12日にオンエアされたAbemaTV「AbemaPrime」で、月曜レギュラー・原田曜平氏が、芥川賞作家・村田沙耶香氏と対談。芥川賞受賞作「コンビニ人間」の誕生秘話や、“クレイジー沙耶香”と呼ばれるプライベートについて話を聞いた。

村田氏は、今年7月、小説「コンビニ人間」で第155回芥川賞を受賞。執筆活動の傍ら、受賞作の舞台となったコンビニで、今も週3回アルバイトをしている。芥川賞作家とコンビニバイトという2つの顔を持ち、作家仲間からは“クレイジー沙耶香”と呼ばれるという村田氏。どんな人物なのか、原田氏が迫る。

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■「正常に修復されてしまう世界の暴力性」を描きたかった

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「コンビニ人間」は、幼い頃から周囲に“変わった子”と思われていた主人公の女性が、マニュアルだらけのコンビニで働く中で、自分の存在を認識するというストーリー。主人公と自身は、コンビニでアルバイトという共通点に加え、年齢も近いが、「自分のことではまったくない。設定以外はかなり一から作った主人公」で、「私とは結構性格が違う人」だという。

原田「どこが、(読者の人たちに)刺さったポイントだと思いますか?」

村田「それが、何でだかさっぱりわからなくて。何か自分では、ものすごいへんてこな小説を書いたと思っていて。この主人公に、読者の人はついてこれるかなと思いながら書いていたので、こんな風に温かく読んでもらえることがすごく不思議です。私自身が」

原田「コンビニって、小っちゃいエリアなのにいろんな場所に適応できる、実はすごく普遍的な物語だったというのが。学校にも置き換えられるし会社にも置き換えられるし、ママ友との付き合いにもっていう。普遍的な変人がいっぱい出てきてたんですけど、そこがいちばんのポイントだったんじゃないかなという気がしましたけどね」

村田「ありがとうございます。そういう世界の怖さ、正常な世界、正常に修復されてしまう世界の暴力性みたいなものを描きたかった。すごく描きたかった。デビューしてからずっと描きたいことの一つなので、すごくうれしいです」

■コンビニバイトを続ける理由は「小説を書くため」

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村田「専業で(小説書きを)やってみようと思ったこともあるんですけど、さぼっちゃうんですよね。小説書くのは、すごい好きなんですけれど、コンビニとか、社会と接する時間がないと、何か“毎日が日曜日”みたいになってしまって、ダラダラしてしまうんです。コンビニで働いていると、朝の2時に起きて、(朝8時からの)コンビニ(で仕事を始める)までの時間執筆して」

コンビニでの勤務は、午後1時まで。その後、夕方からまた執筆し、遅くとも夜の9時には寝ているという。村田氏いわく、そのリズムがすごくちょうど良く、「1番執筆が進むリズム」だという。

村田「最終的に(自分が)何で働いてるのかって言われたら、たぶん小説が働いていると小説が進むからっていうのがいちばんの理由なので。どちらかといえば、“小説人間”なんじゃないかなと思っているんですね」

■“クレイジー沙耶香”と呼ばれている理由

村田「何だろう、私がちょっととぼけたことをしたり、言ったりしたときに、何かツッコミとして言われることが多いような気がします」

原田「とぼけたことってたとえばどんなこと? 相当なことじゃないとなかなかクレイジーって言われないと思うんですけど」

村田「何か、う~ん昔の恋バナとか話していて、それがすごい変な話だったりとか。(例えば)その時私実家暮らしだったのに、合い鍵を欲しがった彼氏がいたとか、そういう話をするとなんかまあ”クレイジー”だねって。沙耶香が変だからだよ、みたいに」

原田「彼がクレイジーだけど、それと付き合ってっるってこと?」

村田「沙耶香がクレイジーだから、相手も言いやすいんだよみたいな感じで、突っ込まれるみたい」

■“クレイジー沙耶香”が考える、今の若者は「すごく純粋」

村田「すごく純粋ですし、真面目で。何か自分の大学の頃こんなに真面目だったかなと思うくらい、すごく良い子たちばっかりっていうイメージです」

原田「良い子っていうのは?」

村田「そうですね、なんかすごく素直。言われたことを、本当に真面目にやるようなイメージです。そういうなんかピュアさにちょっと打たれる時がありますね。良い意味でピュアだなと。自分がちょっと汚れてしまっているなと思いますね」

自身、コンビニバイト同士で恋愛をしたこともあるという村田氏は、最近のコンビニ内若者事情について、「コンビニ内カップルが減ってる」という。アルバイトをする学生にとって、コンビニは、あくまでも“働く”ところになってきているらしい。

■作家志望の方に、村田氏からアドバイス

村田「本当に不安定ですよ、としかいいようがないですよね。でも『書く』って、本当にすごく両立できることなので。私もコンビニがあると、むしろ書ける。だから、『書きたい』っていう気持ちを抱えたまま、普通に就職した10年間があったとして、その間忙しくてあんまり書く時間がなかったとしても、たぶん(その思いは)蓄積されてると思うんですよね。いつでも筆をとっていいし、書きたいと思っている時点で、その人は『小説家』。小説を書く人、作者であると思うので」

原田「就職しちゃって、『俺って安定をとっちゃった』って思う必要はなくて」

村田「全然そんな必要ないと思います」

原田「むしろその世界で、いろんな目が肥えたりとかというのが、生かせる仕事だってことですね」

村田「もうそれがすごく生かせる仕事だと思います」

■原田曜平氏 村田氏は「理路整然。視点はユニークだが、魅力的」

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対談を終えた原田氏は、村田氏を「理路整然として、視点はユニークなんですけど、魅力的な方でした」と、ますますその人柄を知りたくなったことを明かす。小説については、「人間ってみんな“変な部分”があるのに、コンビニという場で働いていると“修復”されるという。“修復”がキーワードで、最終的には、主人公は修復される人生を選ぶ。

“変な部分”とは例えば、ある日鳥が死んでいる。そこで主人公は、焼き鳥好きなお父さんのために、焼き鳥にしたら喜ばれるかなと思うけど、受け入れられない。自分がよかれと思って考えても、社会に受け入れられないことがある……というような人生だ。

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MCのウーマンラッシュアワー・村本大輔は、「(コンビニで)“決まった時間”を繰り返すことにストレスって感じないんですかね?」といいつつ、「(村田さんに)聞きたいな、話」とも。“変な部分”と“修復”の話に興味津々。早くも村田ワールドにハマりつつある様子をみせていた。

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