北朝鮮による横田めぐみさんの拉致が疑惑という形で報道されたのは20年前の1997年2月3日。5年後の2002年9月17日小泉総理が北朝鮮を訪問し10月15日に拉致被害者5人が日本に帰国した。

 拉致被害者の地村保志さんは2002年10月15日の会見で「本当に長い間、皆さんに心配をかけました。本当にありがとうございました」と頭を下げた。2日後、5人はそれぞれの故郷に向かった。

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 1995年5月、北朝鮮による日本人拉致を初めて証拠をもって報道し、2年後に横田めぐみさん拉致を突き止めたのは、元朝日放送プロデューサーで現在フリージャーナリストの石高健次氏だ。

 彼が2002年10月18日に撮影した映像がある。そこには拉致被害者の地村保志・富貴恵夫妻が、24年ぶり故郷で家族や友人たちと生還の喜びを分かち合う姿があった。拉致被害者5人は、それぞれ家族を北朝鮮に残しており、帰国当初は日朝政府間の取り決めで10日前後で再び北朝鮮へ戻ることになっていた。

 地村保志さんは「日本に帰ったときは、また北朝鮮に帰るつもりだった。それを反対する親を納得させる自信があったのに、親だけでなく友人たちまで『決して戻るな、君がいなくなったとき仕事も休んでどれだけ探し回ったことか!』と言われ、説得などできないと悟った」と話す。また、妻・富貴恵さんも、「みんなが頑張ってくれたことを聞いたら『北朝鮮に帰ります』と言えなかった」という。

 1995年石高氏が最初に拉致事件の存在を証明したのはドキュメンタリー番組「闇の波濤から ~北朝鮮発・対南工作~」。しかし、なぜ北朝鮮が拉致をするのか、誰も深くは考えようとしない時代だった。石高氏は「当時はほとんど信じてもらえなかった」と話す。その理由を「北朝鮮という国は小さくて貧しいけれども、当時の金日成主席の指導のもと、社会主義の国家建設を一丸となって目指している、それなりに幸せな国だというイメージがあったからだろう」と振り返った。

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 かつて韓国による野党の代表的政治家金大中氏拉致が大きく報道されたこともあり「韓国がやったのなら分かるけど、なぜ北朝鮮が拉致をするのか」という雰囲気だったという。

 一方1959年から始まった在日コリアンの北朝鮮帰還事業で、10万人近くが、教育費も医療費も税金もない「地上の楽園」と宣伝されるなか、海を渡っていた。彼ら北朝鮮帰国者は、日本に潜入した工作員が在日コリアンを脅して拉致犯罪に協力させるための、いわば人質でもあった。

 石高氏は北朝鮮による日本人拉致の目的として「工作員の日本人化教育」と「日本人“なりすまし”」をあげた。1988年1月、ソウルで記者会見した、大韓航空機爆破事件の実行犯・金賢姫は「自分に日本語を教えたのは日本から船で連れてこられた日本人です」と証言。金賢姫は、犯行時、日本人名義のパスポートを持ち日本人になりすましていた。また工作員の辛光洙も原敕晁さんを拉致したあと再び日本に潜入し原さんに成りすましてパスポートや免許証を取り、ヨーロッパや東南アジアで工作活動をしていた。

 石高氏は拉致が行われた背景について、北朝鮮の国家として最大の目標である「韓国を社会主義のもと吸収し朝鮮統一をすること」があり、そのためにはアメリカを世界から孤立させ最終的に駐韓米軍を撤退させることだと指摘する。

 日本政府が認定した拉致被害者は17名。1977年の久米裕さんが第一号で、当時、警察は実行犯の1人を逮捕し北朝鮮による拉致と判りながらも上層部の意向で再逮捕や起訴をせず、また詳しい犯行状況を公表しなかったため、2か月後の横田めぐみさんをはじめ多くの拉致事件を許した可能性がある。

 これについて石高氏は「長く取材していて思うのは、現場の警察官は頑張って捜査をしているが、最終的に指揮をする警察庁上層部には拉致についての意識がもうひとつ希薄だったのでは。そういう意味では怠慢と言えるかもしれません」と話した。続けて「事なかれ主義というか、悪しき官僚主義。例えば、めぐみさんにつながる情報が、1995年初め韓国の情報機関から警察庁にもたらされたが、オンラインでチェックしたのみで該当者なしの返事をした。その時、全国の都道府県警に一斉にFAXで問い合わせていれば、めぐみさん拉致をいち早くつかむことができ、秘密裏の交渉でひょっとしたら救出できていた可能性がないとも言えない。『たら』『れば』の話ですが」と振り返った。

 事件発生から40年が経過しようとしているが、未だに解決の糸口すらない。(AbemaTV/AbemaPrimeより)

(C)AbemaTV

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