まだあどけなさが残る18歳の少女は、5年後、女性が憧れる女性へと成長した。彼女の名前は橋本奈々未 。日本のトップアイドル、乃木坂46の主要メンバーのひとりだ。
「乃木坂46を卒業して、私は芸能界も引退します」
人気絶頂の中、先月19日に放送されたラジオ「乃木坂46のオールナイトニッポン」 で彼女はそう宣言した。
「私は家に出来ることを完璧にやろうと思っている」
アイドルになったきっかけはお金のため、すべては家族のためだった。地元北海道の高校を卒業後、東京の美術大学への進学を決めた。水道・ガスがとまることもあったというほど貧しかった実家暮らしの中で、親の反対を押し切り上京するには、生活にかかるすべてのお金を自分で工面するしかなかった。奨学金はほとんど学費につぎ込み、生活費は自分でバイトを掛け持ちしてまかなっていたという。1日の食事がおにぎり1つだけの日々もあった。
「大学内での思い出で華やかというよりは、ただ生活がつらい。おにぎり買って歩いてて、何か癪に障る、その場で買ってたおにぎりを床に投げつける」
そんな苦しい生活から抜け出すために選んだ道がアイドルだった。明るい笑顔に潜む、橋本奈々未 の硬い意思ーー。しかし、2014年体調不良のため全国ツアーを欠席することに。ファンの前に立てない苦しみを感じた一方で、アイドルという仕事に気持ちが追いつかないこともあった。
「ずっと一般人に戻りたかった、誰の目も気にせずに友達と遊べるし、どこにだって行けるし」
踏みとどまれたのは、家族への、そして弟への想いからだった。「弟の学費は何としてでも自分が払う」。弟のために続けた芸能活動。デビューから5年、今年弟は大学へと進学した。引退発表後に出演した番組では、弟の学費が免除になったことを報告。その時頭に浮かんだのは引退の2文字だったという。そして、母親からの手紙も彼女を後押しした。
「本当に今までごめんね。無理しないで、(これからは)好きなことをしてください」
この母親の言葉で橋本奈々未は引退を決意した。家族を想い、走り続けた5年間。彼女は来年、自身の誕生日である2月20日前後に引退する予定だ。
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