北方領土が旧ソ連に占領されてから71年 。安倍総理は元島民の痛切な思いを胸に、日ロ首脳会談に臨んだ。今回の会談では、北方四島における共同経済活動について、交渉を開始することで合意がなされ、平和条約の締結に向け大きな一歩となった。だが一方で、島の返還については、具体的な進展はみられなかった。
最大の懸案事項である日ロ平和条約の締結について、新党大地代表の鈴木宗男氏 は「平和条約締結に向け新たな道筋をつけた首脳会談で、十分成果のあった会談だった」と評価する。
だが、平和条約に向けて前進したものの、北方領土返還への道筋はまだ見えない。背景には日本とロシアの主張の大きな隔たりがある。その隔たりの歴史を紐解けば、1945年8月、ソ連は日ソ中立条約を破り対日参戦し、北方領土を不法占拠。その後、1951年、日本はサンフランシスコ講和条約 で「南樺太と千島列島の領有を放棄」 した。日本は歯舞・色丹は北海道の一部であり、国後・択捉は日本固有の領土だと主張しているが、ロシアは千島列島に北方四島を含むとし、それをすべて放棄したと主張。その後、1956年の日ソ共同宣言 で、「平和条約締結後、ソ連は歯舞群島および色丹島を日本へ引き渡すことに同意する」と宣言した。その後、冷戦を経たことで大きな進展は見られなかったが、16日 、プーチン大統領は「1956年の共同宣言をベースにした話し合いに戻った。ただ2島返還と書かれているがその条件が判らない」とした。日ソ共同宣言をベースに話し合いがスタートしたことは進展に違いないが、返還への道筋はいまだ見えないままだ。
その解決の糸口になるのが、4島における共同経済活動だ。共同経済活動について、鈴木氏は「すでに安全操業という名目で、国後島周辺の海に日本人が入り、漁をしている」と話す。今回の共同経済活動とはそれを陸に応用したものだ。鈴木氏によるとこの共同経済活動、実は1998年の小渕総理とエリツィン大統領の間で開かれた首脳会談 のときにも出た話だったという。当時、共同経済活動委員会 と国境画定委員会 を組織し平和条約交渉の一環で行おうとしていたが、ロシアに許可をもらって活動するということがロシアの主権を認めることにつながるという理由から、外務省が反対した。ようやくその共同経済活動が動きだす。鈴木氏は「これはすごく大きいことだ」と話す。
一方で、7日、プーチン大統領は「北方領土での共同経済活動はロシアの主権下で行われるべきだ」と話した。自民党参院議員の青山繁晴氏 は「返還といえば普通は国の主権が帰ってくるということだ」と言及する。国際常識からしても、返還されるということは主権が返還されることと同義であり、プーチン大統領が”条件”に言及したということは、ロシアは主権を日本に譲渡することを認めてはいないのではないか、と考察する。もし、ロシアの主権下で共同経済活動が行われることになれば、犯罪が発生した場合、ロシアの法律で裁かれることにもなり、それでは本当の意味での返還とは言えない。
それに対して鈴木氏は、共同経済活動における主権の問題について「安倍総理は日本人ならば日本の法律を適用し、ロシア人ならばロシアの法律を適用するといった新しい枠組みを、日ロ両国の専門家が委員会を組織し、定める方針ではないか」だと話す。実際に安倍総理は、首脳会談を終え「今回、北方四島で共同経済活動を行うための特別な制度について交渉開始することで合意した。これは平和条約の締結に向けた重要な一歩」だと話している。
そんな中、ロシアは経済協力だけ「食い逃げ」するのでは、と危惧する声も上がっている。それに対してプーチン大統領は「共同経済活動はロシアを利するだけで、平和条約を棚上げしているという指摘は間違っている。肝心なのは平和条約の締結です。共同経済活動より重要なことです」と話しており、否定したがその本意は計り知れない。
先行きが見えない北方領土問題、今後の展開はどうなるのだろうか。
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