群馬県・前橋市にある群馬朝鮮初中級学校への補助金に条件がつけられることとなった。
中学3年生までの児童が通っている群馬朝鮮初中級学校。昨年度、この学校には県から児童41人に対し、計241万9000円(1人あたり5万9000円)の補助金が支払われていた。ちなみに群馬県の私立小中学校への補助金の平均は一校あたり約8800万円。群馬朝鮮初中級学校の約36倍にあたる。
しかし、群馬朝鮮初中級学校は、今年度からある条件を満たさなければ、補助金が交付されなくなる。その条件について県の担当者によると「拉致問題について教科書に記載すること。また、朝鮮総連(在日本朝鮮人総聯合会)と無関係なことの証明」だという。
今年度が始まったばかりの今、なぜこのような条件を出したのだろうか。去年3月、文部科学省は北朝鮮と密接な朝鮮総連が教育内容に影響を及ぼしているとして、補助金が適正に使われているのかなどの見直しするよう通知した。いわゆる「3.29通知」だ。
その要旨は「朝鮮学校に関しては、我が国政府としては、北朝鮮と密接な関係を有す朝鮮総聯が、教育内容、人事および財政に影響を及ぼしているものと認識しております」「各地方公共団体におかれては朝鮮学校の運営に係る特性も考慮の上、朝鮮学校に係る補助金の公益性など十分に検討、適正かつ透明性のある執行をお願いします」というものだった。群馬県も、群馬朝鮮初中級学校の歴史や社会の教科書を翻訳、内容を調べたという。
■「子どもたちと拉致問題は一切関係の無いこと」
そもそも朝鮮学校は戦後、在日朝鮮人に対して民族の歴史や文化、言葉を教える目的で作られた。1970年代のピーク時には全国に161校あり、生徒数は45000人以上いたという。現在、学校数は半分以下に減ったが、いまでも約6000人の生徒が学んでいる。
全国で合計66校ある朝鮮学校は外国語で教育を行うため、幼稚園や小、中、高、大学などの一般的な教育機関(学校教育法一条に定められる)ではなく、各種学校(予備校や簿記などの教育施設もこれにあたる)に位置づけられている。
大阪のとある朝鮮学校の場合だと、入学金は5万円で授業料は月3万8000円だという。国からの補助金は無いが、地方自治体からは都道府県で1.9億円、市町村で1.8億円、合計で3.7億円が支給されている。こども教育宝仙大学の佐野通夫教授によると、この額は一条校に比べて圧倒的に少ないのだという。佐野氏によれば、「一つの大規模な私立学校が受ける補助金が億の単位。それを朝鮮学校は66校で分けている現状」なのだという。
今回、群馬県が提示した条件について、佐野通夫教授は「子どもたちと拉致問題は一切関係の無いこと。これまでも日本と北朝鮮の関係がちょっとでも危うくなったりすると、電車の中で暴言を吐かれたり、着ている服を切り裂かれたりすることもあった。朝鮮学校に通っている子どもたちは日本で暮らしている。生活する中で、拉致問題を知らないはずがないのに、あえて教科書に書けというのはどうか。それぞれの民族に歴史があり、日本の学習指導要領では教えきれないところがある。そのために外国人学校を作っているわけだから、アメリカの学校が原爆投下をどう教えているか、という話になり、それらを全て日本の学習指導要領と同じするのでは、キリスト教や仏教系の学校の存在する意味もなくなってしまう」と批判する。
また佐野教授は「文部科学省3.29通知に関しても問題がある」と指摘。海外にある日本人学校も文部省が教員を派遣したり、教材を贈ったりしているものの、設立主体は日本人会であり、朝鮮学校と朝鮮総連が関係あることは当然なのだという。
一方で、補助金交付停止に賛成の意見としては「子供たちに罪はないかも知れないが北朝鮮や民族教育に問題がある限り私たちの税金で助成することはおかしい」や「朝鮮学校に3億円もの補助金が出ているのは北朝鮮に誤ったメッセージを与えかねない」という声もある。また言うまでもなく、日本は北朝鮮に対して経済制裁を続けている。
日本や国際社会と北朝鮮との関係が冷え込む中、日本に暮らす子どもたちの教育は、どうしていくべきなのだろうか。(AbemaTV/AbemaPrimeより)