インタビュー・テキスト:Yaminoni
写真:Hiroki Obara
9sari groupからリリースしたソロEP「gRASS HOUSE」を筆頭に目覚ましい活躍を続け、今やMSCの若手を引っ張る存在として孤軍奮闘するDOGMAと、堅い韻と滑らかなフロウでどんなビートも料理するシェフことMEGA-Gによる、スモークしっぱなしの2人がタッグを組んでフルアルバムをリリース。MSCメンバーによる久々の作品ということもあってリラックスした雰囲気の中、気づけばストーナーな会話に脱線しっぱなしのインタビューをお届け。
「今、1本目のジョイントが燃え尽きたって感じっす」(MEGA-G)
――いつぐらいからこの話は出たんですか?
MEGA-G:この話自体は今年の2月か3月に浮上したんすけど、その前にもやりたいねって話はずっとあっためていて。そのあっためていた火種がついちゃったっすね。そして今、1本目のジョイントが燃え尽きたって感じっす。
――このユニットの始まりは、MEGA-Gの2ndソロアルバムでMVにもなった「HIGH BRAND」からスタートしたんですよね?
MEGA-G:最初の共演はそうですね。
――あのMVはアムステルダムへいつ行った時の映像なんですか?
MEGA-G:あれは2013年っすね。
――アムスには最初からMVを録る予定で行ったんですか?
MEGA-G:いや、日本に戻ってからアムステルダムの思い出を書こうよみたいな感じで曲を作って。思ったより出来がよくて、せっかくだったらビデオを撮りたいねっていう話をしてた年の秋にアムステルダムになんか2人とも行けるチャンスがあって。そのタイミングもあったんで、これちょっと行った先でビデオ撮れたらいいよねっていう話から実際に交渉して。
DOGMA:1回目はただ遊びに行って、2回目で曲を作って、3回目でMV。そんな感じっすね。
――だいぶ段階を踏んであの映像は作られたわけなんですね。どうりで店員の人たちも、かなり自然な雰囲気で写っていますもんね。
DOGMA:あそこまでいくのに時間かかったもんすね。
MEGA-G:常連と認められるまでも結構ハードルは高かったんすけど、そこは俺たちも飛び好きってことで飛び越えて。人種の壁も言葉の壁も全部煙で飛ばして。
DOGMA:ジョイントっすね。
MEGA-G:普段のコーヒーショップに立ち寄った2人がそこでラップをしてるっていう映像を撮りたいから、自分たちが歌ってるのを意識しないで普段通りのルーティーンで動いてくださいって言ったら、すごい好意的に協力してくれてお店が閉じてから3時間くらい撮影に付き合ってくれて。撮影が終わった後も店長の思い出話を聞かせてくれたりして。
――いい話っすね。
MEGA-G:ジョイントがちょっと長すぎちゃって話が尽きないっていう。
――(笑)。一体何g使ってるんだっていう太さですもんね。
MEGA-G:あれは25gですね。
――とんでもないですね。
MEGA-G:あのお店がカップに提供してた一番上の。
DOGMA:ハイグレードのやつでしたね。
MEGA-G:Wi-Fi KUSHってやつなんすけど。
――そんな名前あるんですか(笑)。
MEGA-G:受信しちゃったんですよね。「ビデオにはおっきいジョイントが必要だろ」ってプレゼントしてくれて。顔面焼けるかと思いましたよ。
――根元までいったら確かに熱そうですね。
MEGA-G:あの人数で回しても根元までたどり着けなかったよね。
■「『比喩表現を究極どこまでできんの?』っていうチャレンジっすね」(MEGA-G)
――いつの間にかすっかり話が横道に逸れてるんで、そろそろアルバムの話に戻しますね。最初に話が出たのは2月か3月って言ってましたけど、実際にリリックを書き出したりと制作に入ったのはいつからだったんですか?
