15日に故・金日成主席の生誕105周年を祝う太陽節を迎えた北朝鮮では、懸念されていた核実験は行われなかったものの、軍事パレードでは特殊部隊やICBMとみられる兵器など7種類の弾道ミサイルを初公開したほか、翌16日には中距離弾道ミサイルを発射した。
アメリカは北朝鮮と国交がある中国に対し、首脳会談や電話会談で制裁措置の強化を要求。 トランプ大統領はTwitterで「北朝鮮は問題を起こそうとしている。中国が対応しない場合は中国なしで問題を解決する」と発信した。海外メディアによると、中国は北京・平壌間を結ぶ航空便を無期限に運行停止にするなど、経済制裁の強化を打ち出してきている。
そのような状況下で行われた弾道ミサイル発射。北朝鮮に対する中国の影響力は低下しているのだろうか。
■北朝鮮は"必要悪"という側面も
拓殖大学教授の富坂聰氏は中国の影響力について「ものすごく低くなっていると思う」と断言、北朝鮮とのパイプは世界の中では中国が一番太いものの、周囲が思っているほどの影響力はないという。
富坂氏は「朝鮮戦争を一緒に戦った"血を分けた兄弟"というような位置付けだった。ただ、北朝鮮は旧ソ連と中国の影響力を排除してやってきた国。兄弟ではあるけれども、ものすごく警戒心がある。その上、92年に中国が韓国と国交を樹立したことで、北朝鮮にとって中国は"裏切り者"になった」と話し、「表面上は仲良くしているが、水面下ではひどい状況が続いてきた。これが2006年の核実験でさらに仲が悪くなった」と、中国と北朝鮮の関係性を説明した。
しかし、中国にとって北朝鮮は"必要悪"という側面もあるのだという。
国際ジャーナリストの高橋浩祐氏によると「北朝鮮が滅びて、韓国に吸収されると困る」と指摘。富坂氏も「"緩衝地帯"としての北朝鮮の価値がある。中国にとって隣の国は小さい方がいい」と話す。「北朝鮮がそこそこ危険であるほうが利益がある」というのは、アメリカにとっても同様だという。「北朝鮮の脅威が、在韓米軍、在日米軍の存在価値を高めている」(富坂氏)。
一方で、米中ともに、北朝鮮による核開発は止めなければならないという考えもある。「必要悪が悪くなりすぎると邪魔になる。手当をしないといけないという段階にきた。中国は東アジアで核兵器を持つ唯一の国でいたい。北朝鮮が核を持つことで、韓国や日本で核武装論が出るのは嫌だと考えている(富坂氏)。
そんな中国は、アメリカとの交渉の中で変化を見せつつある。
富坂氏は「中国はアメリカのシリア攻撃を黙認、国連安保理でもシリアの問題ではずっと拒否権を行使してきたのが、今回は棄権した」と述べ、中国の対応の変化を指摘した。
高橋氏も「北朝鮮はエネルギーの大部分を中国に依存している。今後重要なのは、中国が石油の輸出を止めるかどうか。これを本当にやるかどうかで、中国の本気度が分かる」とした。
■アメリカはロシアとの関係も考慮?
しかし、両国には別の思惑もあるという。親ロシア派とみなされていたトランプ政権だが、「アメリカはシリアの問題を通じて、中国にロシアについて踏み絵を踏ませた」(富坂氏)、「アメリカの最優先の課題は中東で、北朝鮮ではない。米中首脳会談で中国とロシアの間を裂くことに成功した」(高橋氏)のだという。
対北朝鮮政策を超えた、米中の新しい関係性も生まれつつある。
富坂氏は「アメリカ、中国、日本の思惑はそれぞれ全然違う。北朝鮮問題については、日本はアメリカに頼るしかないが、利益とはずれるところもある。日本ができることは少ないが、独自でできることを模索すべき」と訴えた。(AbemaTV/AbemaPrimeより)