「最側近」交代…後任は”移民強硬派”  民主党主導の議会と対決姿勢

「最側近」交代…後任は”移民強硬派”  民主党主導の議会と対決姿勢

中間選挙での惨敗をうけ、注目されるトランプ政権の人事。トランプ大統領は、最側近のポストに強硬派の人物を充てると発表しました。有権者から「NO」を突きつけられた形となった“トランプ流”の政策は、このまま推し進められるのでしょうか。(サタデーステーション11月7日OA)

「最側近」を交代 後任は“移民強硬派” 

日本時間の7日午前、雨の中、傘をさして記者の前に現れたトランプ大統領。「大統領の通信簿」と呼ばれる中間選挙の結果が7日、ほぼ出そろいました。下院は、全435議席のうち、民主党は252議席を獲得し過半数を大きく超えました。上院は、定数100のうち35議席を争いましたが、こちらも民主党が過半数を超えました。共和党が大敗しても、トランプ大統領は変わらないようです。

アメリカ トランプ大統領(ワシントン 日本時間7日午前5時ごろ)
「スティーブン・ミラーが新たな首席補佐官に就任する。そして、スージー・ワイルズは政治部門に移ることになる」

首席補佐官は、ホワイトハウスを取り仕切る重要ポストです。トランプ大統領は、選挙参謀を務めた一方、移民政策に批判的な言動もあったワイルズ首席補佐官を退任させ、後任に「強硬な移民政策の立案者」として知られるスティーブン・ミラー次席補佐官を就任させると発表しました。

アメリカ トランプ大統領(ワシントン 日本時間7日午前5時ごろ)
「ただ変化を起こしたかった。私たちは決断を下し、前に進まなければならない。スティーブンは最初(一期目)から私と一緒にやってきた。政治をよく理解しているし、とてもいい人間だ」

一方、民主党の受け止めは。

民主党上院トップ シューマー院内総務
「トランプ大統領は、歴史的な敗北からなにも学んでいない。ミラー氏はこの政権の“最も野蛮で非人道的な政策の立案者”だ。これ以上ないほど最悪な人選だ」

ホワイトハウスで何が起きているのか、独自のパイプを持つ小谷教授に話をききました。

ホワイトハウスに独自のパイプを持つ 明海大学 小谷哲男 教授
「選挙負けた責任を取らせるということが1つ。このミラーという人は、本当に本物のMAGAで移民問題を中心に、これまでもかなり強硬な政策をやってきたんですが、彼を首席補佐官にしたということは、民主党主導の議会と対決していくということの表れだと思う」

今回、共和党が敗北した一因として、“行き過ぎた移民の取り締まり”が挙げられていますが、変えるつもりはないようだといいます。

バンス氏「負けた理由は戦争だ」 “トランプと距離置く候補”も当選

側近をめぐる動きは他にも。

バンス副大統領のコメント
「われわれが負けた理由は戦争だ」

トランプ大統領の後継者とみられているバンス副大統領は、“今回の敗北はイラン戦争が原因だ”としました。また、バンス氏とともに、次の大統領選挙の有力候補とされるルビオ国務長官は、“トランプ政権からの離脱を検討している”と報じられました。ルビオ氏は否定しています。さらに、トランプ大統領とともにイラン攻撃を推進してきたヘグセス国防長官は、トランプ大統領が、“ヘグセス氏を交代させるか側近に相談している”と報じられました。トランプ大統領は否定しています。トランプ大統領はCBSテレビに対し、政権幹部を「何人か、かえるかもしれない」とも話しています。

側近による看板政策への批判が相次ぐ中、トランプ大統領は、大敗した後も物価高の一因とされた「関税を継続させる」考えを示すなど、これまでの方針を変えるつもりはないようです。

議会で対決をする上で、議員の数は重要ですが、気になるのは、今回当選した共和党候補の中には“トランプ大統領と距離を置いてきた候補者”がいることです。

トランプ氏と一緒に写った写真を「家族写真」に差し替え、ケンタッキー州の上院で当選したアンディ・バー氏は。

「上院選で当選」ケンタッキー州 共和党アンディ・バー氏
「アメリカを愛する、“両党の誰とでも協力”していくつもりです」

トランプ氏が進めてきた「分断」ではなく、「党派を超えた協力」が必要だと訴えました。他にも、上院選では“トランプ氏と距離を置いてきた共和党の候補者”が当選しています。民主党の勝利は、数字以上の勢力となりそうです。しかし…。

多数派を奪還した民主党“大統領の罷免”は? 10人以上の「造反」必要

アメリカ トランプ大統領(ワシントン4日)
「妨害されても私には拒否権がある。私を弾劾すれば、民主党は自滅するだろう」

トランプ大統領は、自らの「看板政策」などが、議会に否定される事態になった場合、「拒否権」の行使も辞さない考えを示しました。

一方、今回大勝した民主党は、トランプ大統領を辞めさせる「弾劾」の動きを進める可能性が指摘されています。

下院では、“過半数”で「弾劾訴追」できますが、上院の「弾劾裁判」で罷免させるには、出席議員の3分の2以上、全員出席なら67人以上の賛成が必要です。民主党は上院で54人と躍進しましたが、10人以上足りません。

2021年、トランプ大統領は、連邦議会の襲撃を扇動したとして下院で「弾劾訴追」され、上院で「弾劾裁判」にかけられました。“共和党の上院議員7人が有罪を支持”しましたが、出席議員の3分の2には届きませんでした。

民主党が大勝したいま、トランプ大統領の罷免もあり得るのでしょうか?

