
群馬県みなかみ町の紅葉です。見頃を迎えた秋の絶景と温泉を目当てに、今、人口約300人ほどの秘境に多くの外国人観光客が訪れているということです。
人口約300人の山奥
群馬県最北端の町、みなかみ町。関東で最も早く冬の足音が聞こえる「谷川岳・一ノ倉沢」では、山肌を優しく包み込む鮮やかな紅葉と、そそり立つ迫力の大岩壁が見事なコントラストを描き出します。
ロープウェイに揺られれば、眼下には見渡す限りの紅葉の絨毯(じゅうたん)が広がります。厳しい冬を目前に、豊かな自然が生み出した癒やしの絶景が町の至る所に広がります。
みなかみ町の中でも最も山深い「藤原地区」。関東有数の豪雪地帯で、去年は積雪が3メートルに迫りました。倉庫のような建物は半分以上雪に埋まり、積もった雪の重みか木が大きく傾いています。
藤原地区はみなかみ町の北側半分ほどを占めますが、暮らしているのはわずか343人(令和8年3月末時点)。
取材中に唯一出会えたのは、今は空き家になっている家の元住人でした。
元住人
「もう過疎地だよ、過疎地。だって住んでいる人がいないんだもの。家だけはまだどうにか残っているけど、昔話だよね」
公共交通で藤原地区へ行くには路線バスのみ。しかし1日5本しか走っていません。
世界から予約殺到
そんなみなかみ町藤原地区に…。バスから降りてくるのは外国人ばかり。
女性
「ポーランドから」
男性
「イタリアです」
男性
「南アフリカのケープタウンから来てます」
世界中から観光客が集まるのは、赤や黄色に染まった木々の間を縫うように、利根川に注ぐ清流、宝川。その先にポツンと一軒、山の中にたたずむ温泉宿「宝川温泉 汪泉閣(おうせんかく)」です。
90年前に建てられた木造の建物も残り、まるで昭和にタイムスリップしたような純和風の温泉旅館です。
宝川温泉「汪泉閣」
石井厚支配人
「年間通すと大体7割が外国の方ですけど、秋から冬にかけては特に8割は超えると思います。日によっては100(%)もあります」
秋は1泊2食付きで1人2万6000円から4万円。先月30日は宿泊客が約40組。そのうち、日本人は5組だけでした。
彼らのお目当ては“日本最大級の露天風呂”です。総面積は約470畳。風呂のすぐ横を流れる宝川の川音と、色づく山々の紅葉に包まれながら、至福のひとときを過ごせます。
4つある露天風呂のうち3つは混浴。ただ、湯あみ着の着用が義務付けられているので、家族やカップルがそろって、同じ景色と温もりを分かち合えます。
世界の温泉トップ10選出
そのため“特別な旅”の目的地に選ぶ外国人も多いといいます。
新婚旅行 スペイン人夫婦
「ハネムーンで来ました。温泉を体験したかったんです。寒い外で、露天風呂で温まるのが楽しみです」
露天風呂につかっているのはほとんどが外国人。日本の温泉とは思えないような光景です。
日本人観光客
「東京に行くと外国の人多いのは分かりますけど、秘境というか、温泉地まで多いのは想像してなかった。本当にびっくりです」
“秘境”の宿に外国人が訪れるようになったきっかけは、約20年前。海外の大手旅行ガイドブックに宝川温泉が掲載。さらに2013年には、世界的な通信社ロイターが選ぶ「世界の温泉トップ10」にも日本で唯一選出されました。
石井支配人
「(Q.宝川温泉として海外発信している?)一切していないです。何もしていないんですけど」
訪れた客が口コミやSNSで発信することで、今や世界中が注目する温泉宿になりました。そのため来月半ばまで、ほぼ外国人の予約で埋まっているといいます。
SNSで国際化
イタリアから訪れた幼なじみ8人の若者グループ。部屋に到着するやいなや、浴衣に着替えて始めたのが…。
イタリア人観光客
「できるだけお互いに寄って」
「いくよ」
「今度は少し上から撮ってみた」
「いいね。全部見える。足を組んでいるのも」
