もしあなたがラッパーで、自分のライブを確実に盛り上げてくれるゲストを呼ぼうと思うならSHINGO★西成を呼ぶのが正解だ。
ヒップホップにレゲエに、数々の現場をロックし続けることで圧倒的な信頼感を勝ち取り、関西を代表するラッパーとしてその名を不動のものとしたSHINGO★西成。そのSHINGO★西成が3年半の期間を経て完成させた5枚目となるアルバム「ここから…いまから」は、現場主義を色濃く反映したバンガーが並ぶ一方、奏者を招いてブルージーに仕上げた曲も並ぶなど、SHINGO★西成が持つ二面性を見せた1枚になった。
取材続きにも関わらず、疲れを一切感じさせない笑顔で出迎えてくれたSHINGO★西成は、以前と何も変わらずブレないその語り口で話をしてくれた。
―前作から3年半とキャリアで最も長く間が空きましたが、ここまで時間がかかったのはなぜでしょうか?
SHINGO★西成 あかん子でしょ、ねぇ。でけへん子なんすよ。おってくれる人らが見捨てんとおってくれたっす。
―そうなった最大の要因はなんですか?
SHINGO★西成 期待してくれた、信じてくれたからこそ。今この言葉ためらったけど、倍返したいって感じ。
―笑。アルバム全体の方向性が定まるまでに内容は変わったんですか?
SHINGO★西成 元々決まってたずっとやりたいと思ってた曲もあるけど、他のテーマの曲ができなかったからこそ、この部分もうちょっと磨きが足らんねんなって反省して、偶然に聴かせてもらったトラックでその思いをブツけたんが「すんまへん」とか。
―1曲目の「ひらきなおる」もそうですかね。
SHINGO★西成 そうですね、そういう感情になったから作って。だから狙ってこういう曲が世の中に受けるやろとか考えは、、、、ないっすね笑。
―周りからの期待感もかなりあったと思います。
SHINGO★西成 俺に対する期待感に関しては応えなあかんと思っとったけど、アルバム収録曲への期待感に関しては、ゴメンやけど俺にまかして聴いてっていう感覚しかなかった。3年ちょっと空いたけど、今やからこそできる曲というか、言葉のチョイスとか音の鳴りとかはこだわったというか、責任持って。
―リリースの期間は空いたとはいえ、週末のほとんどはライブで埋まってましたよね。
SHINGO★西成 過去にライブおじゃましたクラブやライブハウスでちゃんと楽しんでもらったという結果あっての、またライブ依頼してくれると思うんでホンマありがたい思ってるねん。一回一回本気でというか、その時にしかでけへんことをやってるから。酔っ払ったからライブあかんかったわとか、そういうなんは自分なりにないようにして。やらないと奢ったら落ちるっていうのもちゃんとわかってるんで。
―出てきたら100%盛り上げてくれる安心感がシンゴさんにはありますよ。
SHINGO★西成 そこは関西・大阪のお祭り男なんで。
―そうして全国各地でライブやりつつ、地元・西成の活動は今も変わらずやられているんですよね。
SHINGO★西成 やってるっすよ、変わらず。アルバムのDVD付きのやつには俺の日常を写した映像が入るっすね。
―そうなんですね。
SHINGO★西成 シンゴもあがいて、シンゴもいろいろ考えて葛藤してんねんなっていうのが答えでみんなの日常とよく似てるんやけど。その姿を気の知れたカメラマンが撮ってくれたPVが5本入んねん。俺の好きにやらせてくれた昭和レコードに感謝しながら、今できることを今できる人が今できる環境で今できる行動というか気持ちでやった。
―空いた分、初心に戻って改めて伝えたい部分があったんじゃないですか?
SHINGO★西成 曲名でもあんねんけど、ポジティブに「いてもうたらええんちゃう」思うて。いろいろ価値観あるけど、いろんな奴おるけど、それぞれが一生懸命やりたいこと好きなようにやったらええんちゃう。1年に1枚ぐらい(アルバムを)出さなあかんと般若も言うとるように、俺も思てたけど案外できひん自分がまだおることに気づいて。それがでけへんかったからしっかりせなあかんなと思うて。俺は必死にっていうか、一生懸命アホやって相変わらず、愛100%かヘイト100%の曲に自分らしさというか遊びゴコロを入れて。ネガティブに聴こえる曲も真にはポジティブがあんねんでって。
―愛のあるディスですね。
SHINGO★西成 ホンマホンマ。愛があるからディスれるわけやからね。愛がないやつが聴いたらただのディスって思うかもわからへんけど、それはそれでええんちゃう。別に方程式じゃない。いろんな価値観がある。
―100人いたら100人全員を振り向かせようとは、そもそも思ってないってことですね。
SHINGO★西成 そんな、100人が100人納得させる歌を作ってるなんて言うアーティストが逆にいたら「嘘つき!」言うたるわ。
―今作にもある「SHINGO★西成はFuck Youって言ったらアカンの?!Fuck You!」はそれを象徴する部分かと。
SHINGO★西成 そこは思ってくれておおきに。「心と懐が~」とか「頑張ってれば~」とか、「生きる~」とかって言葉は、元々あんまり好きじゃないから。20代の時はセイホーを使うのもめっちゃ嫌やったし。背伸びしたり、きどったり、いきったりした時があったからこそ、今はなんかもうええんちゃうって。人生いろいろあるし人もいろいろやし、価値観もいろいろあるけど、いろいろあって人生や。いろんなスタイルのラップがあって、このジャンルや。一個だけのスタイルに固まってる国なんか逆に気持ち悪いなって思うし、いろんな考えがあってそれを受け入れるヒップホップとかレゲエとか音楽であればいいと思ってるから。
(後編へ続く)
【TRACK LIST】
01. ひらきなおる [Track by PENTAXX.B.F]
02. 鬼ボス feat. J-REXXX [Track by DJ FUKU]
03. 絶句☆ニッポン feat. TAK-Z, KIRA [Track by grooveman Spot]
04. すんまへん [Track by TRAMPBEATS]
05. GGGG [Track by PENTAXX.B.F]
06. 祭り [Track by TRAMPBEATS]
07. 一等賞 [Track by maruhiproject]
08. あんた [Track by DJ AK]
09. KILL西成BLUES [Track by SPIN MASTER A-1]
10. Fuck You, Thank You ほな、さいなら [Track by NAOtheLAIZA]
11. ええやん [Track by Michael James]
12. ここから・・・いまから [Track by NAOtheLAIZA]