「私のプライバシーはあなたの政治活動の道具でしかないのですか? 他人の人生をこのように破壊して踏みにじって楽しいですか?」 芥川賞作家、性のプライバシー暴露めぐる裁判で勝訴

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【映像】会見で発言する芥川賞作家の李琴峰さん(実際の様子)

 SNS上で芥川賞作家の李琴峰さんのプライバシーに関わる情報を暴露したとして、李さんが山梨県甲府市の村松裕美市議に損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は29日、不法行為(プライバシー侵害など)を認め、村松市議に110万円の支払いを命じた。

【映像】会見で発言する芥川賞作家の李琴峰さん(実際の様子)

 判決後、都内で記者会見を行った李さんは、1年4カ月に及んだ法廷闘争での勝訴を受け止めつつも「少しも嬉しさや喜びはない」と吐露。生身の人間の尊厳を踏みにじられた苦しみと、本来の執筆活動を奪われた理不尽さを毅然と訴えた。

■「本来書くべきは小説」 1年4カ月の法廷闘争に「少しも嬉しさはない」

 李さんは会見の冒頭、「私は便宜上、トランスジェンダーという言葉を使うことはありますが、この言葉は私のアイデンティティを反映していません。私のジェンダーアイデンティティはあくまで女性であり、トランスジェンダーではありません。その点をまずご留意ください」と前置きした上で、胸中を語り始めた。

 勝訴判決に「ほっと安心はしました」としつつも、「少しも嬉しさとか喜びとか、そういう感情はありません。なぜなら、私は本来そういうことをしなくてもよかったはずです。私の仕事は小説家です。私が本来書くべきは法廷に出す陳述書ではなく、読者に向けた小説であるはずです」と強調。

 ある日突然、手術歴や身体的特徴といった性の機微な情報をネット上に晒されたことに触れ、「一体全体、誰が好き好んで、途方もない時間と労力、金銭をつぎ込んで裁判をやるのでしょうか? もし私がシスジェンダー(性自認と法律上の性が一致した状態)の女性だったのならば、そもそもこういう被害を受けておらず、裁判をする必要もありませんでした」と悔しさをにじませた。

■特定の人を襲う“嵐”とSOGIハラスメント 「私の人生は道具ではない」

 李さんは、自身が受けた被害を「特定の人たちにしか襲ってこない嵐」に例えた。「他の人にとっては雨も風も感じられず、ただ日常が続いているだけですが、特定の人たちにとっては平穏な生活を崩されて何もかも奪われるような嵐です。その嵐は今、私のようなシスジェンダーではない女性ばかりを狙って襲ってきます」と説明した。自ら望んでいない形で性を暴露されたことについて、李さんはSOGI(性的指向や性自認に関する)ハラスメントに触れ、「本件被告による加害行為は、SOGIハラスメントであり、セクシュアルハラスメントであり、性にまつわる暴力、つまり性暴力の一種だと私は捉えています」と訴えた。

 さらに李さんは、村松市議が「政治活動の一環」「著名人だから受忍すべきだ」などと主張してきたことに対し、痴漢や盗撮といった性犯罪加害者の心理に似た「認知の歪み」を感じると指摘した。

 加害者は「ただ撮っただけ、触っただけ」と言い訳し、自分の行為が被害者を生み出している意識すら持てないとした上で、市議に対しても同様の認知の歪みを感じるとし、自分の行為が被害者を生み出し、誰かを苦しめているという意識すら持たず「被害者を人間として見ていない」と批判した。「盗撮や痴漢の被害者と同じように、私もまた、自分の顔と声、誰にも取って代わられない、かけがえのない人生を生きている一人の人間です」と述べ、「私はただ、人間として尊重してほしい、ただそれだけです。それのどこがそんなに難しいのでしょうか」と訴えた。

■「他人の人生を破壊して踏みにじって楽しいですか?」 被告へ投げかけた言葉

 李さんは村松市議に向けて真っ直ぐに言葉を投げかけた。

「私はあなたと会ったことはありません。面識もなく、恨みもありません。それなのに、なぜあなたは私のプライバシーを侵害したのですか? 私のプライバシーはあなたの政治活動の道具でしかないのですか? 他人の人生をこのように破壊して踏みにじって楽しいですか?」

 判決に対して李さん側に控訴する意思はなく、「被告には自分の非をきちんと認めてもらって、真摯に反省してもらって、判決通りの損害賠償を支払ってもらいたい。お互い大人ですから、ここまでにしましょう」と呼びかけた。

(ABEMA NEWS)

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