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■明治時代の民間草案には「当時世界の最高レベルの考え方」も

 先月、安倍総理が「『9条1項2項を残しつつ自衛隊を明文で書き込む』という考え方。これは国民的な議論に値するだろうと思います」と発言したことでにわかに盛り上がる憲法改正論議。しかし、「憲法」と聞くと、難しい、よくわからないといったイメージで、とかく敬遠されがちだ。しかし、日本が近代化を成し遂げた明治時代、民間から憲法私案、いわゆる「私擬憲法」が数多く提案されていた。

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 例えば、明治14年に自由民権運動の指導者・植木枝盛が起草した「東洋大日本国国憲按」。政府が憲法に違反したり、圧政を起こした場合は人民が抵抗する権利や、革命を起こす権利を認めていることが特色だ。

 また、小学校の教師をしていた千葉卓三郎が起草、現在は東京あきる野市に保存されている「五日市憲法草案」。天皇皇后両陛下も実物をご覧になったこの草案の条文には、まだ士族や平民という身分が残っていた時代に「人民はその身分に関わりなく法の下に平等だ」という内容や、政治犯に対する死刑を宣告してはならないことなどが盛り込まれている。同市の郷土史研究家・鈴木富雄さんは「各国憲法や西洋アメリカの思想家たちの書物などにも目を通して、世界の最高レベルの考え方を憲法草案に書き込んでいった」と説明する。

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 さらに、東京から船で1時間半、伊豆大島にも民間で作られた憲法草案「大島暫定憲法」をご存知だろうか。

 終戦直後の1946年1月、GHQが伊豆大島を日本から分離させるよう指示したことを受け、6か村の代表者が話し合い決めたことが「大島の憲法を作ること」だったという。現在コピーとして残されている草案は23カ条からなり、冒頭には"島民主義"や"平和主義"が謳われている。島民たちが起草に邁進する中、GHQの指示が撤回されたことで、大島は日本にとどまることになり、現在に至る。

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 私擬憲法について、政治学が専門の佐藤信・東京大学先端科学研究センター助教は「みんなで自分たちが暮らす場所の決まりを議論し、学ぶ過程の中で生まれてきたもので、中には文章にならなかったものもあったはず。そもそも日本という国が一つのまとまりとして捉えられていなかった時代、国家というものを自分たちの中で消化していく一つのプロセスだった」と話す。

■「将来のグローバル化を踏まえた改憲案を」

 そこで、もし憲法を改正するなら、どんな理念の元にどんな内容を盛り込むか、意見を聞いた。

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 元経産省キャリアの宇佐美典也氏は安倍総理の「自衛隊の明文化なら誰も反対しないし、通るんじゃないかと思っているように見える。もっと国民的議論に値するものを提案すべきだ」と話す。

 そんな宇佐美氏は「参議院の役割を特化する」「憲法裁判所の創設」を提案。官僚時代に「ねじれ国会」を経験した宇佐美氏は、参議院議員たちが時々の政局にとらわれ過ぎだと感じたという。また、法律を作る過程で、憲法に違反していないかどうかを内閣法制局と徹夜で議論した経験を紹介、「これでは国会議員がまともに法律を作るのは不可能だと思う。憲法との整合性のチェックは外に預けていかなければ、日本は変わっていかないのではないか」と訴えた。

 また、かつては右翼団体「一水会」を率いて憲法改正を熱く訴えていた政治活動家の鈴木邦男氏は「GHQの人たちは、もう戦争は起こらないと思って、日本国憲法には軍隊を明記しなかったという。そういう理想を追求することも憲法では必要なんじゃないかと思う」として、警察予備隊、保安隊と変化していった自衛隊を元に戻すという意味を込め「自衛隊を警察に!」と提案。

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 さらに、憲法から天皇に関する条項を外してもいいのではないかと話し、「天皇をこうしちゃいけない、ああしちゃいけないと縛り付けている。憲法や皇室典範でやるよりも、次は誰が天皇になるのかも含めて皇室で決めてもらったらいいと思う。憲法より前から天皇はあるんだからそれは憲法を超えているものだと思います」とした。

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 政治学の立場から佐藤氏は「憲法改正をするのかしないのか、あるいはいかに3分の2を得るのか、というスタートではなく、まずどんな憲法がいいのかという国民的議論が大事」と話す。

 その上で、「国民が議論し始めて、改正に至るまではかなり時間がかかることが予想される。そのときに考えなければいけないのは、数十年後、さらなるグローバル化や人の移動が自由になる中で、縮小していく国家の役割をどう考えるかだ」と指摘。「日本国憲法は前文で"国際社会"ということを最初から書き込んでおり、ある意味でグローバル化に対応しやすい憲法と言える。嫌な国家だったら簡単に出ていける、魅力的な国家であればどんどん人が入ってきてくれる時代、いかに国際社会への貢献を通じて日本の魅力を出していくか、ということも考えていく必要がある」とした。

 また、任期や方法など、選挙制度が明記されていないことも指摘、「どういうふうに選ばれるかを議員自身が決めることになっているので、議員定数もなかなか減らしていけない。憲法に書き込んでもいいのではないか」とした。(AbemaTV/AbemaPrime)

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