
トランプ大統領が『NO』を突き付けられたアメリカ中間選挙の余波が、マーケットにも及んでいます。
【画像】なぜ?歴史的な“株価下落” 要因の「データセンター」懸念とは
“AI売り”で世界的株安に
6日の日経平均株価は急落し、一時、4300円以上、下落。過去3番目の下げ幅となりました。
売りが売りを呼ぶスパイラル。個人投資家も無傷ではいられません。
会社員(40代)
「アメリカのAI系、結構、買ってたんで、結構、マイナスになったと思って。去年も一気に下がったケースがあったので、あまり慌てずにいってみます」
不動産業(20代)
「そもそも、今までが結構、バブルだった、特に日経は。逆にこういうものだろうって思っています」
韓国でも、一時、8%以上、下落し、取引が中断されるサーキットブレーカーが発動。台湾では、一時、9%の急落。下落幅としては、過去最大を記録しました。
日本、韓国、台湾。世界同時株安の様相を呈する3つの市場で共通しているのは、AI・半導体関連株の急落です。
2023年ごろから始まったとされるAI相場。
日経平均株価は、去年10月以降、過熱感を指摘する声もありましたが、上昇を続け、6月には7万円を突破しました。しかし、その後は勢いが続かず、6日の終値は、3643円安の5万7434円で、半年ぶりに6万円を割り込みました。
AIデータセンターに“逆風”
きっかけは、前日のアメリカ市場。
幅広い業種で構成されるダウ平均の下落率が3.4%に対し、主要な半導体関連銘柄で構成される株価指数の下落率は12.3%でした。
その要因の一つとなったのが、AI産業を支えるデータセンターをめぐるアメリカでの動きです。
アメリカでは、いま、データセンターの建設ラッシュです。その数は、建設中などを含めると、この10年で13倍に増えています。
特に、近年、AIに前のめりだったのはトランプ大統領です。
アメリカ トランプ大統領
「私が首長だったら、データセンターを全力で誘致する。恐ろしく儲かるからだ」
ただ、データセンターをめぐっては、各地でさまざまな問題が起きています。
例えば、冷却で使う大量の水。水の使い過ぎだけでなく、地下水の枯渇リスク、農業用水との競合などといったものが指摘されています。
また、データセンターは、膨大な電力を消費するので、供給不足や設備投資の電気代転嫁が起き、一般市民の生活を圧迫しています。
近所に建設されることで、土地価格への影響も懸念され、各地で反対運動が起きていました。
こうした問題も中間選挙の争点となり、建設に慎重な民主党の候補も相次いで当選しました。
民主党・オソフ上院議員(3日)
「地域社会がデータセンターを一方的に押し付けられることがあってはならない」
認可権を握る次期知事も、こう話します。
テキサス次期州知事 ヒノホサ氏
「データセンターが農村部に進出し、市民を守る規制や法律がなく、州民は不利益を強いられています。体制が整うまでは、進出計画を止める必要があります」
こうした規制への懸念も重なり、AIや半導体関連の銘柄が世界的に売られ、株安が広がりました。
“AIブレーキ”日本企業も打撃
埼玉県内にあるAI・半導体関連の部品などを扱う金属加工メーカー。
一日、一日の株価の動きに左右されるものではないと言いますが。
埼玉プレーナー工業所 鈴木憲一郎代表
「ピークのときには、業績もよくなるんですが、落ち幅が急激な垂直に落ちていくような業界になっている。垂直に落ちたときのコントロールというのが、こういった町工場やっていると、非常に難しくなってくるかなと感じております」
過去にも、政治情勢などに左右されることが多く、かつては6割ほどを占めていた半導体関連の仕事を、2割程度に抑えるなどして、リスクを減らすようにしているといいます。
埼玉プレーナー工業所 鈴木憲一郎代表
「AIに関しては、短期的に数カ月で性能ががらっと変わっていく。非常に高精細化・高精度化しているというのもあるので、自分は止まらないんじゃないかな。今回の局面は、一時的な調整局面と、市場が急激に反応したと思うので、自分に関しては、一時的なショックなのかなと」
データセンター規制が“勝因”
中間選挙で民主党が大勝したことが、なぜ、ここまで世界的な株安につながるのでしょうか。
アメリカの世論調査によりますと、データセンターの建設について、資源・環境への過剰な負担や経済的な不安などから、7割の国民が建設に反対しています。
今回の中間選挙では、データセンター建設への規制強化を掲げる民主党が大勝。同じ日に行われた州知事選挙でも、全米有数のデータセンター建設計画地であるテキサス州で、民主党の州知事候補が勝利しました。
勝利したヒノホサ氏は「法整備が整うまで、新規の建設承認を一時停止する」と公約しています。
オハイオ州・ジョージア州など合わせて8つの州で、データセンター事業の規制を訴えていた州知事候補が当選しています。
規制進むか?株価の行方は
このような動きが、株価の大幅な下落につながったことについて、野村総研の木内登英さんは「AI関連への巨額の投資が、将来の収益で回収できるのかというのは、株式市場の年初からの大きなテーマだった。AI関連株がいつ暴落してもおかしくないという素地があり、中間選挙の結果が大きな引き金になった」といいます。
木内さんは、今後について「アメリカ経済の成長は、半分以上がAI事業で支えられているので、データセンター事業の規制が進めば、最悪の場合は、リーマンショックのような大きな経済危機の可能性もある」と指摘。「カギを握るのはアメリカ国民。データセンターは、発電設備・冷却設備など、いろいろな設備を集合体で作る巨額のインフラ投資。全体を規制すると、アメリカ経済にかなりの逆風となり、また、AIの利用が制限されて不便になるなどの事態が生じる可能性もある。今後、アメリカ国民が、どの程度の規制まで容認するかは見通せず、来年一気にすべてが止まるというわけではないと思う」といいます。
