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 「多摩格差」という耳慣れない言葉がある。東京23区に比べて、西部の多摩地域の人口が少なく、インフラ整備が遅れたことなどから使われ始めた言葉だ。

「活力ある東京に欠かせないのは人口の3分の1を占める多摩と島しょ地域の発展。多摩のものづくり創業支援を開始するほか、様々な政策を効果的、重層的に展開する」。

 立候補時から多摩格差の解消を掲げていた小池都知事は25日、多摩・島しょ地域の振興に充てる予算を前年度比193億円増の2393億円とする考えを示した。市町村への交付金の増額分や、地元産業の支援などに充て、格差の解消を目指す。

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 東京都・奥多摩町。都心から電車でおよそ2時間の、山梨県と接する自然豊かな町だ。やはり問題となっているのは町の人口減少で、5270人(2017年1月1日現在)と60年前の3分の1にまで減少している。

 人口減少がインフラ面での格差にもつながっている。下水道の普及率も、東京23区が99.9%なのに対し、奥多摩町は77.3%にとどまる。ガソリンスタンドを経営する住民は「下水はやっと去年本管が入った。それまでは汲み取りトイレだった。下水は通ったけどまだ繋いでいない家がたくさんある」と話す。

 15、6年前に奥多摩町に引っ越してきた榎戸恵浪さんは、下水が通っていないことに驚き、「忘れ去られた場所なのかな」と思ったという。「交通の便、電車が少なくバスも少なかったりする」といった点で不便さを感じてはいるものの、インフラ、子育て支援なども充実してきており、若い人が増えてきた印象もあるという。

 今月30日からは、都内でタクシーの初乗り料金の値下げが行われるが、多摩地域の大半はこれに該当しない。

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 一極集中が進む都心部と過疎化が進む周辺地域。多摩格差は、全国の都市と地方が抱えている問題の縮図とも言える。

 自治体問題研究所の理事を務める池上洋通氏は、都市型の下水道は維持の問題もあり、環境面からも各家庭で処理できる設備を整備するなど、必ずしも画一的なインフラ整備を行うというだけでなく、それぞれの地域事情を考慮したり、個性を豊かにする思想も重要だと指摘した。

 その上で、「今、皆さんが望んでいるのは、社会福祉・社会保障がしっかりしている、安心して暮らせる地域であってほしいということ」と話す。また、多くの学校が統廃合されつつあることから「じいちゃんばあちゃんに守られるようにして子供は育たないと地域社会は成り立たない」と指摘した。

 元々多摩地域は、明治時代の廃藩置県直後は神奈川県に属していた。その後、多摩地域で力のあった自由党と神奈川県が真っ向から対立したことや、多摩地域にある水源から東京向けに安全で安定した水を確保するため、神奈川から編入されることになった。

 池上氏は「今の多摩地域全部を県として独立させるという案はこれまでもあった。経済力としても十分独立してやっていける可能性は大いにある」とした。

AbemaTV/AbemaPrimeより)

(C)AbemaTV

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