共和党のドナルド・トランプ氏が当選した米大統領選挙。多くのメディアが当選を予測していたヒラリー・クリントン氏とはすでに会談を済ませていた安倍総理だったが、今回の選挙結果を受け、異例の早さでトランプ氏との会談を決断した。

 当選前には「日本からの米軍の撤退」「日本の核武装」など、過激な政策で物議を醸してきたトランプ氏。それらの実現可能性はどれほどのものなのだろうか。元防衛大臣の森本敏氏が解説した。

■在日米軍撤退は「アメリカにとっても損」

 トランプ氏は選挙戦で「(駐留のための経費を)日本が全額負担しなければ在日米軍は撤退させる」と発言。これに対し、多くの米軍基地を抱える沖縄県の翁長雄志知事も「私たちの意見を聞いて頂いて、その中でどのような反応をするか。沖縄側からすると期待したい」とコメントしていた。

 在日米軍基地はアメリカにとってアジア太平洋政策の要でもあるが、今後、トランプ氏の主張が実現することはあるのだろうか。森本氏は「その可能性はないだろう」と断言する。

 まず森本氏は「全額負担はありえない」という。日本は米国と分担している米軍駐留予算全体の74.5%にあたる年間5800億円を支払っており、これは同じく米軍が駐留する韓国・ドイツなどと比べても高い水準だ。森本氏は「電気代や水道代など円で払うべきものは100%払っており、これ以上を負担すれば兵士の給与まで日本が払うことになり、そうなれば在日米軍は日本の傭兵になってしまう」と話す。

そして「アメリカの経済に非常に大きな打撃を与え、結果としてアメリカは損をする」と指摘した。

■核武装容認論に「安全保障に関して知識がないとしか思えない」

 さらにトランプ氏は日本や韓国の核武装を容認する立場も示してきた。こうした発言に広島県原爆被害者団体協議会の坪井直理事長は「核問題というのは、これは世界的な問題でなければいかんのです」とコメント、長崎原爆被災者協議会の谷口稜曄会長も「核には核を、力には力をということになる。これは絶対許してはいけない」と訴えている。

 日本の核武装論について森本氏は「日本はそういう選択をしないし、日本が核武装するということは日米同盟を破棄するということだ。トランプ氏はよほど安全保障に関して知識がないとしか思えない」と、トランプ氏の知識・理解度に疑問を呈した。


■「安倍総理がどこまできちっとお話しされるかが鍵」

このように、トランプ氏が日米関係を本当に理解しているのか疑念が浮上する中、来週17日、安倍総理はトランプ氏と初の会談を行う。

 この会談は、日本側がトランプ氏の外交安全保障政策を支えるチームと対面する初の機会。今後の日米外交のためにも、十分な事前準備が必要といえるが、森本氏も参加している日本側のチームは、クリントン氏が当確することを前提に提言書を作成してきたという。それゆえ、トランプ氏が事前の予想を覆し当選したことで、日本側は用意していた提言書を急ぎ書き直さざるを得ない状況になっていると明かす。

 森本氏が明かしたクリントン"大統領"向けの"幻の提言書"には、一体なにが書かれていたのだろうか。

 森本氏は「簡単なことなんですけど」と前置きした上で、次のように話した。「アメリカがいくら望んでも、日本は憲法の枠があって、できないことを言われてもできないということ。またアジアが情勢不安になる中で、国防費が厳しいアメリカができないことをいかに日本が補完するか。さらに日本だけでなく他の同盟国と協力して、アメリカが国際秩序を乱す国に対して向き合えるようにいかにサポートするか」。

 日本に対しトランプ氏が憲法改正を迫ることもあるのだろうか。森本氏は「ないだろう。みんなと対話をし、協調し、国内においても、国外においても、うまくやっていこうとする方針が新しく採用されるだろう」と話し、「その時にどこまで総理がきちっとお話しされるかが、鍵だろう」と話した。

(C)AbemaTV

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