容認できぬ」
「同じ年に2度も高速鉄道の事故を起こすことなど到底容認できない」
現場を訪問したスペインのサンチェス首相はこのように述べ、鉄道の信頼回復や安全強化を誓った。
実は、スペインでは1月にも南部コルドバ近郊で高速鉄道同士の事故が起きている。この時は一方の列車が脱線して隣の線路にはみ出し、向かってきた別の列車と衝突。46人が死亡した。現場は今回と同じくマドリードとセビリアを結ぶ路線だった。原因調査はいまだ続いているが、当局による初期の調査報告書では線路に生じた亀裂が影響した可能性が指摘されている。
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