TPP関連法案で揺れる日本の農業、今後は世界を相手にした戦いが予想される。だが、国内では就業人口の減少に加えて、高齢化など逆風が吹きすさぶ。こうした状況に一石を投じるべく、新たな取組をはじめている会社がある。農業生産法人「ベジフルファーム」だ。

独特なのは元ヤンインターン募集と銘打たれた人材要項だ。タトゥーOK、レディースOKパンチパーマ優遇……。ベジフルファームの社員は元ヤンキーばかり。もちろん、ヤンキーでない社員もいるが、代表取締役はかつて喧嘩や暴走行為に明け暮れていた千葉の暴走族の総長だ。だが今は仲間たちとバイクをトラクターに乗り換えて農業に取り組んでいる。

「よく検問突破してた。いかつい車を乗り回していました」と振り返るのは代表取締役の田中健二さん。暴走族・鉈出殺殺(なたでここ)の元総長だ。社員の佐藤武緒さんは鉈出殺殺(なたでここ)と激しい抗争を繰り返してきた犯那殺多(ぱんなこった)の元総長だ。「駅で10人に囲まれて勝った」と不敵な笑みを浮かべる。対立していた両者だが、今は仲間だ。社歌も作り、農業に「本気で」取り組んでいる。

元ヤンの人材募集は業界では驚きを持って迎えられた。それまでは「ヤンキーに農業は無理」というのが常識だったからだ。だが、田中さんは「ヤンキーは農業に向いている」と断言する。

一例として、ヤンキーの負けず嫌いの精神は農業の現場で活きるという。「農作業していると腰が痛くなる。痛いって言ったら負けみたいな精神がヤンキーにはある」と指摘。

加えて、「ヤンキーは車やバイクが大好き。自分でいじれるやつも多い。だから農機具だって自分でメンテナンスできる」と言う。実際に同社では社員たちで農機具のメンテナンスを行うことで経費を抑制しているという。

さらに「ヤンキー精神」の根底にある先輩へのリスペクトも大いに農業に活きるという。「農業って教科書や取扱説明書にのっていない“ちょっとした技術”が多い。そういうところを先輩に教えてもらっている」ことで先輩農家とのコミュニケーションも円滑に図れるという。

今、彼らはさらなる先を見据える。すでにチョウザメを養殖し、日本産のキャビアを輸出しようとしている。加えて、ベトナムに日本の農業技術を提供し、世界進出も目論む。

農業というジャンルで、やんちゃな精神で世界を相手に戦おうとしているベジファーム。田中さんは「家でゲームしている若者、出てきて農業しましょう」と語った。

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