今、渋谷で開催されている「ラブドール」の展覧会に、女性客が殺到している。
ラブドールとは、男性が使用する性処理用の人形だ。価格はサイズなどによって異なるが、20万~70万円ほどとなっている。
主に男性向けに作られたものだが、女性たちが惹かれる理由は“美しさ”にある。写真家・篠山紀信もラブドールに魅せられ、4月に写真集を出版。人間を超えた造形美をシャッターにおさめた。
多くの人を虜にする「ラブドール」。その美の魅力とは。
実際に、渋谷のアートスペース・アツコバルーで開催中の「今と昔の愛人形」展を訪れると、やはり女性が多く、来場者の7割は女性だという。
この展覧会は、2017年に創業40周年を迎えたトップメーカー「オリエント工業」が主催したもの。1977年に発表された第1号「微笑」から、展覧会のために作られた最新作「Resuscitation(蘇生)」までが展示され、その製造工程も知ることができる。さらには、触れることも可能だ。
実際に触れた女性は、「鷲掴みしたい、気持ちいい」「柔らかくて、人間のそれとは違う。また新しい感じ。もしこれが男の人の理想だったら恐ろしいなと思う」と感想を語る。
こうした男性向けと思われる展覧会に、なぜ多くの女性が押し寄せるのか。
■「リカちゃん人形などの延長」「取捨選択があって面白い」
実際に訪れた女性は、「造形物として観ている」「子どもの頃にリカちゃん人形などで遊んでいたので、その延長線上にあるのかも」「永遠だからじゃないか。(人間は)老いていくので、憧れる」と理由を語る。
また、18歳の高校生は、「美術系の学校に通っているが、(ラブドールは)目的があって作られているところが、芸術作品とは違う。ただ人間に近づけるだけではなくて、製品として取捨選択がある。だから面白いなと思って」と熱く語った。
会場マネージャーのブーヴィエ・マリーなぎささんは、女性客が多い理由を「造形の魅力」と話す。「女性が見ても、すごい可愛いと思える。オリエント工業のクオリティの高さ、リアルを追求して、でもちゃんと人形らしさは残っているという絶妙なところ。男性にも受けるし、女性にも受ける、憧れるような人形たちだからかなと思う」と分析した。
また、博報堂ブランドデザイン若者研究所・リーダーの原田曜平氏は、「今の若い女性にとって、写真を加工・修正して理想の顔に近づける“盛る”という行為が最大の関心ごと。SNS映えするイベントなので、若い女性たちが多く来場しているのでは」と説明した。
実際に、20代の女性500人を対象にした調査では、84%がSNSに投稿する写真を「加工する」と答えている。(ボシュロム・ジャパン調べ)
■目は人間より少し中央に、鼻は人形らしく
このように、究極の造形美を求めたラブドールだが、時代に合わせて進化の歴史をたどっていく。
1982年~1992年に発売された「影シリーズ」や1997年に発表された「華三姉妹」、2008年に発表され歴代人気No.1と言われている「沙織」を見ると、髪やメイクが時代のトレンドを表していることがわかる。
こうしてラブドールは人間に近づいていったが、ただ近づければいいわけではない。
ロボットや人工物の見た目の動作が人間に近づくにつれて、だんだん「可愛い」「親しみやすい」と好感度が高まる。その一方で、ある一定のリアルさに達すると「不気味だ」と感じられてしまい、嫌悪感に変わってしまう「不気味の谷」と呼ばれる現象が起こるのだ。
不気味の谷を回避するため、一見、人間のように見えるものでも、目の位置をリアルな女性よりも少し中央に寄せ、鼻の形を少し人形らしくするなど工夫がなされているという。
また、オリエント工業のラブドールのフェイス部分は、その時々の流行の顔つきだったり、メイクを研究して作ったりしているという。今回の展覧会にあたって、オリエント工業は最新の頭部8体を発表した。ユーザーからの様々なニーズに応えるため、いろいろなタイプの顔が並べられている。
男性も女性も魅了するラブドール。「今と昔の愛人形」展は、6月11日まで開催されている。
(AbemaTV/『原宿アベニュー』より)
(C)AbemaTV