MEGA-G:シングルを切った2枚に関しては、3月くらいからやってたんすけどアルバム本編に関しては5月中盤から7月の終わりぐらいにかけてとか。
――だいぶタイトですね。
MEGA-G:その間にかなり集中してリリック書いてミーティングを重ねて、ビートも雰囲気合うやつを選別して。
――ビートに関して気になったのが、今回参加しているトラックメイカーは、Hardtackle 66さんとT.TANAKAさんの2人だけですよね。この2人はまさにMS印っていう印象があるんですが、それと同時にMEGA-GさんもDOGMAさんもクルー以外の交遊も広いイメージがあるので、アルバムを作るとなるとてっきりいろんなトラックメイカーが参加するのかなって思ってたんですけど、この2人だけにあえてしたのは何か意図があったんですか?
DOGMA:ひとつの縛りっていうのもあったんすけど。
MEGA-G:このトラックメイカー2人を軸にビートを作っていこうと思うっていう契約の元だったんすけど。
――最初からそういった話があったんですね。
MEGA-G:ただ、そっちの方がビートにまとまりがあって逆に良かったかなって。
――ストーナーアルバムって聞いて連想するのはチルっぽい雰囲気なんですけど、今作は全体的にハードな曲調で、聴く前のイメージと実際聴いた印象はかなり違いました。それにリリックもネタの種類を言ってたりとかはあるけど"ブリブリ"って言葉は一言も出てこなかったりと、あえて直接的なワードは避けてる気がしたんですけどそこはどうですか?
MEGA-G:そこは今回一番意識したっすね。ストレートな表現だとあまりおもしろくない、比喩表現こそラップの醍醐味だっていうことを2人とも共通認識で持ってて。「比喩表現を究極どこまでできんの?」っていうチャレンジっすね。
DOGMA:比喩表現を使って中身をどんだけストレートに伝えられるかっすね。ストレートに受け取らせるための的確な比喩表現を作ることって難しいことなんですけど、そこはストーンズプロジェクトの課題でしたね。それに踏む韻のことも考えるんで今回は作っていておもしろかったっすね。
――それに今作は2人での掛け合いも聴きどころですよね。
MEGA-G:そこは2MCの一番の醍醐味なんで。
――今作はひさびさの共作になると思うんですけど、どうでした?
MEGA-G:やっぱいいっすよね(笑)。ソロだと詰まったちゃった時に次の答えが見つからなくなっちゃうことが多いんですけど、そういう時にパートナーがいると「俺こっから先進まないんであといいっすか」とか「ちょっとだけヒントください」とか。あとお互いスタジオでセッションし終わったら次に向かう時まで作り込んでおこうとか1人で悩むことがなくなるんで、作業がここまで短くて終わったっていうのは2MCだったからっていうのがでかいっすね。
――ドグマさんはどうでした?
DOGMA:メガさんは、自分にはないスキルのプロなんでそこはすごい大きかったっすね。スタジオでセッションする時にメガさんが書いてきたのを見て「こうきたのか」って受ける、その刺激が強かったっすね。そこでガンガン書き直したり苦戦したりとかもあったんで。1人でやってるとそういうことにはならないんですよね。もう自己満で終わりなんで。
MEGA-G:自己完結だもんね。
DOGMA:そうですね。こういう見方で飛ばして来たんだったら、それに対して自分もこう飛ばすことによって化学反応が起こるのかって。そういう考えって1人じゃ生まれないんで、そこは大きく違いますね。特にこのテーマって、自分がやってる中ではいつも通りなんで。やっぱ同じことをしてもつまんないんでどういう風に見せようかなって中で、今回2MCじゃないと考えつかない発想っていうのは多かったのかなって思いますね。
MEGA-G:どのテーマも軸にウィードはあるんだけど語り口が違うからまったく違う曲に聴こえるっていう。
――旅の断片を次々にかけあっていく「FLIGHT RECORDER」なんてまさに2MCならではの部分が出た曲ですよね。
MEGA-G:旅行を全部し終わって最後フライトレコーダーを開けるまでの瞬間っていうかその緊張感を作りたくて最後がっつり掛け合いにしようって。リリックの内容もポジティブなことも言ってればバッドなことも言ってるけど、それ全部が旅行の思い出っすね。