ホワイトハウスに独自のパイプを持つ 明海大学 小谷哲男 教授
「今回の中間選挙で、トランプ大統領の求心力が低下したとみられています。これまでのようにトランプ大統領の指示に従わない共和党員も出てくる可能性がある。しかし、上院での弾劾裁判で有罪にするためには共和党側から10人以上造反しないといけないので、かなりハードルが高い」

一方、大勝した民主党の議会運営も平たんではないといいます。

ホワイトハウスに独自のパイプを持つ 明海大学 小谷哲男 教授
「今回、有権者が何よりも望んでいるのは、生活費の高騰を抑えてほしいということですが(来年1月に)民主党が多数となっている議会が始まっても、生活費が一向に下がらないということになれば、民主党に対する批判も高まる可能性がある。(トランプ大統領は)協力するかもしれないと見せかけて、一方では拒否権をちらつかせるということで、すでに民主党を疑心暗鬼にさせる。民主党を揺さぶっているという状況だと思う」

高島彩キャスター:
「民主党の圧勝という結果は、すでに日本の株価にも大きな影響を与えています。6日の日経平均株価はAI関連などのハイテク株を中心に全面安となり、一時4000円以上値下がりしました。今後、世界と日本の経済はどうなっていくのでしょうか?」

板倉朋希アナウンサー:
「ABC経済研究所・代表エコノミストの熊野 英生さんに今後の見通しをお聞きしました。まず株価下落については、データセンターへの規制強化を訴える民主党の圧勝以外にも、過熱していたAI関連株への反発も背景にあると言うことです。ただ株価が下がったからと言っても、AI産業そのものの成長が鈍るわけではないとみています。また今後は、AI関連に集中していた投資資金が自動車や医療、クリーンエネルギーなど、他の分野に向かう可能性もあり、世界経済全体でみれば必ずしも悪いことではない。とのことでした」

高島彩キャスター:
「一方、原油価格は中間選挙のあと、アメリカによるイラン攻撃が再開されて値上がりするとの見方もありましたが、実際には下落しました。これはなぜなんでしょうか?」

板倉朋希アナウンサー:
「熊野さんによると、トランプ政権内から『選挙敗北の原因はイラン戦争だ』という声が上がっていることを背景に、市場が『イランとの戦闘終結が早まるのではないか』と見ていることが要因だと分析しています。このまま戦闘が収束に向かえば、原油価格は1バレル70~80ドル程度まで下がる可能性もあり、そうなれば日本の貿易収支も改善し、円安の是正にもつながる可能性もあるということです。さらに輸入品の価格も下がり、物価が落ち着くことも期待されますが、その恩恵を実感できるのは、2027年の春先以降ではないかと分析しています。こうした見通しも今後の中東情勢次第だということです」

高島彩キャスター:
「柳澤さん“中東情勢次第”ということですが、今後の行方をどうご覧になっていますか?」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏:
「今後の行方のカギを握っているのは、アメリカのヘグセス国防長官、イスラエルのネタニヤフ首相、アメリカのバンス副大統領の3人のキーパーソン。まずヘグセス国防長官ですが、イラン攻撃を主導してその責任を問う声が身内からも出ている。下院で弾劾訴追をするための決議案が出されて、もしこれが可決されればイランへの攻撃がしにくくなる。あるいはその前にトランプ大統領が更迭するかもしれないという見方もあります」

高島彩キャスター:
「決議案が出されて実際に弾劾される可能性はどのくらいあるのでしょうか?」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏:
「下院の場合には過半数の賛成が得られれば可決されますので、トランプ大統領と距離を置く共和党議員が賛成に回ることが十分に考えられますから、可決される可能性も出てくる。そうなる前にトランプ大統領がヘグセス国防長官を更迭せずに、2027年1月3日の新しい議会が始まる前にイランに対する攻撃を仕掛ける可能性は捨てきれません。次のキーパーソン、イスラエルのネタニヤフ首相ですが、総選挙の結果を受けてイスラエルの大統領が野党陣営に組閣を指示しました。アラブ政党の扱いがあるので一筋縄ではいきそうにもないが、もし仮に野党陣営で連立工作がうまくいって政権ができると、ネタニヤフ首相は汚職事件の刑事被告人として有罪になる可能性も十分ありますから、それで政治生命を断たれることになれば、ネタニヤフ首相は暫定首相の立場を利用して、単独ででもイランに対する攻撃を仕掛けて延命を図る可能性があるんです。3人目がバンス副大統領です。『今度の中間選挙の敗北はイラン戦争にあったんだ』ということを公言しています。もともとイランへの攻撃については非常に慎重、あるいは否定的な立場だったんですが、バンス副大統領はできるだけ今のイランとの戦争を早く終結させて、トランプ大統領の後継者として2028年の大統領選挙に道筋をつけたいという思惑がある。ただイランとの交渉についても、アメリカ側は核開発問題に重点を置いているんですが、イラン側は経済制裁の解除、あるいはアメリカ軍によるホルムズ海峡の海上封鎖、これを先にやめなければ交渉に応じないという姿勢ですから、このさきの行方がどうなるかも非常に見通しにくいということ。いずれにしてもこの3人がそれぞれの生き残りをかけてどう動くのか。3人の去就が中東情勢の行方を大きく左右することになりそうです」

高島彩キャスター:
「収束に向かうのか、それともさらなる衝突につながるのか。引き続きこの3人を含めて行方を注視していく必要がありそうです」

外部リンク
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