Weny Dacillo
『AMPM』(発売中)
パンチラインとか上手いこと言うみたいなメンタリティに直結したラップのリリシズムがどんどん過去のものになっていく今、WENYが身をもって示す無意識の自然体は、2017日本のど真ん中。歌とラップのへだてないシームレスなヴォーカル術とメロディセンスが曲に血を通わせ、耳にこびりつく。Jポップでもシティポップでもなく、「Process」や「Private」をカラオケに入れるべき。
KINGPINZ (MASS-HOLE & KILLIN’G)
『KINGPINZ』(発売中/WDsounds)
DOGEAR周辺やKANDYTOWN勢の作品でもトラックメイカーとしてその名を広めるMASS-HOLEと、同じ松本のMC、KILLIN’G(麒麟示)の初デュオ作。90’s色濃いブームバップと眼光鋭いリリック、ラップがヤワな輩とこのご時世をしたたかに撃つ、これぞ野郎のハードコアヒップホップ。好きモノはたまりませんな。〈リアーナなんか聴けないぜ〉とのラインもまさにの一作デス。
HOOLIGANZ
『TUNE UP HOLIDAY』(発売中/HOOLIGANZ & CO)
王道サンプリングトラックが売りのサウンドを脇に置き、全編に生バンドを迎えて制作したサード。「Sonomama De ii」(=そのままでいい)とは彼らの内なる声か、肩の力抜いた作りが収穫に。曲調、表情ともにぐっと広がりが出たね。ダビーなトラックで思い思いにラップ転がす「Dive」と、女性ヴォーカルがシメで一気に情感をほとばしらせる「踊りませんか」が双璧かと。
A-THUG
『GOD MALVERDE』(5月31日発売/DAWG MAFIA FAMILY)
A-THUG久々の一枚はストリート作。最近のフィーチャリング曲とDOGGIES+1=DAWG MAFIA FAMILYの新曲2曲で全9曲のヴォリュームはやや物足らんけど、なんてことないワードで一緒に歌いたくなるよなフレーズを吐き出す天然の天才ぶりに変わらぬキャラが全開。〈パクリのパクリじゃ楽しめねえ~〉と歌う「THUG PASSION」もさることながら、「月の光バラの花~」はじめ一々おかしい「DMF ANTHEM」がサイコー。
SHINGO★西成
『ここから・・・いまから』(発売中/昭和レコード)
ここにもある、人間味あふれるてらいのない言葉とラップにより舵を切った近年の作風はもちろんオッケーなんだけど、いくつかの曲に見るユーモアに絡めた歯に衣着せぬ物言いや地元・西成の過酷な現実を見すえる目の鋭さこそ、オレがホレる40ファッキン5歳のSHINGO★西成。それはそうと、J-REXXXとの“鬼ボス”の掛け合いはサブイボ級でしょ。これはライヴでも鬼ボス間違いなし。観てええ。
IO
『Mood Blue』(発売中/KANDYTOWN)
KANDYTOWNはもちろん、昨今はTHE TAXi FILMS名義でPVなど映像の世界でも活躍を広げるIOのセカンドソロ。メロウな音にキメるしなやかな身のこなしはさながらクールに街を泳ぐようだが、裏に描く夢あり。ANARCHYとの共演でもその思いを共有するが、こくこくと時を刻む針に飲みこまれんとペンを走らす“Feel My Minute”ではそれが一段とリリカルに結実。客演のZEUSの骨太な語り口もイイね。
MONYPETZJNKMN
『磊』(発売中/bpm tokyo)
シーン最注目のYENTOWNの3人が、CHAKI ZULU監修のもと晴れて初のフルをフィジカルリリース。集まる視線をよそに、〈何も変わらないずっとこのまま〉(「ZUTTO」)と握るマイクに気負いはない。煙ふかしチーチ&チョンばりに「UP IN SMOKE」をかましても、やっぱ追っかけてくる現実のチラつきがアルバムとしてリアル。まがまがしいDOGMAの客演がダークなオケを塗りつぶすJUNKMANソロ「啓示の書」も笑っちゃうほどすげえ。
ライター・Hiroyuki Ichinoki