■Twitter上には「♯保育園落ちた2017」というハッシュタグが
待機児童問題の議論を一気に加速させた、あの匿名ブログから1年。次年度の保育園入園をめぐって、今年も一次選考の結果通知が届く季節がやってきた。
各自治体も、既存施設の定員を増やすほか、認可保育所を新設するなど、待機児童ゼロに向け対策を急いでいるが、ネット上では「♯保育園落ちた2017」というハッシュタグをつけ、母親たちが怒りの声を上げている。
「仕事しなきゃ生活困窮するのに何もしてくれないし!長時間働いてる人優先ですって保育園に入れなきゃ働けないし!ケンカ売ってるとしか考えられない!」
「保育園落ちた…保育士なのに。子供が生まれても保育士不足に一役買って頑張ろうという気持ちを見事に打ちひしがれてしまった」
「今年4月に社会復帰予定の友達たちは、東京か地方かに限らず、ことごとく保育園に落ちている。一億総活躍言うても、活躍できないじゃんこれ。本人はスタートラインに立つ気満々なのに、いやいやあなた、立てませんから。って言われちゃってる。」
東京都では、待機児童数減少を長らく政策目標に掲げているにも関わらず、2016年で8466人といまだに多くの待機児童がいる。昨年、東京都でワースト10に入る264人の待機児童を出した三鷹市では、今回の一次選考で1336人の申込者のうち内定は635人。およそ半数が落ちた結果となった。
三鷹市の母親たちからは、「上の子が保育園に入っているが、下の子がどこにも入れなくて本当に困っている。認可保育園の二次募集と認証と無認可、あわせて40件くらいに連絡しているが、本当になんとかして欲しい」「引越しをして入れなくなってしまった。仕事をしているが、70歳近い両親を頼りにしながらみんなで協力してもらいながらやっている形」と、状況の深刻さを訴える。
また、「待機児童ゼロ」を謳う横浜市でも、、その裏では数千人の「保留児童」が発生している。「保留児童」とは、希望しても認可保育所などの入所がかなわない児童を、「保留児童」とし、そのうち国の指針に基づいた一定の条件に該当していない児童を「待機児童」として集計しており、根本的な解決はやはりまだまだ難しいようだ。
■「妻と毎日ケンカしている」
悲鳴は、夫たちからも上がっている。匿名で取材に応じてくれたのは、妻と1歳半になる娘の3人暮らしで、今まさに保育園の選考を待っているというAさん。区役所の職員から入園は厳しいと言われてしまったそうだ。
Aさん家族が住む自治体では、Aさんと妻がフルタイムで働いていた場合、それぞれ20点ずつ、合計40点が基本の点数となり、そこから保護者の就労状況や生活状況に応じて、点数が加算され、選考の基準とされるという。
「妻が仕事に復帰できるようになんとかサポートして、自分も働き方を変えて。またそれが翌年の加点に加わると思っている」育児や働き方をめぐって、妻と毎日ケンカしているというAさん。
「娘をここに預けたいんだって思えるところだったら、認可でも認可外でも問わない。"ここでいいや"みたいになっちゃっているところがあると思う。何年も前から本当は待機児童っていたはずだが、なんでその間にもっと保育所を増やしたり保育士さんの待遇を改善したりしてこなかったのかな」。
ツイッターで40万人以上のフォロワーを持つ男性保育士、てぃ先生は、「すごく残念に思うのが、お父さんもお母さんも8時間フルタイムで働いていることが大前提。そうなると、家庭で子供と過ごす時間が少なくなってしまう。小さい時期を大事にして、たくさん接してあげようって思っている家庭ほど、どんどん難しくなってしまってる。保育士として、パパママを見ていると苦しくなる」と話した。
■「"お前ら30万円分の仕事してんのかよ"って言われないように」
保護者のみならず、保育士たちも苦境に置かれている。保育所を増やそうとする動きがある一方で、そこで働く保育士の数は不足している。
前出のてぃ先生も「昨今、女性が働く機会がかなり増えてきている中で、その需要についていけていない行政側の問題もあるのかなと感じる」と話す。
「厚生労働省も工夫してくれているので、待遇についても変わってきている。最近では4月から東京都が給与がアップすすることを決めていて、働く条件面についてはかなり良くなってきているのかなと思う。ただ、正直言って保育園そのものってそもそも儲からない」と、保育園を建てるより駐車場をつくった方が儲かる場合もあると指摘した。
効率のために働く人を増やす弊害も考えられる。給与やサービス残業などの労働環境だけでなく、人間関係も離職の大きな要因になっていることから、働く人たちの理解も重要だ。
「例えば『来年度の4月から、保育士の給料が30万円になります』となった場合、今ほど熱意を持っている保育士さんだけでその枠が埋まるわけではない。保育や教育は、『これがこの子にとって絶対正解だ』っていうものがない。正解が見えないものだから理解しあうのも難しい」。
てぃ先生は「だから『最初から給料を上げろ』と言うのは好きじゃない。給料が30万円になった時に"お前ら30万円分の仕事してんのかよ"て言われないように今から準備していかなきゃいけない。文句言う前にまずは行動しようということを強く言いたい。子どもたちの就学に向けた保育なり教育なりというのができるように頑張っていくのが保育士の仕事」と訴えた。(AbemaTV/AbemaPrimeより)