日韓合意から1年以上が経った今も在韓国日本大使館前の少女像が撤去されず、さらに釜山の日本総領事館前に慰安婦を象徴する少女像が設置された問題。日本政府は長嶺駐韓国大使らを一時帰国させたほか、「通貨スワップ協議の中断」「日韓次官級による経済協議の延長」「釜山総領事館職員による釜山市関連行事への参加見合わせ」の4つの対抗措置を決定。
菅官房長官は「今回このような措置を取らざるを得なかったのは極めて残念ではありますけど、そこはお互いに国と国として約束したことは実行してほしい」と語った。
安倍総理大臣も8日に出演したテレビ番組で、「日本は誠実に私たちの義務を実行していく、その意味で10億円の拠出をすでに行っています。次は韓国がしっかりと誠意を示していただかなければならないと思っています。たとえ政権が変わろうとも実行するのは国の信用の問題です」と、少女像の設置は日韓合意に反するとして改めて撤去を求めた。
日本に帰国した長嶺大使らは安倍総理と面談、11日にも岸田外務大臣に報告するほか、関係者と対応を協議する予定だ。
元駐韓大使で、李明博大統領が竹島上陸した際に一時帰国した経験もある武藤正敏氏は、「我々としては、今までずっと誠実にこの合意を実現すべく努力してきたわけだから、韓国政府がこういう努力に反することを行うことを認めない、再交渉なんかあり得ない、ということをきちっとした形で抗議するというのが一番大きな目的ではないか」と、日本政府の行動について解説する。
一方、韓国ではどのような声があがっているのだろうか。
韓国の世論調査では、日韓合意の破棄を求める声が6割近くに上るなど、日本への批判の雰囲気が高まっており、韓国政府も新たな少女像の設置を歓迎しない立場を示唆してはいるが、撤去については言及を避けている。
現地でコーディネーター業を営むオム・キフンさんは、「韓国では、最初は慰安婦像が設置されたこと自体、そんなに大きなニュースにはならなかった。日本の反応があってから、すごくニュースになっている」と語る。
また、一昨年の日韓合意に基づいて、日本政府は元慰安婦を支援するために韓国政府が設立した財団に10億円を支払っている。このことついては「ほとんどの韓国人は知っていると思う。しかし韓国は今、朴政権がほとんど機能していない状況なので、政権を変えろという声が全体的な雰囲気。日韓合意自体も、朴政権がしたことであって国民の許しを得たものではないい、支持してはいない、という状況だ。10億円についても、返すべきだ、再交渉するべきだ、という声が多い」と韓国の世論について説明した。
武藤氏も韓国世論について「一般の国民は慰安婦問題についてそれほど関心がない」と、活動を続ける市民団体について「実態がよくわからない部分が多い。市民団体というよりも政治活動家と言ってもいい。北朝鮮との繋がりがある幹部もいるという説も根強い。政治活動を目的としている側面は非常に強いと思うし、いままでも慰安婦問題の解決をずっと妨害してきている。そうした活動が事実関係を作ってしまい、それ以外を認めないという状況が日韓関係の慰安婦問題の解決を難しくしている」と語った。
未だ解決の見えない慰安婦問題、どのように解決への道筋をつければよいのだろうか。
武藤氏は「いずれにしても、『この問題を解決した、我々はそのために努力をした』という立場で一貫していればいい。難しくなることはあるかもしれないが、韓国とはもともと浮き沈みの激しい関係だから、良くなるときは良くなるし、悪くなるときは悪くなる。今のような状況の時は何をやっても上手くいかないということもある。そういう時はあまり無理をしないで、日韓関係がいい方向に向き始めた時に、一気に問題を解決することが現実的な方法だと思う」と話した。
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