今回から始まる人生相談企画『飲み屋の中心で、バカ！を叫ぶ』。人生のさまざまな悩みについて「バシッ！」と回答してくれるのは、ネットニュ－ス編集者、論者として縦横無尽の活躍を見せる中川淳一郎さんです。
記念すべき最初の相談者は、某老舗IT企業の営業リ－ダ－として働くケイコさん。現在の「働き方」について悩む彼女に、中川さんはどのような解決策を示すのでしょうか？
■ケイコさん（30歳・会社員）「今の働き方がしっくりこない」
「今の働き方がしっくりこない」と話すケイコさん（30歳・会社員）
ケイコ こんにちわ～！ 今日は中川さんに相談できると聞いて、駆けつけました。
中川 こんな美人ギャルが、オレの話を聞くために来てくれるなんて嬉しいぜ、ウヒヒ。それで、悩みってなあぁに？
ケイコ 新卒で入った会社で働いて、今年で8年目になるんですね。そろそろ転職を考えているんですけど、あまり自信がなくて。私みたいな人間が他の会社に行っても通用するのかな～と。いきなりぼんやりとした悩みですみません。
中川 そもそもなんで転職したいの？
ケイコ いまいち自分の仕事に「意味」を見いだせなくて……。今の会社では、トップダウンで指令が降りてくることが多いんですが、果たしてそれをやって何の役に立つのかわからないんですよ。
中川 でもオレのいる出版やIT業界だって、仕事の意味なんて見いだせないぜ。世の中に必要不可欠な仕事は、農業やインフラぐらい。オレたちは、その余剰をもらっているだけだからね。
ケイコ いや、それは私も分かっているんですよ。何ていうのかな、上層部からはAプランを与えられるんですが、現場目線で考えると明らかにBプランを選んだほうが有意義なんです。でもそれを実行できず、上層部のなすがままに働かされているところに辟易しているんですよ。
中川 そこにやりがいを見いだせない？
ケイコ そうですねえ。
中川 それはオレも一緒だなぁ。オレなんて、もっとヒドイぞ。過去にどれだけくだらない記事を大量に編集してきたか。
ケイコ 業務内容については、我慢できるんです。最善を尽くしたいのに、それを許してくれない今の働き方がしっくりこないというか。
中川 それって会社員に向いてないんじゃないの？
ケイコ えっ！
中川 ケイコさんみたいな会社に対する漠然とした嫌悪感って、そこにつながると思うんですよ。さっき「何の役に立つのかわからない業務命令がトップダウンで降りてくる」って話してましたよね。そういった意図不明の指令を出す“バカ上司”って、どこの会社にもいる気がして。となると、今の悩みは会社員である限り、解消しない。だから、フリ－で働いたほうがいいんじゃないかな。
ケイコ 考えたこともありませんでした。
中川 フリ－歴17年目のオレが言うんだから、間違いない。ケイコさんがフリ－だったら、そんなことで悩まないと思うんですよ。「業務命令が意味不明」なんて会社員だから言えることですし。
ケイコ じゃあ私は仕事に対する覚悟が足りないのかもしれませんね……。
中川 というよりも、今の働き方があってないんじゃないかな。バカ上司の下で意味があるのか分からない仕事をするよりも、もっと達成感のある仕事をやりたいんですよね？
ケイコ そうですね。そんな上司や会社に飼い慣らされたような今の状況を気に入っていません。
中川 それに甘んじる自分も嫌でしょ？
ケイコ 嫌です。
中川 じゃあ辞めちゃえ！
ケイコ えっ！！
中川 フリ－や社長になると考えた場合、その選択は早いほうがいいですよ。ケイコさんは、新卒で入った会社に7年間も勤めたんだから、フリ－になってもうまくいくと思う。それに美人だから、たぶんなんとかなるよ（笑）
■いきなりフリ－が無理なら、結婚を目指せ
中川淳一郎「自分を支えてくれる『後ろ盾』を手に入れることが重要」
ケイコ 中川さんがそう言ってくださるのはうれしい一方、私には安定志向もあって。フリ－として食っていける見込みもないのに、会社を辞めるのは怖いですよ。
中川 でもケイコさんはモテるでしょ？
ケイコ どういう意味ですか？
中川 結婚すりゃいいんだよ。例えば、今のケイコさんの家賃が1DKで10万円だとするでしょ。一方、恋人の家賃も1DKで10万円だとしよう。別々に暮せば20万円の支出だけど、同棲すれば同じグレ－ドの2DKの家でもだいたい16万円で住めるわけだ。
ケイコ 他の支出も減りそうですよね。
中川 そう。さらに家族割とかも使えるじゃん。結婚は、合理的に生きるためにはけっこういいシステムだと思うんだよな。ケイコさんは、美人で能力もあるんだからさ。寿退社して、それからフリ－で稼ぐ方法を見つければいいじゃない。
ケイコ なるほど。
―― ちなみに今お付き合いしている方はいるんですか？
