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 2013年10月、池永チャールストーマス被告(当時21)が元交際相手の女子高校生(当時18)の自宅に潜入、クローゼットに潜み、帰宅した女子高生を刃物で刺し殺害した"三鷹ストーカー殺人事件"。きょう午後、東京高裁で二審判決が言い渡される予定だ。

 2011年にフェイスブックで知り合い、交際関係に発展した池永被告と女子高生。二人は翌年には別れたものの、池永被告は女子高生に「会わないと死んでやる」などのメールや脅迫めいた手紙を送った。危険を感じた女子高生は両親と三鷹警察署を訪れ相談。事件が起きたのは、警察が池永被告に対し「警告」のため連絡を取ろうとしたまさにその日だった。

 裁判も異例の経緯をたどった。

 2014年8月、東京地裁立川支部は「被害者に落ち度はなく、犯行動機はあまりに一方的かつ身勝手であって、同情の余地はごく乏しい」として、池永被告に懲役22年の判決を言い渡した。被告側は「刑が重すぎる」と控訴した。

 しかし2015年2月、東京高裁は「名誉毀損罪が起訴状になかった」、つまり、池永被告が犯行直前、女子高生のプライベート画像をネット上に拡散していた"リベンジポルノ行為"については起訴されていなかったとして、裁判のやり直しを命じたのだ。

 去年3月、東京地裁立川支部が出した判決は、1審と同じ懲役22年。遺族らは「"画像投稿行為"をきちんと処罰したことにはならない。告訴という辛い選択をした私たちには全く納得できない」とのコメントを出した。一方の池永被告側は再び判決を不服として東京高裁に控訴。そして今日、控訴審は判決の日を迎える。

■「映画のような残虐な虐待を受け続けていた」

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 事件の取材を続けてきた作家の石井光太氏は、池永被告について「一言で言うと理解できない異常さを持った人。誰一人として彼を理解できた人は法廷にいなかったと思うくらい。ただ、身なりはきちんとしていて、姿勢もしっかりしている。ただ言い方が"時代劇"のようだった」と話す。

 池永被告は「被害者を愛していたのか」という質問に対し「いや、恋はしておりませぬ。恋慕でございます。恋慕と恋は違うでございます」といった口調で答えていたという。こうした"独特の言い回し"は裁判を通して一貫していたという。

 また、池永被告は「被害者は私の苦痛源でありました。殺せば(苦痛が)断ち切れると思いました」「もし時間を取り戻すことが出来ても被害者を殺すと思います」とも話している。石井氏によると、虐待されて育った被告の心境は「誰一人として自分を信用してくれた人がいない、心を開いた相手がいないという状態で育った。その中で、虐待の過去も含めて告白した相手というのが被害者の女性だった。だから、その女性が自分の全てを受け入れてくれるという気持ちだった」という。

 池永被告の生い立ちは以下のようなものだ。

  • フィリピンで生まれ、母親は日本人男性と結婚し実子である被告を置いて日本へ。
  • 被告は1歳10ヶ月で日本へ。その頃から虐待・育児放棄が始まる。
  • 被告が4歳の時に母親は離婚、その後も母親が連れ込む男性たちに虐待を受け続けており、彼が家を出るまでそれは続いた。

 石井氏は「まるで映画のような残虐な虐待を受け続けていた。かいつまんで言えば火あぶりだとか、頭から水漬けだとか。中学生のときはお母さんが家に帰ってこないので、ずっと水も電気も止まった部屋の中に一人で暮らしていた。ご飯は近くのコンビニに行って店長に分けてもらっていた」と池永被告の過去の暮らしを語った。石井氏によると「虐待を受けた人というのは、愛された経験などが一切ない。だから逆に言うと『愛してるよ』などと言われても信じることができない」という。

 「今回はこれがストーカー事件という形になったが、あと10年20年30年先に、あるいは10年前に彼が持っていた爆弾が違う形で爆発することもある。だからストーカー事件として捉えるよりも、彼が持っている環境などもっと大きな目線で見ていかないとなかなか問題は解決には繋がらないと思う」(石井氏)

■「娘は二回殺された」

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 三鷹ストーカー殺人事件が注目されたのは、その凄惨さだけではなく、"リベンジポルノ"の問題を孕んでいたということもある。女子高生の母親は法廷で「写真をネットで拡散され、娘は二回殺された」と訴えた。

 池永被告は、被害者のわいせつな写真をインターネットに投稿した理由について「普通の写真では、交際した事実はないと反論されると思い、親密な関係であるという証拠になる裸の写真であれば、その余地を消すことができると思った」と述べていた。

 いま、世界中で問題になっているリベンジポルノ。別れを切り出されたことなどの腹いせに、元交際相手のプライベートな写真や映像をインターネット上に公開する行為だ。

 日本ではこの"三鷹ストーカー殺人事件"をきっかけとして2014年に「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」、通称"リベンジポルノ防止法"が制定された。性行為などはもちろん、衣服をつけていても、胸や性器などが強調され性欲を刺激し興奮を促すものが規制の対象になる。無断で不特定多数の人に公開した場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる。Twitterでの画像投稿での逮捕例や、LINEで元交際相手の女性に裸の画像や動画などを送信し、復縁を迫ったとして男が逮捕された事例もある。

 AV女優の紗倉まなさんは、友人からリベンジポルノの相談を受けたことがあるという。「本質的なことかもしれないけど、どれだけの愛を持っていても、女性側は撮らせないよう徹底することを、声を大にして言いたいと思った瞬間でした」と振り返る。その友人は、交際相手に性行為中の動画を撮らせてしまったことがあり、「ばらまかれたりしたらどうしよう」という不安から、別れたくても別れられないと悩んでいたという。

 石井氏は「リベンジポルノをさせないというのは前提にあるが、本当に好きになって、2人きりの時に(写真や動画を)断ることができるか。コンドームをつけるかつけないかと同じ話」と話す。「それなら、社会がいかに守ってあげられるか。きちんと伝えていくのもそうだし、ネットに流れてしまったなら、それをいかに止めるのか」として、海外にサーバを置く企業などとの連携の必要性も強調した。

 また、8bitNewsを主宰する堀潤氏は「"裁判の結果が出るまで見守ろう"とか、"法的な拘束力のあるものが生まれてからやろう"とかではなく、インターネットのプロバイダーなり事業者というのがすぐにやれることはもっとあると思う。検索しても絶対出てこないような何かを業界一致でやる必要性がある」と語った。

 裁判の行方とともに、リベンジポルノに対する法制度や社会のあり方も注目される。

(AbemaTV/AbemaPrimeより)

(C)AbemaTV

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