インターネットの動画配信の世界で「麻雀」が主要なコンテンツとしての地位を固めつつある。ネット配信がなかったころ、ファンにとってはフジテレビ「THEわれめDEポン」や、CS局MONDO TVによる対局番組ほどだったが、近年はネット配信による番組が急増。麻雀を「見る」環境が激変した。麻雀ネット配信の黎明期を支えた草分け企業「スリーアローズコミュニケーションズ」の関係者に話を聞いた。
スリーアローズコミュニケーションズが、番組配信「麻雀スリアロチャンネル」を始めたのは5年ほど前。もともと母体が麻雀店を経営していたが、より麻雀を広めるためにネット配信という選択をした。当時を知る同社のスタジオディレクター藤田拓郎さんは「番組は少なかった。プロたちも『MONDO TVに出たい』という人も多かったですから」と振り返った。複数あるプロ団体でも、テレビ出演できるのはほんのひと握り。そこで各団体に声掛けし、タイトル戦を配信するまでにこぎ着けた。「1回目の反応はとてもよかったですよ」。ニコニコ生放送を使い、視聴数は10万回を超えた。
手探り状態で始めた配信は、トラブルもあった。タイトル戦を配信しようとしたところ、配線がうまくつながらず、配信が遅れて冷や汗を流したこともあった。「あと5分で諦めようというところで、何とかつながって」と苦笑いした。都内のマンションの1室で配信をしていたが、3年ほど前に一念発起し、ビルの1フロアを配信施設兼事務所として借りた。「専門家の方にお金を払って『スタジオにしてください』と。それなりにかかったと思いますよ」。フロアには対局室、配信室、実況室、待機室などがある。
今となっては当たり前のような話だが、まだネット配信がなかったころは、プロですら、他のプロの対局をしっかり見る機会がなかったという。「紙媒体しかなかったころは、どうしても大きな手をあがったところとか、目立つところしか載っていなかった。でもネットで配信ができるようになって、プロの細かい打牌の情報も拾えるようになった。プロもアマも、これでレベルが上がったと思う」と説明した。
始めたころは年に1、2回だった配信も、今ではほぼ休みなしだ。「対局もので年100回ぐらい。プロがゲームをしたり、話したりというバラエティー企画は200回ぐらいですかね」と聞けば、その多忙ぶりが分かる。現在では動画プラットフォーム「FRESH!」でも配信を行い、着実に有料会員数を増やしている。
今やテレビでもBS・CS局を中心に番組が増え、インターネットテレビ局「AbemaTV」には、麻雀専門のチャンネルもできた。「見る場が増えたのはいいこと。今起きている麻雀番組ブームの一端は担えたと思う」と目を細めた。「スマホアプリで楽しむ人も増えてきた。麻雀する人の数自体は減っていないと思う」と、参加人口回復にも期待している。
今後も引き続き、プロたちにスポットライトを当てた番組作りを続けるという。「このチャンネルでステップアップして有名になり、大きな舞台に出てくれれば。今後も無名なプロに出演していただきたいし、各団体のオーソドックスな活動を配信していきたい」。スリアロチャンネルを見ていれば、次世代の麻雀スターをブレイク前からチェックできるかもしれない。
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