
「空飛ぶタクシー」計画を発表するなど、急成長を遂げているウーバー・テクノロジーズ。注目を集める一方で、ある異変が起こっているという。
ウーバー・テクノロジーズは2009年にアメリカで創業したスタートアップ企業だ。「ライドシェア」という仕組みの配車サービス「Uber」を運営している。
「ライドシェア」とは、登録したドライバーと乗車を希望する人を、インターネットを通じてマッチングするもの。登録をしているドライバーは一般人で、車はドライバー所有の自家用車だ。アメリカでは、通常のタクシーよりも安く利用できる。利用できる国は年々広がり、現在約70カ国、600以上の都市で利用することができる。
2012年から日本でもサービスを開始したが、「ライドシェア」は「白タク行為」となり違法になってしまうため、アプリを使い提携するハイヤーを配車するサービスを始めた。
そんな中、安倍総理大臣は自家用車への相乗りを認める規制緩和を検討するよう指示。2015年10月の国家戦略特区諮問会議で、「過疎地などでの観光客の共通資産として、自家用自動車の活用を拡大し、外国人を積極的に受け入れ、地方創生の加速化を図る自治体の先行的取り組みを後押ししていかなければならない」と話した。

そして、2016年5月、京都・京丹後市で「Uber」を使ったライドシェアが地域限定で開始。さらに、都内でも提携レストランから一般人が料理をデリバリーする「UberEATS」など宅配事業に参入した。
そんな急成長を遂げるウーバーだが、2017年2月、元従業員の女性が上司からセクハラを受けたとブログで告発。会社に訴えるも、「彼は優秀だから」とセクハラ上司を擁護し、女性は退職に追い込まれた。また、アメリカでユーザーのアカウントが乗っ取られ、ロシアで不正に使われる事例が相次ぎ、個人情報の流失も問題視されている。ほかにも不祥事が相次ぎ、最高執行責任者や最高財務責任者など、多くの要職が空席となる異常事態にもなった。
■わずか8年で時価総額はホンダ、日産超え
複数のベンチャー企業の創業に関わり、欧米の自動車業界に精通する坂和敏氏は、Uberの広がりについて、「つい最近まで450都市くらいだったが、もう600都市を超えている。西欧の方では何年も前から展開しているし、最近では中南米のブラジルとメキシコで始まった。さらに、サウジアラビアなども昨年あたりから。例外的に地元の業者ともめた中国からは2016年夏に撤退した。それを除くと非常に積極的に伸ばしている」と説明する。
日本では客を乗せて運転するには2種免許が必要になるが、坂和氏によると、「国、あるいはアメリカの場合は州ごとに法律が違うことがある。日本のようにきっちりと枠組みがあるところは珍しい」という。

ウーバー・テクノロジーズの歴史をみると、2009年に約2200万円で設立した後、グーグルベンチャーズや中国企業などから多くの資金を集め、わずか8年で時価総額は約7兆円まで増加した。日本のトップ自動車メーカーのホンダ(約6兆円)、日産(約5兆円)と比べて遜色ないが、自動運転車の開発投資や多数の訴訟を抱え、今年の第1四半期で約800億円の赤字を計上している。
■最高経営責任者の暴言、上級幹部の辞職も
2017年2月に社内でのセクハラが発覚し、自動運転車の企業秘密を盗んだと訴えられている。また同月、最高経営責任者の暴言が明らかになった。そして、6月にセクハラ・差別などで20人が解雇、数カ月で10人程の上級幹部が辞職した。

数々の不祥事発覚について、坂和氏は「今回一番指摘されている点は『企業文化なのではないか』ということ。トップの姿勢を反映しているのではないかという批判の声があがっている。要は、目的達成のためなら手段を選ばないとか、達成している人は多少落ち度があっても特別扱いしてしまうとか、贔屓するということ」と話す。
また、アメリカでUberを使用するITジャーナリストの松村太郎氏は、「最近Twitterで検索すると、アカウントがハッキングされてロシアで不正使用されたという事例がたくさん出てくる。実際、不正使用されたという友人が何人もいて、問い合わせしたものの、サポートはなかなか取り合ってくれない。ギフトカードを配って済ませているのではないか、というような批判が出てきてしまっている」と説明した。
■ジャーナリストの松村氏「Uberは段階を踏めていないのでは」
Uberが注目を集める理由として、松村氏は「アメリカ人のライフスタイルを激変させたから」と話す。「6年前アメリカに移住した時はまだUberが普及していなくて、車で一時間の距離の移動に、鉄道とタクシーを使って3時間もかかってしまうことがあった。それほどアメリカではタクシーや公共交通への信頼性が薄い。ただ、今はUberを使って確実に1時間で到着できる。こういう形で、『移動といったら自家用車かUber』というくらいに感覚を変えてしまった」と指摘する。

また、不祥事が続発している理由については、「スタートアップ企業はいろんな段階があると思うが、最初は2、3人だった企業が、10人になって100人になって何百人と増えていく。Uberの場合は、ドライバーとして働いてくれるパートナーが世界中にいる。彼らを管理するには、一般的な大企業と同じようなガバナンスや経営体制が必要。Uberはまだ10年経ってない会社だし、段階を踏めていないのではないか」と話した。
最後に、「日本でUberが根付くのか」という質問に対して、坂和氏は「現状でも、国ごと自治体ごと世界中で違う。一概にイメージはつきにくいが、非常に重要な社会インフラにはなっていると認識しているので、その辺をどううまく活用していくかという議論がまずは大切」と答えた。(AbemaTV/AbemaPrimeより)
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