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 震度7を観測した熊本地震で、多くの人々が心を痛めたのが、熊本のシンボルでもある熊本城への被害だった。石垣は崩れ、天守閣の瓦も落ち、日本三名城にも数えられる、美しい城は見る影もなくなってしまった。それでも地震直後には修復費として日本財団が30億円の寄付を発表したほか、全国から寄付金が寄せられるなど、名城の復活を望む声は止まない。

 あれから1年、復活へ向けた動きが本格化してきた熊本城。今回、テレビ朝日の小松靖アナウンサーとアシスタントの黒田が、市の全面協力のもと特別に許可を頂き取材した。

 桜が満開の二の丸公園から、震災以降は立ち入り禁止となっている城内に入る。「西大手櫓門」に向かうと、さっそく崩壊したままの石垣と櫓が目に飛び込んでくる。案内してくれた熊本城総合事務所の的場弘二さんによると、「14日の前震の時には何ともなかったが、本震でこのようになってしまいました」。

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 さらに城内を進み、「数寄屋丸二階御広間」の前へ。石垣が崩れた影響で撓んだ建物には、ひびが入っていた。

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 そして、被災者を勇気づけてきた「飯田丸五階櫓」の前へ。地震により、ほぼすべての石垣が崩れたにも関わらず、隅の石垣が柱状が残って建物を支えたため、櫓全体の崩壊が免れた。このことから、この石垣は「奇跡の1本石垣」と呼ばれ、懸命に前に進む被災者たちの象徴として知られるようになった。しかし危険な状態であることに変わりはなく、地震から2ヶ月後、鉄のアームで櫓を補強している状態だ。これから始まる修復では、櫓を一度解体・保存しておき、石垣を下からもう一度積み直すという。

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 修復に当たる大林組の土山元治・熊本城工事事務所長は「崩れかけた木造の建物をこのように支えるのは始めて。あれだけ頑張っていただいた石垣なので、崩れないよう、慎重を期して保護しながら作業を行う」と話す。実は土山さん自身も熊本県の出身だ。

 本丸に入る前に的場さんが「是非見てほしい」と案内してくれたのが、撮影ポイントとしても知られる「二様の石垣」だ。地震の揺れの影響で、石垣の中腹が内側から膨らんでいるように見える。土山さんによると、コンピュータで解析、内部の状況をシミュレーションして危険度を推定、今後の修復方法を検討していくという。場合によっては石垣を一度全て解体し、もう一度積み直す可能性もゼロではないという。

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 次に向かったのは、国の重要文化財に指定されている「宇土櫓」。1607年の築城当時の姿を留める貴重な建物だ。隣接していた櫓と、通路となる続櫓は崩れ落ちてしまった。宇土櫓も、外観はかろうじて地震前の様子を保っているが、これも一度解体するのか、調査・議論しながら決めるという。

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 いよいよ大天守・小天守がある本丸へ。例年であれば、桜が満開のこの時期、多くの人で賑わう場所だが、人気はない。天守閣への入り口は崩壊、瓦が剥げ落ちた屋根からは雑草が生えており、かつての姿は見る影もない。昨年10月に熊本市が公開した内部の映像では、柱がひび割れ、壁の塗装が剥がれている様子が映し出されていた。

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 日本財団の寄付もあり、大天守のしゃちほこは7月にも復元され、2019年には大天守の外観が完成する予定だ。「まず大天守を復旧して、天守閣エリアを一部開放したい」(的場さん)。

 熊本城の完全復活には総額600億円がかかるとされる。

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 「文化財というのは、ある部分だけ新しい技法を使う、というわけにはいかない。やっぱり歴史が脈々と続いている。その文化を続けないといけない。元の技法で戻すのが大原則」と修復の難しさを語る土山さん。「多くの方が、自分の家が壊れたようだとおっしゃる。被災したまま姿を見るのは忍びないという声もお聞きする。一刻も早く、元気な姿が見せられれば」。

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■石垣にかける熱き男たち

 熊本城の修復には、スペシャリストの支えも欠かせない。熊本市の熊本城調査研究センターを訪ねると、「一年点検」という作業が行われているところだった。金田一精主査によると、崩れる前の写真と比較しながら、肉眼で970面以上ある石垣を一面一面確認、地震から1年後の様子を把握しているという。

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 崩れた石垣は修復のために全て回収して保管、どこに積まれていた石垣だったかがわかるようにナンバリング。崩れる前の写真と石の特徴を照合し、パズルのように組み合わせていく作業を繰り返す。崩れた石は全体で10万個にのぼるとも言われており、途方もない作業が続く。

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 「すでにパンクしている状態で、石を置いておく場所がない。二の丸広場の一角を置き場として並べているが、今後、三の丸の広場に多層構造の石置き場を作って、そこに保管する」(金田さん)。

 そんな熊本城調査研究センターを助けるため、東日本大震災で壊れた仙台城の石垣修復に携わった関根章義さんと、滋賀から派遣された北原治さんが4月に着任、1年間の予定で働く。「かなり大変な作業ではあると思いますが、私の経験が活かせればいいなと思います」(関根さん)。

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 熊本大学で行われている最新の研究では、地震前の熊本城の写真から石垣の形状をデータ化し、そこから崩れた石を埋め戻すシュミレーションができるという。2037年の完全復活を目指す熊本城。完全修復まで20年と言われているが、その間にさらにテクノロジーが進化し工期が短縮する可能性もあるという。(AbemaTV/AbemaPrimeより)

AbemaPrime-4/15 歪んだ城壁「前代未聞の大修復」-ニュースが見放題。 - Abemaビデオ | AbemaTV
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