11月8日のアメリカの大統領選挙に勝利し、次期大統領となったドナルド・トランプ氏(70)。共和党の候補選挙の時から過激発言で何かと話題をさらい、政治や軍の経験が全くゼロという状態で大統領になるのは、米国建国史上はじめてという異色の経歴で世界中の注目を集めている。
世界最大の政治ショーでもあるアメリカ大統領選挙では、音楽は集会を盛り上げる重要なアイテムとして、トランプ氏も様々なミュージシャンの楽曲を使用していたが、トランプ氏自身はローリングストーンズ誌のインタビューで、好きなミュージシャンについて質問されると「ビートルズやローリング・ストーンズはもちろん、エアロスミスが特に好きだ」と答えている。
エアロスミスは1970年より活動する、スティーヴン・タイラー(vo)を中心とするアメリカ東海岸出身のハードロックバンド。しかし、トランプ氏のエアロスミスへの思いは片想いのようで、選挙運動にエアロスミスの曲を使ったことに対して、スティーブン・タイラーは楽曲使用停止の要請を2度に渡り行っている。
大統領選の大規模集会では、音楽をかけて盛り上げると同時に、親しみやすさや力強さなど候補者の印象を演出するが、トランプ氏に対し、曲を使われたミュージシャンが抗議するケースが相次いだ。
ローリング・ストーンズが1969年に発表した「You Can't Always Get What You Want(邦題:無情の世界)」は、トランプ氏が候補者に指名された7月の共和党全国大会で使われ、ストーンズ側は「我々はトランプ氏を支持しない」と使用しないように抗議したが、トランプ氏は使い続けた。
またロックバンド、R.E.M.は昨年、選挙戦で楽曲が無断で使われたとして、トランプ氏に250万ドル(約2億6300万円)の支払いを求める訴訟を起こした。ベースのマイク・ミルズは「二度と俺たちの音楽を使うな」などとツイッターで批判した。
トランプ氏は好きなミュージシャンとして、他にも、ニール・ヤングやエルトン・ジョン、ポールマッカートニー、クイーンの名前を挙げているが、ニール・ヤングとクイーンには楽曲使用を断られている。
ヘビーメタル界の大物バンドであるトゥイステッド・シスターを率いるディー・スナイダー(Vo)は、トランプ氏の既存のものを覆すスタンスには賛同できる、として楽曲の使用を許可。ただし、トランプ氏のすべてを支持しているわけではなく、ディー・スナイダーは民主党候補にも楽曲の使用許可を与えていた。
今回のトランプ氏に限らず、選挙キャンペーンに楽曲を使用されることをミュージシャンが拒否する例は、選挙の恒例行事となっている。一方で民主党のヒラリー・クリントン氏(69)の支持を訴えた歌手のケイティ・ペリーや黒人ラッパーのジェイ・Zのようにミュージシャンが政治家の応援を積極的に行なうことも多く、選挙時期になると政治と音楽が密接に絡み合うのもアメリカの特徴といえるだろう。
このようにミュージシャンには不人気だったトランプ氏だが、12シーズン放送された「ジ・アプレンティス」というリアリティ・ショーへの出演による露出の蓄積や、歯に衣着せぬ物言いが聴衆を惹きつけて大統領選挙を勝ち抜いた。トランプ氏の大統領就任によって、アメリカはもちろん、日本や世界中の国々はどうなってしまうのだろうか。今後のトランプ氏の言動が注目される。
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