去年勃発した山口組の分裂騒動はその後も抗争を激化させ、日本各地で発砲・襲撃事件が相次いでいる。そんな中で公開された東海テレビによるドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』は、暴力団員の日常生活に迫った内容が大きな話題を呼んだ。映画では暴力団の姿を通して、憲法が保障する基本的人権は、ヤクザやその家族には適用されていないのではないか、という問題が提起されている。

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 暴力団による活動による一般市民への被害を抑えることを目的として1992年に施行された「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」、いわゆる"暴対法"。続いて2004年からは全国の地方自治体で暴力団排除条例の施行が始まり、暴力団の構成員は年々減少。昨年末時点では全国に4万6900人と、前年に比べ6600人減少した。

 一連の法整備によって、暴力団員は一般市民と同じような生活をすることが難しくなっている。フジテレビ記者が暴力団関係者に車購入で名義を貸していたとされる問題も、暴力団員の生活に制限があることが背景にあるといえるだろう。その対象は暴力団員本人だけでなく、影響は配偶者や子にも広がる。

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 元暴力団員で、現在は非行や家庭の問題から少年・少女を救うボランティア活動に従事しているKEIさんは「銀行で通帳が作れない。ローンは通らない。アパートも貸してくれない。下手したら旅行に行ってもホテルに泊まれない」と暴力団員やその家族の実情を明かし、「人権がまったくない」と話す。

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 山口組の元顧問弁護士で、『ヤクザと憲法』にも登場する山之内幸夫氏も「本来ヤクザも人であるから人権は当然ある。しかし、憲法が保障する"最低限の文化的な生活の確保"というのが無理になっている。」と暴力団やその家族の心境を代弁する。

 しかし、"反社会勢力"である暴力団は、麻薬の密売や賭博、振り込め詐欺などを収入源として、組の勢力を巡り抗争を繰り返す集団だ。時には一般市民を巻き込み、恐怖に陥れることもある。一方で、阪神大震災の際の支援活動や、ハロウィンでのお菓子配布など、一般市民の印象をやわらげようとする活動も行っている。

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 かつて北海道警察で暴力団と対峙していた髙橋博志氏は「地域に密着して地域を守る、外部からの侵略を阻止する、といった役割を果たしていたと思う」と、昔のヤクザの姿や役割について振り返る。しかし現在、そのような役割を担っているのは警察組織だとし、「確かにヤクザにもプラスの面はあるのかもしれないが、それ以上にマイナスの社会的影響があると思う。撲滅できるというよりしなくてはいけない」と反論する。

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 暴力団や公安警察の問題などを精力的に取材するノンフィクションライターの西岡研介氏も「僕は存在意義はないと思っている。認められない」と断言する。西岡氏は、暴力団組織の解体を進めていくことは可能だとしながらも、昔からヤクザをヒーローのように扱ったドラマ・映画も多いことから、「日本にはヤクザを受け入れる土壌がある。また、必要とされるから存在し続けるのだろう。そのニーズを考えると、なかなか壊滅というのは難しいのではないか」と話した。

 これに対し山之内氏は「高齢化、シノギの減少などで、確かにヤクザは衰退の一途を辿っている。そういう意味では、もうひと押しすれば今の表向きのヤクザは壊滅させられるかもしれない。だからと言って日本から組織犯罪がなくなることは絶対ない。違法な需要に対しサービスを提供する組織はなくならない」とし、「落ちこぼれた連中の受け皿」の意味からも、「表に浮かしておいて監視した方が良い」との見解を示した。これについては髙橋氏も家族の扱いについては見直す必要性もあるのではないかとコメントした。

 将来、日本社会に根付くヤクザが居なくなる日は来るのだろうか、そしてなくなった時、社会は一体どうなるのだろうか。

(C)AbemaTV

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