――客演陣について聞いていきたいんですけど、まずは何と言っても総勢8人が8小節ごとにマイクリレーしていく「HATEFUL8」が強烈な一曲ですね。
MEGA-G:これは「Party & Goodshit」を録ったメンバー(MEGA-G、DOGMA、MONYPETZJNKMN、T2K)で「もう一曲何かやりたいね」って話してたのが元になるんすけど。
DOGMA:「HATEFUL8」ってタイトルは先に決まっていたんで、後の2人どうしようかっていうことろから、地獄の世界観をブツけるみたいな曲だと思ったんでT2KがいるんでDutch Montanaを呼んでもいいんじゃないかっていう。
――あと「PARTY & GOOD SHIT」に入っていないメンバーとしてはBESさんですよね。
MEGA-G:BES君とはスタジオに入る直前まで遊んでて、実は「これからスタジオで」って言ったら「後で遊びに行きます」って言って来てバースを録って。
――現在の心境が出た、貴重なバースですよね。
MEGA-G:その場で書いて誰よりも早く録ってたよね。
――DOGMAさんのリリックに"証言"のフレーズがあるように、かなり中毒性の高いワンループのトラックですがこれは最初にストックを聴く段階ですでにあったトラックだったんですか?
MEGA-G:ミーティングの段階で聴かせてもらって「これかっこいいな」って思って。フックを入れちゃうと長く感じるから、そこはスクラッチかなって思ったのでDJ KOHAKUに頼んで。スクラッチはやっぱヒップホップをすごい感じるんで。
「直接的な表現が多い今の流行りの中で一発爆弾を落とす」(DOGMA)
――あとはTHE LEFTYの2人ですけど、JUBEさんはMEGA-Gさんのソロアルバムに参加してましたけどDOGMAさんも面識はあったんですか。
MEGA-G:そこはお互いに個人でもジョイントしてて。JUBE君に最初話しを通したんだけど雰囲気的にK-BOMB君も絶対合うよなって思ってたんで、ダメ元で言ったらK-BOMB君の方が乗り気だったっていう。
DOGMA:「俺もうやるよ、やるからな!」って(笑)。
――相当濃いメンツですがフィーチャリングの曲は結構すんなりいったんですね。
MEGA-G:そうっすね。今回はいろんな曲にフィーチャリングしてもらうんじゃなくて曲は絞ろうって思ってました。フィーチャリングを多くするとライブで再現できなくて、やれる曲が限られちゃうんで、そこはライブを意識してなるべく2人でやってる曲を多くしようってことは考えましたね。
――確かにライブはこれからさらに重要になってきますもんね。それで言うと、今のフリースタイルダンジョンを皮切りに起こっているブームによって現場が増えてきた実感とかはありますか?
MEGA-G:それってフリースタイルシーンには恩恵はあると思いますけど、クラブシーンは変わってないと思いますね。地道にやってる奴からしたらブームはまったく関係のないもので、むしろそのブームによってどうしようもない作品が増えるんだったらそれを成敗する側に回りたいなって感じっすね。もちろん、ブームになるのはすげえうれしいと思いますよ。でもやっぱブームの中から本物がどれだけ出るのかっていうのが大事だと思うんで。結局ブームで薄まっちゃってそれで終わっちゃったら寂しいなっていう。ブームの中でもぶれないで濃い奴がいるといいのかなって。
DOGMA:さっきの比喩表現の話になるんすけど、直接的な表現が多い今の流行りの中で一発爆弾を落とすっていうのはありますね。そういう意味ではシーンに投げかけてるっていうか、アンサーを問いかける1枚を作りたかったっすね。
MEGA-G:そうだね。ストーナーアルバムであり、何よりも誰よりもヒップホップアルバムっていう。そういう感じですね。
――MEGA-Gさんは少し前に日常生活に支障が出るほどの怪我をされてましたよね。そのフラストレーションが爆発してるなって。
MEGA-G:アキレス健を切っちゃったんですね。おかげで仕事もクビになっちゃったんで。クビになった怒りを全部ラップにぶつけて。これもうやるしかねぇ、俺にはこれしか残されてねぇって。やっちゃいましたね。
――話は変わるんですけど、今作のジャケットってどなたが手掛けたんですか?
