今、一本の映画が話題となっている。『この世界の片隅に』(片渕須直監督)だ。

 初日は全国63館で公開。これはいわゆる"話題作"の約4分の1という規模だ。しかし初週の興行収入ランキングでは『君の名は。』などに続き10位にランクイン、「ぴあ映画満足度ランキング」では堂々の1位を獲得するなど、超好調発進を見せている。

 そんな“このセカ”とは、一体どのような映画なのだろうか。

 原作はこうの史代さんの同名漫画で、舞台は太平洋戦争末期の広島。すずという一人の女性と、その家族のささやかな暮らしが戦禍に飲み込まれていく様子が描かれている。映画を観た人たちは、以下のようなコメントを寄せる。

 「戦時中というシビアな問題に対してコミカルに描かれている部分が多く、どの年代でも観ることができる」

 「その時代に入ったような感じに(思わせる)」 

 「(映画の)ある段階から戦争というものが日常に入ってきて、それが日常になっていく。そういうところが積極的に描かれていてとても良かった」

 シリアスな戦争映画が、なぜ多くの世代に支持されヒットしているのか。片渕須直監督に話を聞いた。

 作ろうと思ったきっかけについて片渕監督は「前に昭和30年の山口が舞台の映画を作ったんですけど、登場人物たちは10年遡れば戦争中にいたんですよね。のどかな人たちを描いたつもりだったんですけど、ちょっと前は全然違う状況下にいたんだなと」と前置きし、「戦後生まれの僕たちの感覚からすると、かなり断絶して見えるんですけど、普通に遡っていく方法がないかなと思って、それを映画の中でやってみようかなと思ったんです」と説明する。

 この「普通に遡る」とは、片渕氏いわく「そこ(映画)の中にいる人たちの気持ちに(観ている)自分の気持ちがフィットする」という事だそうだ。実際に「映画を観ている感じではなくて、その場所にタイムマシンで行ってすずさんの横に立った感じがする」と観た人によく言われるのだという。

 この映画の成功要因は大きく二つ考えられる。

 一つ目が「クラウドファンディング」。「この映画の中での戦争の扱い方、生きている人の扱い方は、今までになくて新機軸である」という考えのもと始めた“このセカ”制作は、経済的にも人員的にも厳しい状況から始まり、片渕監督も「最初のうちは自分の貯金を崩して持ち出していました」という。しかし、公開前からの話題性の高まりもあり、開始1週間で2000万円を突破。無事公開にこぎ着けた。

 二つ目が「地元のバックアップ」。昨年6月、「『この世界の片隅に』を支援する呉・広島の会」が発足。同会の西崎智子さんは、「作品の評価がすごく高くて何よりも驚いているのが、満席が続いてなかなか観られないということですね。監督の長年にわたる作品への向き合い方が素晴らしかったからだなと実感しています」と感激。片渕監督も「ロケハンで訪れた時にお世話になった方たちが会として組織になって、その後も支援していただきました」と感謝している。

 こうした一般の人々や地元のバックアップもあり、大ヒット作品“このセカ”は作られていったのである。まだまだ反響が広がるであろう“このセカ”。ぜひ一度、映画館に足を運んでみてはいかがだろうか。

(C)AbemaTV

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