先週、日本音楽著作権協会=JASRACが「ヤマハ音楽教室」など、楽器の演奏を教える教室からも著作権料を徴収する方向で検討していることを発表した。年間受講料収入の2.5%を演奏権に伴う著作権料として、早ければ来年1月から徴収する予定だ。
これに対し、音楽業界からも困惑の声が上がっている。シンガーソングライターの宇多田ヒカルさんは「もし学校の授業で私の曲を使いたいっていう先生や生徒がいたら、著作権料なんか気にしないで無料で使って欲しいな。」(宇多田ヒカル公式Twitter)
https://twitter.com/utadahikaru/status/827795199040450560
とツイートした。
また、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のOP曲『残酷な天使のテーゼ」などの作詞で知られ、JASRAC正会員でもある及川眠子さんも、「音楽教室で『練習のために』弾いたり歌ったりするものから、使用料をもらいたいと思ったことなどない」(及川眠子公式Twitter)とツイートするなど、JASRACの方針をめぐってインターネット上で議論が巻き起こっている。
さらに、音楽教育事業7団体が著作権料徴収に反対する連絡会「音楽教育を守る会」を設立、JASRACと争う姿勢を示している。JASRAC側は、営利で生徒を募集している教室が徴収の対象で、今年7月までに「使用料規定」を文化庁に届ける方針とし、今後も教室側と協議を続けるとしている。
■「本当に外国のアーティストにまで支払われているのか」
東京・巣鴨にある日本最大級の社交ダンス教室『エムズダンスアカデミー』も、JASRACに使用料を払っている。代表の三輪嘉広さんによれば「計算式のようなものがあり、教師の数、30分間の授業料などを元に算出され請求がくる」といい、支払っている額は「年間で10万円ほど」。
三輪さんは「全部外国のCDを使っているので、本当に外国のアーティストにまで支払われているのか」との疑問を持っていると話した。
音楽の著作権などに詳しい中谷寛也弁護士は、学校での楽曲使用に関して「著作権法38条1項」を挙げ
「非営利、観客がお金を支払わない、演奏者がお金をもらわない、その3つの要件を満たしている場合には無料で使うことができる」と説明する。音楽を使った営利活動ではない限り、その権利は問われないといい、実際、JASRAC側も「今回の発表は音楽教室に対して徴収を行う考えであり、学校での楽曲使用に関しては今後も無料で使用してください」としていると説明、三輪さんのような疑問に対しても、「建前としては、少なくともJASRACが一旦徴収をして、JASRACが海外と契約を結んでいる団体に支払うという形になっている」と話す。
■そもそも、JASRACの仕組みはどういうものなのか
音楽を利用するレコード会社や放送局、カラオケ店、飲食店などから著作権使用料を徴収、作詞家、作曲家らに支払うのがJASRACの仕事だ。作詞家やアーティスト個人では楽曲を管理しきれないため、JASRACが膨大な数の楽曲をデータベース化し音楽の利用実績を把握、それを元にアーティストに利用料を分配しているのだ。現在、管理している楽曲数は300万を超え、年間の利用料の合計は1100億円以上にも上っている。
中谷弁護士によると、「法律上の大原則というところから話すと、著作権者が持つ著作権。要はそれを使うも使わないも自由。例えばその人がその曲を他人に歌って欲しいか欲しくないかっていうことは自分で決めていい」と説明する。大勢の人に使って欲しいという前提がある音楽の流通をしやすくするために作られたのがJASRACなのだ。
つまり「登録されている曲でないと流せないという風にも捉えうるが、登録されている曲だからこそ流せるという風にも捉えられる。逆に、登録されてないとすれば、作曲者とか作詞者に直接許可を得なければいけないということになるので、それは使う側からしても非常に煩雑」(中谷弁護士)と、JASRACのメリットを説明した。
ただ、今回のJASRACの方針については「本当に1対1で楽器を直接教えています、というような場合だと、最終的には裁判所の判断によるのではないか」と、運用の難しさも示唆した。
(AbemaTV/AbemaPrimeより)
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