20日に就任を控えたトランプ次期大統領が当選後初めて開いた記者会見が波紋を広げている。
ロシアのプーチン大統領に好意的な発言をするなど、穏やかに進むかと思われたが、「誤報が多いからこれまで会見を開かなかったんだ」とメディアに対して痛烈な批判を展開。「事実無根で間違っているウソを公開するのは恥ずかしいことだ!BuzzFeedの記事は"ゴミ溜め"だ」「偽りの情報を積み上げたCNNも同様だ」とヒートアップ、自身のスキャンダル情報などを報じたメディアに猛反撃した。
■「こういう情報が出てくるのを待っていたんじゃないか」
トランプ氏は会見で、CNNとBuzzFeedを以下の3つの点から批判、CNN記者に「我々に対しての批判は直接我々に言ってください」と投げかけられたトランプ氏は「違う、君じゃない。君のとこの報道は最悪だ!」と質問を遮る一幕もあった。
- CNNが大統領選中に独自に行った、世論調査の信ぴょう性の問題
- BuzzFeedが公開した、トランプ氏について英情報機関がまとめたという、女性スキャンダルなどを含むメモを未確認のまま公表した問題
- さらにCNNがそのメモを基に取材し、テレビで報じた問題
CNNは1980年にアメリカでスタートした世界初の24時間ニュース専門テレビ局で、世界中にネットワークを拡大し、今では世界200以上の国と地域で配信されている老舗メディア。会見後の記事では、トランプ氏の発言に対し「トランプ政権が、自分たちの意に沿わない一切の報道を切り捨てようとする姿勢を強めている事がうかがえる」と反論している。
前日にオバマ大統領が民主主義の理想を説いた退任演説とは対照的な内容と会見となった今回の会見。上智大学の前嶋和弘教授は「トランプ氏の狙いだと思う。わざわざこの日にやる必要はないですからね。オバマさんのイメージを潰すためにやったのだろう」と話す。メディアに対する発言についても「トランプ氏はメディア側が明らかに間違っている、という情報を見つけてそこを攻め込んだ。こういう情報が出てくるのを待っていたんじゃないか」とした。
一方、前嶋教授は米メディアが選挙期間中、クリントン氏とトランプ氏を同じバランスで報じていなかったことなど、たしかに"クリントン氏には甘め、トランプ氏には厳しめ・不利な報道"だったとも指摘した。
■成功していくトランプ氏のメディア戦略
在米コラムニストの町山智浩氏は「ニュースの量は圧倒的にクリントン氏よりトランプ氏の方が多かった。朝から晩までトランプ氏の報道がされていたので、実はトランプ氏にとって報道が有利に働いていた」と振り返る。
アメリカ国内にはトランプ氏同様、メディアに批判的な人々も出てきているという。その背景について町山氏は「一つはトランプ氏がメディアを信じるなと言い続けていたし、共和党の宣伝担当をしていた人が経営しているテレビ局、FOXニュースも"FOXニュース以外信じるな。CBS・NBC・ABCのアメリカ三大ネットワークと呼ばれているテレビ局とニューヨークタイムズ・ワシントンポストの二大新聞は信じるな"と言い続けていた。これが徐々に浸透していき本当に信じなくなったアメリカ国民が出てきた」と解説。
さらに、そのFOXニュースが伝え続けた「イラク戦争は正しい」という情報が実は間違っていたことから、「もうメディアは一切信じない」という人も出てきたと分析、人々がネットの情報をより信じるようになっていったというのだ。
「テレビや新聞などの既存メディアが圧倒的に力を失っていることがトランプ氏にとって有利に働いている。そして、既存メディアを見ている人の平均年齢が65歳を超えている。滅びつつあるメディアの中でトランプ氏はネットを活用していくだろう」(町山氏)
こうした潮流の中で「"ウソニュースサイト"ともいわれる『ブライトバート・ニュース・ネットワーク』のボスのスティーブン・バノン氏がトランプ氏の最高戦略顧問になっており、それがトランプ氏の対メディア戦略が成功した要因になった」とした。
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