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 「見た目問題」---。病気や事故などによって顔や身体に一目でわかる特徴を持ち、就職や恋愛、対人関係などに悩むことだ。こうした悩みを抱えている人は、全国におよそ100万人もいると言われており、引きこもりになってしまう人もいるという。

 そのような「見た目問題」を解決しようと、NPO法人「マイフェイス・マイスタイル」が開催した写真展が話題を呼んだ。成人してから症状が現れた、全身性円形脱毛症の女性。笑顔で写る姿は、結婚式の日の朝の一枚だ。

 「マイフェイス・マイスタイル」代表の外川浩子さんは、見た目の悩みについて、「本人に周りの人がどう対応するのかという時に生じてしまう、"社会の壁"に当たってしまうことが問題」と指摘する。「全国にそういった症状を持っている方が100万人いるのに気付かないというのは、なるべく目立たないようにしているから」と話す。

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 「昔付き合っていた彼が、赤ちゃんの時に顔に火傷をした人だった。一緒に街を歩いたり、買い物しようと外に出たら、人からすごく見られた。その人と付き合うことで、ある日突然、人から見られると言う経験をしたので驚いたし、しんどいって感じたので、それがきっかけで、この問題に関心を持った」と外川さんは語る。自分にとって大切な人が理不尽な思いをさせられていることにモヤモヤ、怒りを感じたという。

■「見た目問題」に向き合う当事者たちの思い

 「見た目問題」に向き合い、発信している当事者たちはどのような思いを抱いているのだろうか。

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 顔などの骨が萎縮するロンバーグ病の村下優美さん。こめかみがへこんでしまい、高校生の時に脂肪を移植する手術を受けた。「医学的には多分失敗したんだろうなと思っています。移植した脂肪が壊死して黒ずんで固まってしまいました。心理的にグロテスクなもの付いているので、ちょっときつかったなぁ」と振り返る。

 そんな村下さんは、顔にすぐにわかる症状がない人にも様々な悩みがあることに社会人になってから気が付き、考え方が大きく変わったという。

 「自分の悩みを他の人と比べてしまうともう辛くなる一方な気がするので、『見た目に悩んでいる』ことを一旦受け入れて、相手は相手の悩みがあるのは尊重したほうがいいし、一方で自分の悩みも尊重することで私は楽になった」(村下さん)。

 事故で小指を欠損したという杉田真梨さんは「気にならないことはない、ずっと。多分これから死ぬまで気にしていくんだと思う。でも、それとはまた違う段階で気分が新たなステージに行く、怪我したけど元気だし、見た目ぱっと見、分からなければいいじゃないかと、そういうのはあるかもしれない」と話す。

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 粕谷幸司さんは、生まれながらにメラニン色素を作ることができないアルビノだ。「高校時代に、初対面の人は僕に話しかけづらいし、気を遣うんじゃないかと思って、大学からはキャラクターを変えて、ベラベラ喋っていくタイプになろうと思った」と振り返る。現在、エンターテインメントの世界に入り、ネットでアルビノについて発信。ラジオやイベントにも出演するようになった。

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 「全ての人が見た目問題とかアルビノに理解を示して欲しいと思っても、多分無理だろうなと思うし、理解されたところで生きやすくなると限らないと思っていて。アルビノという生まれつき僕が持っていたものと、エンタメという僕が一番人生の中で大好きになったもの、この2つ。僕の人生そのものをこの2つが構築しているんだろうと思うので、アルビノがなかったらこんなに幸せにならなかっただろうなと思う」(粕谷さん)。

■症状を持っていない人が意識を変えていくべき

 街の声を聞いてみると、「八重歯が気になる」「目つきが悪いとか、怖いと言われる」「太りきった身体。自制できていないイメージが付いてしまうのがコンプレックス」など、些細な部分でもコンプレックスになり、場合によってはそれが原因でいじめにあったり、不愉快な思いをすることもある。

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 網膜芽細胞腫という病気で幼少期に片目を摘出、手の皮膚を移植した泉川一樹さんもそのうちの一人だ。泉川さんは2歳の時に網膜芽細胞腫と診断され、眼球を摘出。京都大学に進学してからはアイスホッケー部の副キャプテンとして活躍、昨年就職した。普段付けていた眼帯を外したのは大学四年の時だ。「最初は慣れなかったが、アイスホッケーをすると眼帯が蒸れるので外したら、案外みんな普通で」と振り返る。

 そんな泉川さんだが、「営業の面接に行った時に、"それで営業に行けるのか"とか"障害者手帳持ってるの?"とか言われた」といい、「面接が一番鬼門だった」と明かした。

 一方、凍傷で指を9本失った登山家の栗城史多さんは、指を切断する際に父親から「おめでとう。そんだけ苦しい思いをしながらチャレンジできるというのは素晴らしいことだ」と言われたという。「苦しいこととか困難なこともあるが、その分学ぶこともあったり、何かできるようになったら嬉しいなと思うこともあるので」と話す。

 両足と右手に障害を持つ、一般社団法人「Plus-handicap」編集長の佐々木一成さんは「大浴場とか温泉に行くと、小さい子どもから"うわ、変""キモい""なにこの足""怖い"とか、そういう言葉をいっぱい投げかけられてきて、慣れてタフになっていくしかないかなと思う」と語る。佐々木さんは「違う何かで勝負しなくてはいけないと思った時から、そんなに生きづらいと感じることはなくなった」という。

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 しかし外川さんは「当事者が努力したり我慢したり、というところに甘えてきた問題でもあると思うので、症状を持っていない人が意識を変えていかなければならない」と訴える。「タブーではなくて、みなさんが話題にしてくださって、家とか学校とか、どこでもいいので話して頂ける、その方がいいと思う」(外川さん)。

 泉川さんが「見た目から感じる悩みって、10人いれば10通りくらいあると思う。それぞれ自分が向き合い方ってどれが適しているのか、やり方みたいなのを見つけていくと次第に気にならなくなったりっていうのがあると思うので、考え続けるのは厳しいこともあると思うが、考え続けることが大事だと思う」と話すように、「見た目」も一つの個性だと捉えることが求められている。

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※トリーチャーコリンズ症候群として紹介されている男性の写真について、映像では「現在アルバイトをしながら大学院で障害について勉強している」と紹介していますが、実際は現在公務員として勤務している、別の男性の写真でした。訂正しておわびします。

(AbemaTV/AbemaPrimeより)

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