米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利した。同氏は「日本が駐留米軍経費の全額を負担すべきだ」と主張してきたが、これは日本にとっては「危機」となるのか。
今後の展望について、12日に放送された『みのもんたのよるバズ!』(AbemaTV)では国際ジャーナリストの春名幹男氏、防衛ジャーナリストの桜林美佐氏が意見した。まずは春名氏がこう口火を切った。
「そもそも、在日米軍は、日本を守るためにいるのではない。外に出ていくためにいるのです。朝鮮半島、台湾海峡、東南アジア・・・アメリカの目的のためにいるので、撤退はしません。ただし、尖閣を守るのかといえば守ってくれそうにないです」
これに番組MCのみのもんた氏は「オバマ大統領は日米安保の範囲に尖閣が入ってると言いましたが?」と質問。だが、春名氏によるとオバマ氏は尖閣が日本の主権下にあるとは言ってないそうだ。米軍の空母はフィリピンと中国の間で領有権問題が発生している南シナ海での示威行為はしたものの、日本が関係する東シナ海では同様の行為を行っていないとも指摘した。
よって尖閣の優先順位はアメリカにとっては低く、米軍にとって次の最高司令官となるトランプ氏はそもそも米軍の戦略的意義を理解していないとの懸念もあるという。これに対し桜林氏はこう語る。
「これから勉強はされると思うので、今後の意識の変化は期待したいです。日本を守るために米軍がいるわけではないですが、アジアの安定というためには、日本も含まれていますので、日本も守られているということを意味しています。現在アメリカにとってロシアが脅威対象のNo.1なので、脅威認識がある限りは、日本国内の米軍基地はアメリカにとっても必要です」
また、沖縄県の翁長雄志知事は、トランプ氏が「日本が駐留費を払わなければ米軍撤退」を示唆していることについて「沖縄側からすると期待したい。膠着状態といった政治はしないのでは? トランプ氏に祝電を打ち、会談を要請する」と会見で説明している。ここで、番組には参議院議員の青山繁晴氏が登場。トランプ大統領誕生が日本の安全保障を変えるチャンスでもあるとの見解を述べた。
「翁長さんは、トランプに会って基地を全部なくしてくれ、と言いたいでしょうね。今は日本側が約75%の駐留費用を負担していますが、トランプは米軍の費用を日本側が全部払えと言ってくるでしょう。トランプ大統領誕生はいい機会ですよ。ヒラリーだと今までと変わらない、ずるずるの世界が続いていたことでしょう。アメリカにとってはトランプがいいとは思いますが、日本の自立にとってもいいこと」(青山氏)
だが、春名氏によると、この状況を一番喜ぶのは中国であり、世界においてアメリカの立場が弱まるとも予測。それをアメリカ国民は本当に喜ぶのだろうかとの疑問を呈した。もはやアメリカは世界の警察ではないが、北朝鮮の金正恩第一書記に対し、オバマ氏が外交をしなさすぎたとも語った。青山氏はその背景を語る。
「北朝鮮は今の姿にしたのはオバマです。甘やかしたので、そこに付け込んで北朝鮮はミサイル開発・核開発をしました。オバマは対人恐怖症があり、そこで安倍総理も苦労したんですよ。友達っぽくなれないんですよね。トランプは実業家で色々な人と喋るのが仕事。プーチンとはすでに仲いいですし。
オバマみたいに引っ込み思案なアメリカ大統領の方が北朝鮮は力を伸ばせたわけです。春名さんは、アメリカが引いたら中国が喜ぶ、と言いましたが、日本が本来の力を発揮したら青くなるのは中国です。東アジアでは、トランプの出現は大きいです」(青山氏)
また、桜林氏は、現在政情が不安定な韓国の状況は北朝鮮にとってはチャンスだとも語る。火事場泥棒的に何らかの手を打つなど、駆け引きが展開されると予想する。となれば、日本に向けても北朝鮮がミサイルを撃つなどの威嚇も予想されるが、桜林氏は防衛体制に懸念を示す。
「ミサイルディフェンスは万能ではないんです。次善の策です。撃ってきたら撃ち返すというもの。10発しかなかったら、相手から11発目が来たらもう防衛はできなくなるわけです。向こうがたくさん撃つのであれば、こっちはもっと買うこととなり、費用がかかるわけです」
また、11月17日に安倍総理はトランプ氏と会談を行うが、2人の関係はどうなるか。春名氏はこう語る。
「17日、安倍さんは米軍が日本からいなくなっては困る、と言うでしょう。そして、安倍さんとトランプさんの関係は良くなる。オバマさんと安倍さんの関係は悪かったです。安倍さんが総理大臣に返り咲いたのが2012年12月でした。オバマさんに電話かけて『よろしく』と言い、2013年1月に会うと言ったのですが、実際に会ったのは2か月後。今回は1週間も経たないうちに会うことになりました」
これに対し、青山氏は「ホワイトハウスの人に聞いたのですが、オバマは誰に対しても対人恐怖症で、電話も苦手だそうです」と裏事情を明かした。