ビックカメラは4月7日から「ビックロ ビックカメラ 新宿東口店」と「有楽町店」の2店舗でインターネット上の仮想通貨「ビットコイン」での支払いを試験的に導入する方針を発表した。
ビットコインを知っているか、街の声を聞いてみると「知らないです」「コンビニとかで聞いたことのある感じはしますけど」「ゲームセンターとかのコイン」といった声が続出。まだまだ認知度は低いようだ。
ビットコインとは、実物の硬貨や紙幣があるわけではなく、インターネットの中だけで流通する形のない仮想通貨だ。ネット上の取引所に口座を開設し、銀行などからお金を振り込むと手に入る。あくまでデータの中だけの存在だが、2009年に登場以来、時価総額は2兆円を超えている。
■消費者と小売店にとってのメリットは?
ビットコインの所持や利用には、どのようなメリットがあるのだろうか。まずは支払いだ。ビットコイン決済が可能な店舗では、クレジットカード払いと同じように支払うことができる。手数料がほとんどかからない。送金もできる。銀行などを介してやり取りする場合は、手数料が必要な上に営業時間外では翌日になることもある。しかしビットコインではインターネット上でやり取りをするので、手数料なしで24時間ほぼリアルタイムで処理される。
2012年ごろから普及に取り組み、"ミスビットコイン"と呼ばれる、株式会社グラコネ代表取締役の藤本真衣氏は「世界共通で使えることも特徴の一つ。発行主体もないため、海外送金の手数料が格段に押さえられます。寄付や資金調達の場面でビットコインが活躍の可能性もあります」と話す。
また、藤本氏は小売店側のメリットとして、決済手数料が安いことと、クレジットカードと違い翌日に売り上げが入金されるために資金繰りが楽になることを挙げた。すでに国内で4500店舗ほどが導入済だという。
藤本氏が「例えば海外から来るお客様にとっても決済の手段が増えるのは良いことだと思います」と指摘する通り、BuzzFeed Japan編集長の古田大輔氏も、ニューヨーク出張のために口座を開設すると話す。「ドルを毎回準備するのは面倒くさい。クレジットカードでほとんどの物は買えますが、ちょっとした時の決済手段が増えることが良いことだと思う」(古田氏)
■政府の立場としては微妙?
小売店や消費者にとってビットコインの利便性は大きいが、税金の問題や、マネーロンダリングの懸念など、政府にとってはメリットばかりとは言えないだろう。
日本でも2015年にはビットコイン取引会社の社長が客から預かった3億2千万円を着服し、逮捕されるという事件もあった。国も安全性を高める整備や利用者保護の取り組みを進めており、ビットコインを通貨と同様のものと認め、1日に施行された改正資金決済法では野放し状態だった仮想通貨交換業者を登録制とし、金融庁の監督下に置く。
古田氏は「国家にとって、貨幣をコントロールできるというのは、ものすごいパワーの源泉。だから本当は認めたくない。ただ色々とメリットもあり、他の国がどんどん認め使い始めていく中、日本だけが認めなかったらどうなりますか、ということで受け入れざるを得なくなっている」と指摘する。
ビットコインには、そもそも各国の通貨における中央銀行のように、発行主体がない。
経済評論家の川口一晃氏も「通貨の発行権というのは国家主権の一つ。それを民間ができてしまうとなると、日本でいえば日本銀行が貨幣の量をコントロールできなくなり、金融政策を有効に打てなってしまうリスクもある」と話す。
藤本氏も、「ビットコインは世界中のコンピューターが、全員で監視しあいながら、協調して管理しています。それが今までの常識にはない、画期的な仕組みとされています。非中央集権型には良い面と悪い面があります。ビットコインの財布機能のあるウォレットのパスワードを忘れたら、1億円を持っていたとしても取り出せなくなりますが、自己責任です」とした。
また、社長が逮捕されるに至った「マウントゴックス事件」でも注目された安全性、信頼性も課題だ。「世界全体でみると、取引所がハッキングにあう事件が数か月に1回起きています。そのためユーザーが安全性の高い保管方法を学んで、気をつけることがポイントになってきます」(藤本氏)。
そして、ビットコインと言えば投資だ。円やドルのように相場が変動するため、運用目的で売買されてきた側面もある。先月は1ビットコイン=10万円~15万円前後と、値動きが激しいのも特徴だ。これについても川口氏は「ここまで乱高下するのは非常に不安定だし、金や株式のように値動きの理由もわからない。ビットコインはあくまでも投機の商品と同じものが、決済機能も持った、というようなことではないか」と懸念を示す。
■「いつの間にか便利で使っているという世の中が来る」
ビットコインの支払い導入を発表したビックカメラ。ビットコインでの決済の上限を10万円相当とするものの、現金支払いと同率でのポイント還元を行うという。海外からの旅行者の利用に加え、国内の利用者も増えると見込んでいる。全国の店舗への拡大も検討しているとのことだ。
リクルートライフスタイルはレジアプリ「Airレジ」を使う店舗が 希望すれば夏頃からビットコインでの支払いができるようになると発表した。Airレジは25万以上の店舗が導入している。ビットコインで支払いができる店舗は国内約4500か所だが、今後利用店舗が拡大することでビットコインの口座を持つ消費者が増える可能性がある。
ビットコインでの買い物の流れについては「国内でも大きな取引所がいくつかありますが、そこでまず日本円とビットコインを交換して所有します。そしてスマホアプリのウォレットをダウンロードして、そこにビットコインを移します。後はお店で決済をするという流れになります」と藤本氏。
「ほとんどの人がスマホの技術の裏側を知らずに使っています。ビットコインも今後普及していくにあたって、おそらく技術的なことを気にしなくてもいつの間にか便利で使っているという世の中が来ると思います」とコメント。さらに「今は技術的なことが議論されがちですが、ユーザーからすると海外送金の手数料が格段に安い、決済の時に便利だ、ということに注目すべきだと思います」と話した。(AbemaTV/AbemaPrimeより)