埼玉県熊谷市にある曹洞宗のお寺、見性(けんしょう)院。このお寺は檀家(だんか)が減り、経営基盤が揺らぐに時代に、ある「変革」を起こそうとしている。

見性院は「明朗会計」を掲げ、お布施の価格を定額化した。お盆の供養や葬儀などの際に必要なお布施の価格が、その内容などによって決まっている。一般的な寺ではお布施の価格に明確な決まりはなく、公開はされていないことが多く、見性院の取り組みは仏教界では「異例」と言える。

さらに見性院は、江戸時代から続く檀家制度を4年前に廃止した。通常、お寺は檀家と呼ばれる信徒のお布施などで成り立っている。かつて見性院には約400件の檀家があったが、それをやめ、信徒と呼ぶことにした。

そんな取り組みを始めたのは、見性院住職の橋本英樹(えいじゅ)(50)さん。橋本住職は檀家制度を廃止した理由を聞かれ、「現代は自然に檀家が増えていく時代ではない。現状維持では絶対に衰退していくと確信していた」と答えた。

そんな橋本住職の方針は「来るもの拒まず」。檀家制度を廃止し会員組織を作った。明朗会計とサービス重視を掲げ、ネットを通じて新規開拓する方向へとかじをきった。結果的に合わせて1000世帯以上の付き合いに膨らみ、寺の収入も3倍ほどに増えたという。「みんなのお寺」をキャッチフレーズとして掲げ、宗派や国籍を問わず広く集めたいと考えている。

また、見性院は遺骨を郵送で受け付ける「送骨サービス」も始めた。「お金がなくて墓が建てられない」「墓の後継者がいなくて困っている」といった相談は以前からあったという。荷造りに必要な段ボールなどを希望者に送り、骨つぼに入れた遺骨を送り返してもらう。敷地内にある納骨スペースに合祀(ごうし)し、永代供養する。宗派や国籍は一切問わない。維持費もいらない。料金は送料込みで3万円強だ。

だが一方で、経済的行為と宗教は分離するべきだとの反発の声もある。それに対して橋本住職は「もちろん、戸惑いの声はある。しかし誰かが憎まれ役を買って出て、ある一つの成功モデルを作っていかないと、明日の日本の仏教のお寺に未来はないと思ってやっている」と語った。