DOGMA:デザインした人は自分の高校の先輩なんすけど、サテライトで最初に出した『FULL SMOKE』もその人なんですよね。
MEGA-G:たまたまDOGMAの家で「チーチ&チョン」のアニメDVDのジャケットを見たときに「これだ!これしかねぇ!」って。
DOGMA:はまっちゃったっすね。
――(笑)。ちなみに9月にUNITでリリパがあるんですよね。
MEGA-G:そうっすね。9月3日、草の日に。
――日にちのこだわりが今回、半端じゃないですね。
MEGA-G:CPFの会員限定で届けられたEPも数字に全部こだわってて、4月20日にドグマのEPで、7月10日のオイルの日は自分のEPで。そしてアルバムの発売日が8月17日のハイな日で。
――オイルの日なんてあるんですか?
DOGMA:710をひっくり返すとOILって読めるんすよ。
――あぁ、そこか!すごいっすね(笑)。今作を出してまたアムス旅への欲求が出てきたんじゃないですか?。
MEGA-G:行きたいっすよね。
DOGMA:今すぐにでも。
MEGA-G:でも、計画はしてらっしゃるんですよね。
DOGMA:そうですね。
MEGA-G:また、カップにどっぷり。
――最後にリリパについて改めてなんですけど、どんなパーティーになりそうですか?
MEGA-G:レフティーだけ予定が合わなくて参加できないんすけど、その他は。
――「HATEFUL8」やるんですね。
DOGMA:揃っちゃいますね。
MEGA-G:それに自分とDOGMAが全国を回って本物と感じたスモーカーを他にも召集して。岡山からは自分たちよりアムステルダム経験値高めのHANABIS君。俺たちなんてまだガキですよ。あと埼玉の熊谷の舐達磨って最近アルバムを出したグループがいて。彼らもハードコアスモーカーなんでこれは是非ってことでジョイントしてくれて。
――まさにスモーカーの祭典ですね。
STONEDZ「Stonedz Project」(P-VINE RECORDS)
発売中
<トラックリスト>
1. SKY MISSION
2. STREET RHYMINGMEN
3. HATEFULL 8 feat. BES, DUTCH MONTANA, T2K, MONY, PETZ, JNKMN
4. COFFEE BREAK #1
5. FLIGHT RECORDER
6. LYRICAL DOPE HUSTLERZ
7. TOP SHELF LIFE feat. THE LEFTY
8. COFFEE BREAK #2
9. O.G MUSIC
10. WAX POETICS
11. NIGHT SHIFT
12. 雨のアムステルダム
13. STONEDZ SLOW
#1, #13 Prod by T.TANAKA #2, #3, #4, #5, #6, #7, #8, #9, #10, #11, #12 Prod by HARD TACKLE66 Mixed by I-DeA for flashsounds@fls5th lab
「STONEDZ 『StonedzProject』 Release Party」
日程:2016年9月3日(土)
17:00開場/開演 22:00閉場
前売:¥2,500-(+Drink代)
当日:¥3,000-(+Drink代)
StonedzProject会員:¥0-(Drink代のみエントランスにてお支払い下さい)
出演: STONEDZ (MEGA-G & DOGMA)
BES
MONYPETZJNKMN
T2K and Dutch Montana
舐達磨
HANABIS
DJ MASH
DJ MANTLE
DJ U-LEE and more...
チケット取扱: LAWSON TICKET(L:77679) e+ diskunion 渋谷Club Music Shop / 新宿Club Music Shop / 下北沢Club Music Shop / 吉祥寺
主催:CREATIVE PLATFORM事務局
協力:P-VINE, Inc.