ケイコ います。結婚もしたいです。
中川 じゃあ決まりだよ！ ちゃんとした男と結婚して、1年の猶予をもらって、その間にフリ－で食っていくための仕事を探せばいいよ。
ケイコ 私が説得すべき相手は、会社や上司ではなく「彼氏」だったんですね。
中川 そう。自分を支えてくれる「後ろ盾」を手に入れることが重要なんだ。オレの妻だって、昔はケイコさんみたいに人生に危機感があったみたいなのよ。でも結婚してからは、焦りがなくなったおかげか伸び伸びと仕事に没頭できてるからね。収入も結婚前の倍近く上がったみたい。
ケイコ エ－ッ！ 羨ましい。ただ私が結婚したくても、両親がすぐには許してくれないかも、一人っ子だし。
中川 今両親と年にどれくらい会ってるの？
ケイコ 年6回ぐらいかな。
中川 結婚したら、夫とは毎日会うわけですよ。それこそ年間60倍も多く会う。なら夫のほうが優先順位が高いじゃない。それに親も最終的には、ケイコさんがちゃんと選んだ相手なら認めてくれると思いますよ。
ケイコ う～～ん（考え込む）。
■若者は自虐的にならず、もっと根拠のない自信を持て
中川 じゃあ、もうひとつ解決策を考えてみましょうか。
ケイコ そうですね。タイミングもありますから。
中川 さきほどから話していて、ケイコさんが前に進めない理由は「自分に自信を持てない」ことだと思うんですよ。
ケイコ そうかもしれません……。自己評価を低く見積もったり、自分を過度にけなしたりする傾向があるので。
中川 そりゃいかんですよ。自信をつけるために知ってほしいのが、世の中には「自分よりも能力がない人間が多くいる」ってこと。ケイコさんは、大卒で美人で今は営業リ－ダ－じゃないですか。同じ世代の中でも、上位28％ぐらいには入る。そんな根拠のない自信を持ってほしいんです。
ケイコ は、はい。
中川 もちろん、ここで言った「上位28％」なんてもんは何の根拠もないし、本当のところは「上位79％」ぐらいの能力低い人間なのかもしれない。でも、「オレは案外イケてる」と思わなくちゃ別のアクションなんて起こせないんですよ。
オレも27歳でライタ－になったときは、まわりには自分よりも仕事ができそうなベテランライタ－・編集者がいっぱいいて、怖気づいたんわけですよ「オレみたいなペ－ペ－が一緒だと、迷惑にならないか」と。ところが、いざ一緒に仕事をしてみたら、「あ、オレのほうが頭いいわ」と思うこともいっぱいあるわけ。
―― それは中川さんが、一橋大学商学部卒で英語もできるからじゃ……？
中川 そういうことじゃないのよ。ベテランの中には、フリ－じゃなくて契約社員で働いている人もいるわけ。契約社員は給料が一律だから、勤務時間内にはお茶したり、だべったりする人も多くいてさ。一方フリ－契約のオレは、他の仕事もあるから、雑談なんかせずさっさと仕事を片付ける。そんなふうに働いていると、クライアント正社員の編集者から「中川くんは、仕事が早いね！」って褒められて。
だから、無駄に恐縮したり、卑下したりするよりは、根拠のない自信を持って目の前のことに没頭したほうがいい。これは恋愛とか転職とかどんなことにも応用できると思うよ。
オレは、ケイコさんみたいな未来のある若者が、自虐的にならないでほしいと思っているんです何をお前はそんなに心配をしているんだ、もっと自信を持て、未来は明るいぞと。これが今日のまとめかな。
ケイコ ……。なんだか今日の中川さんの話を聞いて、自分がいろいろなことに二の足を踏んでいるのは、すべて気持ちの問題だと思いました。
中川 だろ。もっと自信を持てばいいよ。忘れないよう最後に一筆書いてやるからな。
ケイコ エ～ン、嬉しいです（涙）
「自己評価というものは応々にして低い。世間の多くはお前より無能なことが多い。安心しろ！」
―― 「応々」という字は間違いですけどね。
中川 うるせえ、こまけぇこたぁいいのだよ！！ 今の彼女に必要なのは、オレみたいな根拠のない自信だからな。
【プロフィ－ル】
▼ 中川淳一郎
ライタ－、編集者、PRプランナ－。
一橋大学商学部卒業後、博報堂CC局で企業のPR業務を請け負う。2001年に退社後、フリ－ライタ－となり、その後『テレビブロス』編集者に。企業のPR活動、ライタ－、雑誌編集などを経て『NEWSポストセブン』など様々な、ネットニュ－スサイトの編集者となる。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』（光文社新書）、『凡人のための仕事プレイ事始め』、『ウェブで儲ける人と損する人の法則』、『内定童貞』など。
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