玄界灘に面した新三重漁港をはじめ、長崎県は全国4番目の漁獲量を誇るウニの好漁場だ。しかし近年、ウニの漁獲量は年々減少しているという。
中には身の入っていないウニもあった。原因は「磯焼け」だ。海岸に生えているコンブやワカメなどの海藻が減少、不毛の状態となってしまう現象だ。磯焼けの海で獲れるウニは、身入りが悪く、売り物にはならない。長崎県のウニの漁獲量は1970年代後半には4000トン以上を記録していたが、現在はその10分の1程度にまで落ち込んでいる。福岡市中央区にある「うにと海老の専門店 魚魚魚」の島津料理長によると、価格も高騰、1キロ5000円~1万円の幅で変動しているという。
30年以上全国各地の海に潜り「磯焼け」を研究、水産庁の「磯焼け対策ガイドライン」策定にも携わった東京海洋大学の藤田大介准教授は、「磯焼け」の主な原因は温暖化による水温上昇が引き金となって生物の活動が活発化し、海藻が食べ尽くされてしまったことだと話す。さらに、気候変動で大型の台風や時化の発生が増え、海藻が引き剥がされ枯れてしまうのだ。
また、ウニそのものも「磯焼け」の原因になってしまっている。飢餓に強く、食料がない場合は生殖せずに生きていこうとするのだという。「磯焼け」の海で取れた、身の入っていないウニは、精巣・卵巣の部分の成長を抑えているウニということだ。
「実は東日本大震災の直後、養殖施設が流れてしまったことで潮通しが非常に良くり、海藻にとってプラスに働いた。その後に生まれたウニたちが食べ盛りになっていて、今、大いに暴れている。そこで水温が高くなると、ますます海藻を食べてしまう」(藤田准教授)
長崎の漁師たちも手をこまねいていたわけではない。漁協では、ウニの移植で磯焼けの解消を図っている。ウニを普通の藻場に移し、磯焼けが進行した場所には海藻を移植、繁殖を促している。
また、藤田准教授は「北海道では冬のエサがない時期にイタドリの葉っぱを与えるという試みもあった。エサに困るところはそういう努力もしている」と、不要になった野菜を使った養殖の可能性も示唆した。
将来、私たちが美味しいウニを食べられなくなる日が来てしまうのだろうか。藤田氏は「磯焼け対策の中でも、一般市民ができることはまだまだあると。ダイバーの方は写真を撮って記録していただくとか、陸上で手伝えることもあると思う。参加していただければと思う」とした。(AbemaTV/AbemaPrimeより)