ラッパーのWiz Khalifa(ウィズ・カリファ)が、コロンビア最大の麻薬王ことパブロ・エスコバルの墓参りをしたところ、地元の人々から非難を浴びてしまった。
コロンビア・メデジン市でのライブを終えたウィズ・カリファが、悪名高い麻薬王、パブロ・エスコバルの墓参りをした写真を公式インスタグラムで公開。墓前に花束と大麻のジョイントを供える写真はプレゼントの絵文字を付けているあたり、おそらく気軽に投稿したのだろう。
エスコバルといえば、1970~80年代にかけてコロンビア最大の麻薬密売組織“メデジン・カルテル”を築き上げ、コカインの密売によって世界有数の大富豪に成り上がった人物である。しかし、コロンビア政府はもちろん、密輸先だったアメリカの特殊部隊、さらに地元の自警団に追われる身となったエスコバルは、1993年にコロンビア警察によって射殺された。その壮絶な人生は<NETFLIX>のオリジナルドラマ『ナルコス』をはじめ、多くの映画やドキュメンタリー作品として映像化されているほどだ。
莫大な富を築き、地元の国会議員を務め、市民のための慈善事業を手がけた“英雄”として今もなお支持されているエスコバル。しかし、その素顔はメデジン・カルテルを率いて要人の暗殺や無差別テロを行い、約3~4千人もの命を奪った“史上最も凶悪な麻薬王”なのだ。
そんな超ヘビー級の犯罪者をリスペクトするような写真をアップしたウィズ・カリファに反応したのは、地元の市長や住民たち。英<BBC>によると、メデジン市長のフェデリコ・グティエレスは、ウィズ・カリファを“悪党”と呼び捨てるほどご立腹だ。
さらに市長は「この男は、麻薬密売人たちの暴力によって苦しめられたことがないという証拠だ」と配慮の無さに苦言を呈し、まるで“犯罪を推奨”するかのような軽率な行為について謝罪を求めたという。市長としては、当然ながら「犠牲者たちにこそ花を供えるべき」という思いがあるのだろう。
かたやウィズ・カリファは“ストーナー”と呼ばれるモクモクなネタでお馴染みのラッパー。ハッパ愛好家としても大先輩であるSNOOP DOGG(スヌープ・ドッグ)とモクモクなコメディ映画に主演し、オリジナルの大麻ブランド「KHALIFA KUSH」を展開するほどのハッパ愛好家として知られているが、この騒動を受けて花束と大麻を供えた写真と、かつてエスコバルが住んだマンションを訪ねた画像を削除したようで、現在は墓の近くで佇む写真のみが公開されている。
コカインは使用せず主にハッパを愛用していたと言われているエスコバルにシンパシーを感じ、盗品を売買していた貧乏人から世界7位の億万長者に成り上がったサクセスストーリーへの敬意を込めて墓参りしたのかもしれないが、「彼に殺害された罪なき人々の遺族の心情も考えるべき」と非難されるのは当然のことだろう。