ふすまを開けた先に、浴衣を着た4人が和室に座る様子をスマホで撮影。
「(Q.映画を撮っているの?)映画じゃないよ。彼がインフルエンサー」
「インスタグラムのストーリー用だよ」
「とりあえずまっすぐに入って来て、どうなるか見てみよう」
ただ、気に入らないのか何度も撮影を繰り返します。
「見て」
「これで良さそうだよ」
「10秒は長すぎる?」
「これで良いよ!完璧だ」
「終わり!やったぜ」
この日の夜にSNSにアップされた動画には、撮影を繰り返したシーンはありませんでしたが、「日本での経験(esperienza giapponese)」と書かれ、宝川温泉が紹介されていました。
初めての日本の旅館
メキシコから初めて来日したカップルも、SNSでこの宿を見つけたそうです。
彼氏
「自然に囲まれてゆっくり過ごせるような宿を探していたんですが、まさに求めていたような場所でした」
初めての日本の旅館は…。
彼女
「ワオ。とてもすてき」
彼氏
「とてもきれいだ」
部屋は純和風。窓からは色鮮やかな紅葉と澄んだ宝川をぜいたくに独り占めすることができます。
彼女
「美しいですね。あまりの美しさに驚いています。本当に素晴らしい眺めです。川の音を聞きながら眠れるなんて、最高ですね」
そして初体験の露天風呂へ。
彼氏
「素晴らしいですね。期待以上です。とても快適で、とても美しい」
彼女
「お湯もすごく心地良いわ。他とは違ってとてもいい」
「(Q.他の人にすすめたい?)100%おすすめします。すごく気に入ったわ」
彼氏
「絶対にみんなにおすすめするよ!」
「関東の奥入瀬」
その“秘境”の温泉からさらに奥にある紅葉スポットを目指すオランダ人夫婦に出会いました。
風景写真家 マチューさん
「(紅葉のきれいな)渓谷に行く予定です。行った人に教えてもらったんだ。タヒデ渓谷だったかな?うーん…私たちが向かうのはここ」
「(Q.名前は?)君たちなら読めるだろう」
聞けば照葉峡(てりはきょう)と読むそうで、紅葉の名所ではあるものの、観光地化はされていないといいます。
マチューさん
「テリ…何?もう一度言って」
妻・クラウディアさん
「テリハ!私たちはそこに行くのね」
「行きましょう」
実はこの男性、“プロ”の風景写真家、マチューさん。世界中を飛び回り撮影をしているとのこと。
クラウディアさん
「去年は冬の北海道に行って、その時に日本の秋の話を聞いて戻ってきたの。今回は日本の秋を狙って来たんだ」
宝川温泉から車で約20分。彼らが目指す「照葉峡」は、奥利根の大自然に抱かれた知る人ぞ知る絶景の渓谷です。秋の訪れとともに、山々は赤や黄色に色づき、渓谷一帯が鮮やかな紅葉に包まれます。
岩肌を縫うように流れる清流と、色とりどりの木々が織りなす光景は、まるで一幅の絵画のよう。
大小11もの滝が約5キロの渓谷に点在。その美しさから「関東の奥入瀬」とも称されるほどです。山深い場所にあるため、今月5日には道路が閉鎖。だからこそ出会える、奥利根の秘境に広がる紅葉の絶景です。
マチューさんが見つけたのは「岩魚の滝」です。
マチューさん
「きれいな滝だね。パーフェクト」
クラウディアさん
「ここから見ると素晴らしいわよ。きれい」
目の前の滝の絶景に心を奪われたのか、何度もシャッターを切るマチューさん。撮影の手が止まりません。
その後も場所を変えながら撮影。半日ほどかけて照葉峡を撮り続けました。
マチューさん
「私たちの期待を大きく超えました。美しい渓谷、この静寂さ、この色合い。すばらしい」
クラウディアさん
「これまで世界中をたくさん旅してきましたが、こんな光景は初めてです。秘密にしておきたい気持ちもあるけど、他の人にも楽しんでもらいたいし。私たちは幸運ですね」
(2026年11月3日放送分より)
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