遺伝子検査会社「ジェネシスヘルスケア」が、男女の遺伝情報を調べることで筋ジストロフィーなど約1050の病気の発症確率が分かる検査を来年にも開始する計画があると発表した。唾液を採取して遺伝情報を読み解き、100％、50％、25％、０％の４段階で発症リスクを評価するという。
こうした検査については、結果によって出産を諦めたり、遺伝病の当事者や家族への差別につながる恐れも指摘されている。日本で４年前から始まった新型出生前診断では、染色体異常が確認された人の８割近くが中絶を選択したという。
■カフェをオープンさせた女性も
東京・表参道駅構内に飾られたモノクロ写真。フォトグラファーの宮本直孝氏がダウン症を持つ子どもとその母親を撮影した写真展だ。障害のある子どもを育てる中で生じる不安や苦悩。それを乗り越える中で生まれる喜び、強さ、やさしさなど、親子の普遍的な愛情を表現した展示となっており、展示を見た人からは「全部包むお母さんってすごい」「みんな目が素敵」といった声が聞かれた。
宮本氏と企画を進めてきたNPO法人「アクセプションズ」の理事長である古市理代さんも、ダウン症を持つ息子と撮影に参加した。
古市さんは「自分のことよりも息子のことを１番に考えて前に進んできましたが、今回、被写体になったことで、自分と向き合う時間をもらったような気がします」と話す。子育てについて古市さんは「約束を守るとか、ルールを守るとか、身支度を自分でやるとか、人として大事なこと、当たり前のことができるように、時間をかけて育てています。息子の成長に合わせて"自立"を目指したい」と語った。
ダウン症がある子どもと親にとって、その"自立"は大きな課題だ。愛知県名古屋市にあるカフェ「やっちゃんち」を営むのは、"やっちゃん"こと森川靖子さん（33歳）。
看護師の補助として勤務していた名古屋市内の病院を退職、３年前に高校生の頃からの夢だったカフェをオープンさせた。
母親の和世さんは「一般就労の障害者雇用で11年働いていたので、ある程度の資金は貯まっていました。その一部をドーンと出して」と話す。
靖子さんはコーヒーの淹れ方を習得し、今では20種類の飲み物をほとんど１人で作っているという。１日に訪れるお客さんは平均20人ほどで常連もいる。
やりがいを感じ、生き生きと働く靖子さんの自立について和世さんは「一人暮らしをするためには、ヘルパーさんを雇わなければいけませんが、お洗濯や、お米を研いだりといったことは家でやっています。普通の方でも、30歳を過ぎて家にいる人はいっぱいいるわけじゃないですか。そう思えば同じことかなって。なるべく自分のことは自分でしてもらうのが、今のところの"自立"かなと思います」と笑顔で語った。
■60.4%が平均年収「30万円以下」の現実
ダウン症がある人の進学率は、2015年度の厚生労働省の調べによると高校の普通科へは0.7％と低く、特別支援学校へは53.3％となっている。
IT企業に勤務する傍らタレント活動も行うあべけん太さんも、ダウン症がある大人の一人。小中学校は普通学級に通い、その後フリースクールへ進んだ。職業訓練を受け、就活では12社目でようやく合格できたという。
父親の俊秀さんは「教育委員会からは特別支援学校に行くようにと言われます。うちの場合は、障害のクラスに入れるのが嫌だとか、見栄を張ってということではなく、保育園の先生から"けん太ならできるよ"と言われたので、トライする気持ちを大事にしたいと思いました。ただ、教育委員会との面談では、"小学校は45分座っていないといけないのよ"など、意地悪なことも言わました」と振り返る。
『ダウン症って不幸ですか？』の著者で、放送作家・ライターの姫路まさのりさんは「発達がゆっくりなので、同じ小学１年生でも他の子に比べて少し遅い部分がある」とし、養護学校などを勧められることが多いと話す。学校現場としても、過重労働や様々な手続き、学習指導の面で多忙という現実があり、対応のための人員を割けないという背景があるのだ。
俊秀さんは「何かあれば、すぐにでも養護学校などに変わっていいですと言っていたのですが、９年間みんなに引っ張ってもらいながら、一生懸命頑張ることができました。他のお父様・お母様たちも"ありがとうね"と言ってくださいました」と話す。けん太さんも「一生懸命勉強して、漢字検定も取りました。ダウン症とか障害者とか、普通級でもやっぱり頑張れるんだよ、という感じですね」と語った。
厚生労働省の調べ（2015年度の）によると、ダウン症がある人のうち「就労中」が74.5％、「就労未経験」が18.8％となっており、60.4%が平均年収は「30万円以下」だ。また、東京大学の調べによると、正規職員は２％、作業所など授産施設・通所施設での勤務が65％となっている
姫路さんは「多くの方が、年収10万円を目標にしましょう、という水準。一般の方々のように、大学のワンクッションもない。働くことに関して、もう少し勉強というか、訓練をした上で社会に出ていく仕組みができれば、働ける人も増えてくると思う」と指摘、けん太さんも「あまり言いたくたくないんですけれど、年収は大体６～７万円ですね。給料を貯めて、家族旅行がしたいです」と打ち明ける。
けん太さんの成長を振り返って、俊秀さんは「30～50歳くらいが寿命だと本に書いてあるので、けん太が生まれた時に"私たちが80歳まで生きれば一緒に死ねるね"と家内と話をした覚えがあります。手術をして今は健康ですので、長生きしてくれると思います。子どもを育てるというのは、健常児でもダウン症でも大変だと思います。けん太は、上の２人とは違う景色を見せてくれました。確かに人が１進むときに0.1しか進まないかもしれないが、必ず伸びしろはあります。時間はかかるし、親や周りの努力は必要ですが、楽しみながらゆっくり育てることが大切です」と話してくれた。（AbemaTV/AbeamaPrimeより）
