夏といえば夏祭りだが、楽しいはずであろう夏祭りの会場で起きてしまった凄惨な事件が、和歌山ヒ素カレー事件だ。AbemaTV『AbemaPrime』の「所太郎の今だから言える“真実”」コーナーで4日、レポーター・所太郎氏が、事件の経緯を振り返るとともに、改めて取材した模様を伝えた。

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同コーナーは、過去に取材した事件や事故を振り返り、若い世代に“今だから言える本当に伝えたい真実”を学んでもらうというもの。当時子供だったゲストの松尾幸実やMCの椎木里佳、山田菜々らは、「(物心つくようになって)親から、お祭りのときにあまりものを食べないようにと言われた」ことを明かす。それほど震撼を呼んだ事件だ。

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■「1998.7.25(土)和歌山市毒物混入カレー事件」とは

事件は、1998年7月25日の土曜日、和歌山市の園部地区で発生。男女あわせて4人の死者をだした。小さな町で起きた毒物事件。

夏祭りの会場でふるまわれたカレーを食べた住人達が次々とおう吐や腹痛を訴え、67人が病院へ搬送。男女4人が死亡した。警察の調べにより、カレーには猛毒のヒ素が混入されていたことが判明。ほどなく、その関与が疑われたのが、事件当日、カレー鍋の見張り番をしていた林眞須美死刑囚だった。

当時、取材インタビューに応じた林死刑囚。

「事実は1つでね、調べれば簡単に説明もできるし。(事件に関わってない?)ないです。その確信と自信がありますので。」

一旦は事件への関与を否定するものの、その後の捜査で、彼女の周りには保険金詐欺など様々な事件への関与が浮上。自宅からはヒ素も発見された。

そして、事件発生から2か月後の1998年10月4日、林死刑囚、逮捕。同年12月に、カレーへのヒ素混入による殺人と殺人未遂の容疑で再逮捕された。

■18年経った現場の「今」

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事件当時から、現場で取材を続けてきた所レポーターは、あれから18年、再び現場を訪れた。

夏祭りの会場から100メートルほどの場所にあった、林死刑囚らが住んでいた家があった場所へ向かうと、今は草むらだ。

事件当時から取材に応じてくれていた、賀川司さんが、今回も取材に応えてくれた。賀川さんは夏祭りでふるまわれたカレーを作るために、会場の隣にある自宅のガレージを提供しており、小さな町の小さな夏祭りで突然起きた事件に、住民たちはえもいわれぬ恐怖を抱いたという。

「やっぱりみんな疑心暗鬼だったんじゃないですか。と、思いますよ。出会ってもね、誰も物は言わないし、そういう感じだったからね」(賀川さん)

事件から18年。今では以前のような関係に戻れたというものの、「(いまだに住民たちは)その事件を思い出したり、そういう話をしたりするのは、嫌みたいです」(賀川さん)。

■事件の経緯を3つのポイントで振り返る

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・「食中毒? 当初からの住民の疑問」

実は最初に報じられたのは、「カレーを食べた人たちから食中毒の症状」(産経新聞 7.26付記事)。初めは食中毒を疑われていたのだ。

所:しかし、賀川さんは当時から疑問に思っていたんです。「カレーなんて、(日にちをおいたものではなく、その場で)煮炊きしてるものから食中毒になるのか?」と。そうすると、「誰かが何かを入れたのでは?」と疑問に思ってしまうわけです。

・「疑心暗鬼」

周りは田畑・新興住宅地・県道から直接見えない会場。地元住民しか入らないような場所に知らない人が誰にも見られずに行くのは不可能ではないのか。これにより、住民の間で、「この中の誰かが犯人なのではないか?」という疑心暗鬼に陥っていく。

・「衝撃的な記事」

状況が二転三転しているとき、犯人に関して、ある「衝撃的な記事」がでた。

8月25日に朝日新聞が報じた「事件前にもヒ素中毒 県警、関連に強い関心」。実は事件が起きる前に、ある別の事件がこの地区で起きていたのだ。

同じ民家を別々に訪れた2人の男性が、その民家で飲食した後、薬物中毒とみられる症状で入院していた。そのうち1人の毛髪からは猛毒のヒ素が検出された。その民家というのが、この林死刑囚の家だった。夫がシロアリ駆除の仕事をしていたので、もともと生活のなかに(駆除用の)ヒ素があったという。

■その後の経緯

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事件発生から10か月後に行われた初公判。逮捕当時より批判的な報道が多かったこともあり、裁判所には32枚の傍聴券を求め、5220人が集まった。

この初公判で、カレーなべのヒ素と林死刑囚の自宅で確認された亜ヒ酸が科学鑑定の結果、ほぼ同じだと判断された。多くの状況証拠が出てくる中、林死刑囚は最後まで黙秘を貫いた。判決は、死刑。

2004年に行われた2審では、一転して2時間ちかく、6年前のことを饒舌に証言し、無実を訴えた林死刑囚だったが、判決は1審と同じく死刑が言い渡された。

そして、2009年5月に行われた最高裁。判決は覆ることはなく、死刑が確定した。最後まで犯行の動機が語られることはなかった。

動機がないということは冤罪というのが弁護側の主張。でも、被告人が犯人であることを左右されるものではないということで死刑が確定しているが、共同通信などによると、林死刑囚は未だ全面否認をしており、動機と決定的な証拠がないということで無罪を訴え、現在、再審請求中だという。

この裁判を住民たちはどんな気持ちで見てきたか。賀川さんは、「今も事件のことは話したくない」という。何一つ真実が語られることのなかった18年。今も、夏祭りは一度も開かれていない。やり場のない怒りは住民たちに暗い影を落としている。

ただ所氏は、「あまり語りたくないとおっしゃっていたけれども、事件が風化していくのも懸念すると言われていました」と報告。住民たちは複雑な心境のまま、今もそこに住み続けている。

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