5日、中東に位置するサウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦、バーレーン、イエメン、リビアの6カ国がカタールとの国交を断絶すると報じられた。6カ国は外交官を帰国させ、カタールへの航空便や船便なども止める予定だという。
サッカーワールドカップで「ドーハの悲劇」が起きたことで日本人にはおなじみのカタールは、人口226万人。2022年にもワールドカップの開催を控えている。面積は秋田県とほぼ同じで、主要産業は原油と天然ガス。一人当たりのGDPはおよそ7万9000ドル(約900万円)で、日本と比べるとほぼ倍。中東の中でも裕福な国だという。
■サウジアラビアの若い王子は怖いもの知らず?
イエメンが戦争状態にあり、石油の値段が上がらず、経済的に厳しい状況にあるとされるサウジアラビア。このタイミングで国交断絶を決断した背景には、トランプ大統領が同国を訪れた際、対イラン政策を支持したということも要因だという。中東研究の第一人者で、放送大学教授の高橋和夫氏は「サウジアラビアとしては、アメリカがここまで自分たちのことを支持してくれているから今だったら何をやっても許されると思ったのでは」と話す。
そんなサウジアラビアの"カタール嫌い"は、昨年のイランと国交を断絶した際、カタールに"国際社会はドラマじゃないんだから、好き嫌いじゃなくてイランという大きな国とは付き合うしかないでしょ"という態度を取られたことに端を発するのだという。カタールには、採掘中の海上ガス田がイラン側とつながっているということもあり、イランとは揉めたくないという意識があるという。
高橋教授はこうしたサウジアラビアの外交について「乱雑、乱暴になっている」と指摘。「サウジアラビアは若い王子に世代交代した。怖いもの知らなのかな」と推測した。
しかし、カタールにとってサウジアラビアから輸入しているものは何もないため、今回の国交断絶はそれほど痛手ではないという。カタール外務省も「断行の決定は国民や居住者の生活に影響を及ぼさない」とし、「断行は不当で、事実無根の主張や疑いに基づく」と強気の姿勢だ。
■断交の理由「ムスリム同胞団」は"テロ組織"なのか?
今回の国交断絶はサウジアラビアが他の5カ国に声をかけたと言われている。断交の理由について6カ国は「イスラム原理主義組織『ムスリム同胞団』への支援」としているが、カタール側は以前からシリアなどのイスラム過激派への資金提供疑惑を否定してきた。
今回、断交に加わった国々について高橋教授は「バーレーンはサウジアラビアの言いなり。イエメンやリビアは内戦状態で国として存在していないようなもので、今回の国交断絶も何の意味もないが付き合った、という形。エジプトもサウジアラビアから経済援助を受けているし、クーデターで追い出した『ムスリム同胞団』をカタールがかくまっているのでおもしろくない」と説明。
この「ムスリム同胞団」について高橋教授は「テロ活動を行っているわけではない」と話す。「平和的にやってきた人たちが、弾圧されるのなら仕方ないとテロに走ることはある。それを理由にエジプト政府はムスリム同胞団をテロ集団だと主張している」という状況なのだという。
もともと「ムスリム同胞団」は「イスラムを勉強してしっかり実践する」ことを目的に設立されたものだという。貧しい人を助けたり、女性団体を立ち上げたりする社会活動団体だ。しかし軍のクーデターを機にエジプトから追い出されたのだという。
■日本への影響は
カタールと日本は1972年に国交を樹立し、輸出相手国としては日本が1位と密な貿易関係にある。カタールへの各国の国交断絶は、我々日本人の生活に大きな影響を及ぼすことになるのだろうか。
今回の国交断絶報道について菅官房長官は「我が国にとって天然ガス、原油の重要な供給国であり幅広い分野で関係を発展させている。様々な発表や報道があるのは承知しているが、第三国間の話であり、確定的なことを申し上げるのは控えたい」と語るにとどめた。
しかし、東京電力や中部電力など、日本の電力会社はカタールで採れるLNG(液化天然ガス)を年間100万トン規模で購入している。また、三菱商事などは火力発電所の設備をカタールに輸出しているほか、千代田化工建設は今回の報道を受けて「予期していなかったニュースだが、今回の断交で影響が出るとは思えない。ただ、カタールがUAEにパイプラインでガスを輸出しており、これが停止された場合両国関係に影響が出るかどうかは注視している」とコメント。さらに、東京電力と中部電力が共同で設立した火力発電企業であるJERAは「今後の動向を注視している」とし、現地取引先は「LNG供給への影響は考えられない」としている。日本郵船も「現在事実を確認中でコメントを差し控えたい」とコメントするなど、日本企業・日本経済への影響は少なくなさそうだ。
高橋教授は「ただちに影響はない」としながらも、「日本はサウジアラビアからは石油を買っているし、カタールからはガスを買っている。早く解決することが望ましい」と話した。(AbemaTV/AbemaPrimeより)