厚生労働省は今国会に提出を目指している受動喫煙対策強化案の中で、子どもや外国人が来る可能性のある飲食店について、屋内を禁煙とする骨子案を固めた。「受動喫煙にさらされることは好ましくない」との判断からで、対象にはレストランだけでなく居酒屋や焼き鳥店なども含まれる。
ただし、飲食ができない喫煙専門室の設置は可能とするほか、30平方メートル以下で、主に酒を提供するバーやスナックなどの小規模店だけは喫煙を可能にするという。
今回の強化案に居酒屋の店主たちからは「しょうがない部分も多々あると思うが、売り上げ的に見たらかなり厳しい部分もしばらくは出てくる」「居酒屋離れが進んで自宅でお酒を飲むことにつながってしまうのでは。飲食店全体に打撃があるのではと思う」と、今後の経営を心配する声が聞かれた。
日本フードサービス協会の菊地唯夫会長は「ちょっと厳しすぎる。今進めている分煙の取り組みの方がお客様にとって分かりやすいのでは」と批判。浅草おかみさん会の富永照子さんも「タバコが吸えないから外で吸うなんて、お客が帰っちゃう。絶対に全面的禁煙は無理」と主張している。
こうした飲食店側からの反論に日本医師会の今村聡副会長は「事業者の方たちが色んな心配をされるのは理解している。だが提案の理由は国民の健康増進が一番大きな主題になっているのを忘れてはいけない」としている。
戸惑いの声は愛煙家からも上がっている。
街で話を聞いた会社員たちは「お酒を飲むとタバコを吸いたくなる。仕事で疲れて飲みに行くので羽を広げさせてほしい」「全面禁煙はやめてほしい。せめて分煙にしてほしい」。
「一日一箱吸っている。死ぬまで吸ってやると言っている」。自他共に認める愛煙家の経済アナリスト・森永卓郎氏は、ある地方都市に出張した際、屋内外だけでなく、路上も禁煙と言われ、タバコを吸うために徒歩10分かかる市役所の喫煙所まで行ったというエピソードを披露、厚労省の方針について「一言で言えばファシズムそのもの」と一刀両断する。
現在、世界各国でも屋内禁煙化が進んでいるが、一方で路上やテラスでの喫煙は許されているケースが多いという。「この法案が通れば、日本は世界で最も厳しい喫煙規制が敷かれることになる」と森永氏。
「今回の法律はタバコを吸う人だけを入れる飲食店も全面禁止するということ。喫煙者は受動喫煙させたいなんて誰も思ってない、分煙してくれと言っているだけ。誰に迷惑もかけず、喫煙者だけでタバコを楽しむことも許さないことは"人権無視"っていうか、ひどい"人種差別"だと思う」と厳しく批判した。
50年前には80%だった男性の喫煙率は、今では30%ほどまでに下がっている。それでも受動喫煙を起因とする疾患による年間の死亡者数は男性4523人、女性1万434人という研究もある。
森永氏は「厚生労働省の一部の人たちの間で、タバコ嫌いが宗教的になっている。喫煙者そのものを殲滅しようと考えている。年金のことを考えれば、厚生労働省は科学的にも"どんどんタバコを吸って早く死ね"という政策を進めるべきだ」と激しい口調で持論を展開。さらに、「もしかしたらアメリカの圧力がかかっている可能性もある」と示唆。
塩崎厚労大臣は10日の答弁で「電子タバコや加熱式タバコは現在世界でも研究が始まったばかり。今は法律として電子タバコを書き込むことは予定していない」と述べているが、森永氏は「今、アメリカの電子タバコのマーケットシェア率は非常に高いので、アメリカに大きな経済的な効果をもたらす」(森永氏)。
今回の法案が成立した場合、店内に喫煙可能なバーを作り、会計も別にすると言った"抜け道"を採る飲食店も現れるのではないかとの指摘もある。
森永氏は「"地下に潜る"飲食店が増えた結果、暴力団などの資金源になることもある。あまりに追い詰められると、逆に社会的不安が深まる」との懸念を示した。(AbemaTV/AbemaPrimeより)