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 人生相談企画「飲み屋の中心で、バカ!を叫ぶ」。人生のさまざまな悩みについて「バシッ!」と喝を入れるのは、ネットニュース編集者の中川淳一郎さんです。今回の相談者は、フリーライターの姫野ケイさん。フリーライターとして仕事をする上でいろいろと悩みが多いようです。

■前回記事

“世界一の即戦力男”菊池良「仕事の肩書に悩んでいる」――連載・中川淳一郎の『飲み屋の中心で、バカ!を叫ぶ』

■姫野ケイ(29歳・フリーライター)「低報酬の仕事をどのように断ればいいのか」

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姫野:今フリーのライターとして活動しているんですが、ギャラの交渉がとても苦手です。打ち合わせで依頼主から低いギャラを提示されたとき、どう断ればいいのか……。「ギャラが安い」とか「もっと上げてほしい」と言うと、ケチに思われたり、依頼主を不快にさせたりする不安もありますし。

中川:その悩みの解決法は簡単です。姫野さんは普段から「貧乏アピール」をしたほうがいい。

姫野:貧乏アピール?

中川:「私、ビンボーなんで今回はギャラを5000円ほど上げていただけないでしょうか? ごめんなさい! 本当にビンボーなんです!!」って伝えればいいんですよ。で、TwitterやFacebookでは、ボロボロになった寝間着の写真をアップして「友達のA子ちゃんは新しいパジャマを買ったのに、私はそれさえ買えない……」と発信するなど、とにかく貧乏暮らしをアピールすること。

姫野:でも、そんな方法が本当に解決に繋がるんでしょうか?

中川:それが繋がるのよ。かくいうオレも今だにガラケーを使っているんだけど、それを知った古巣の博報堂の先輩とかが「中川、お前ちゃんと食えてるのか?」って、心配して仕事をくれるわけです。あとは、完全にクッション部分が破れてボロボロの椅子とか、ボロい家をSNSで公開する。って、オレの話じゃねぇかよ!

 だから姫野さんも、日々貧乏アピールをしてギャラ交渉をする人だというイメージが定着させればいい。「男に騙されて100万円近くの借金を背負ってしまった」という過去を創作するとかしてさ(笑)

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(写真:中川氏提供)

姫野:なるほど。

■相性の合う「筋のいい客」を見つけろ

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中川:で、これからも姫野さんがフリーランスとして気持ちよく仕事を続けていきたいなら、「筋のいいお客さん」を見つけることが大事だね。例えば、オレにとって筋のいい客はこの原稿を掲載させてもらっている「AbemaTIMES」の運営元でもあるサイバーエージェント。サイバーからの依頼は、どれだけ報酬が低かろうが引き受けるようにしています。

 昨年は4択クイズを200セット作る仕事をやりました。「この中の県で、唯一県庁所在地と県名が異なるのはどれでしょうか?」って質問があって、回答は「1.滋賀」「2.岐阜」「3.和歌山」「4.福井」みたいなやつとか……あとは「初めてのデート、相手の鼻から鼻毛が出ている時に取るべき対応は?」という質問で、回答は「1.スルーする」「2.『後で鏡で鼻を見て』と言う」「3.『鼻毛出てるよ』と指摘する」「4.いきなり引っこ抜く」とか……(注:AbemaTIMESの仕事ではありません)

姫野:そ、そんな若手の放送作家がやるような仕事もされているんですね。

中川:そうなのよ。サイバーの社内では、どうやら「中川さん=文章にまつわる仕事は何でもやってくれる人」という噂もあるみたい。筋のいいお客さんであれば、こういった小さな仕事が、結果的に大きな仕事に繋がることもある。そんな会社を姫野さんも見つけられるといいですね。

 すると心に余裕が出きて、ギャラが厳しい仕事をお願いされたとしても「そのうちおいしい仕事に繋がるかもしれないし、まぁいっか」って思うことができるわけです。単体で見るのではなく、全体で見るといいです。

姫野:ちなみに筋のいい客を捕まえる方法はあるんですか? 

中川:ひとつは「これから伸びると思う会社」を見つけることだね。オレは16年前にサイバーエージェントから最初の仕事の依頼を受けて、絶対に伸びると思ったらから断らなかった。最近も、某ニュースサイトが伸びそうだと思ったから、なんとか食い込ませてもらおうと、いろいろ提案をしています。

 そして次に「自分と相性の良さそうな会社」との関係を大事にすること。古巣である博報堂なら、仕事の進め方や社員の考え方もわかっているから、比較的仕事がしやすい。他の会社だと、小学館や新潮社の人とやる仕事もうまくいきやすい気がするね。長年仕事してわかったのは、オレは業界No.2の会社と仕事するとうまくいくみたい。元からリーダー気質もないし、小物臭がすごいからね。自分がどんなカラーなのかを見極め、それと合う会社と付き合えばいい。姫野さんも自分と相性のいい会社なり、雑誌やサイトを見つけたほうがいい。

姫野:依頼主や仕事の選り好みはあまりよくないと思っていましたけど、そういう考え方もあるんですね。

■忖度せざるを得ない若手ライターの悲哀

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ーー今後、姫野さんは貧乏アピールをしてギャラの値上げ交渉をしつつ、筋のいい客を見つけれられればいいわけですね。

姫野:でも、ギャラに関してもうひとつ悩みがあるんです。今あるWeb媒体で定期的に執筆しているんですが、依頼主である編集者からは「姫野さんよりもキャリアのあるライターさんが1本5000円で書いてるから、同じ値段でお願いします」と言われているんですよ。そんなことを言われたら、私みたいな若手は忖度するほかありません。

中川:そこについてはなんだか申し訳ない気持ちでいっぱいだわ。本来はキャリアがある先輩ライターが、後進たちがもっと仕事のしやすくなる環境を作るべきなんだよな。

姫野:そうだとありがたいです。

中川:まぁでも、その状況を打開するのも筋のいい客だな。オレは筋のいい客なら、2000円しか貰えなくても絶対に仕事を受けます。一方で、あまり関係が発展しなさそうな客なら7000円貰えるとしても断ります。姫野さんもこれから信頼できる依頼主を3~4社ほど見つけられると、フリーライターとして働きやすくなると思うんですよ。

姫野:最近は飼っている猫の医療費がけっこうバカにならないので、それをアピールしつつ、頑張りたいと思います。

中川:そうそう。「この子のために私は一生懸命働くんだ!」とか発信したりね。あとは物書き業界全体が、「取材して文章を書くことはけっこうコストがかかること」だと主張しないといけない。原稿を1本書くにしても、移動、取材、録音データの文字起こし、構成案の作成、執筆など相当のコストがかかるもの。簡単そうに見えて、文章を書くのはとても大変なことなんですよ。

姫野:同意見です。当事者じゃない人ほど簡単に書けるものだと思っているんですよね。

中川:金銭面で苦労しているフリーのライターやデザイナーはもっと大きな声で文句を言ったほうがいいと思うね。「不当な値段で買い叩くんじゃねえ!」と。

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▼ 中川淳一郎

ライター、編集者、PRプランナー。一橋大学商学部卒業後、博報堂CC局で企業のPR業務を担当。2001年に退社後、フリーライターとなり、その後『テレビブロス』編集者に。企業のPR活動、ライター、雑誌編集などを経て『NEWSポストセブン』など様々な、ネットニュースサイトの編集者となる。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『凡人のための仕事プレイ事始め』『バカざんまい』『電通と博報堂は何をやっているのか』など。

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