16日、Amazonがアメリカのスーパーマーケット大手「ホールフーズ・マーケット」の買収を発表した。ホールフーズは自然食品に重点を置く、高級志向のスーパーチェーンで、北米などで460以上の店舗を展開、売上規模は全米で10位にランクイン。Amazonのジェフ・ベゾスCEOも「多くの人に愛されている。それは最高の自然有機食品を提供し、健康的な食品を楽しく食べられるようにしたからだ」と評している。
16日のニューヨーク株式市場では、Amazonの生鮮食品市場参入により販売競争が激化するとの見方が広がり、小売最大手「ウォルマート・ストアーズ」の株価が前日比-4.65%と急落した。
今回、何と言っても特筆すべきはその買収額だ。その額は137億ドル、およそ1兆5000億円と、Amazonの企業買収では過去最高額になる。これまでも靴や衣料などの通販業「ザッポス」を12億ドルで、ストリーミングサービスの「ツイッチ」を9億ドルで買収してきたが、それらに比べても、今回の巨額さが目立つ。
一体なぜ、ホールフーズの買収額はこれほどまでに高いのか。ホールフーズは全食材がオーガニックで、客層の年収も高めだ。社会学者の水無田気流氏は、「車で乗り付けてどんどん買っていくような大型の量販店と対比されるのがホールフーズ。Amazonのような時間を圧縮させて規模を拡大するような、まさに"資本主義"のイメージと、ブランドが合うのかが気になる」と話す。
「それでも買う価値があるし、業績に陰りが見えていたので、むしろお買い得だった」と話すのは、「BUSINESS INSIDER」副編集長の伊藤有氏。伊藤氏はホールフーズ買収により、生鮮食品を販売する自社サービス「アマゾン・フレッシュ」を強化することが狙いと推測する。また、現在の店舗を利用しての店舗受け取りサービスを展開する可能性を指摘、「業績が悪いのにそのまま買っても仕方がない。例えば人を減らすことも当然あり得るだろうし、ある程度オートメーション化されることもあり得る」とした。
アメリカで今回の買収はどのように捉えられているのだろうか。ニューヨーク在住のジャーナリスト、中村英雄氏は「ホールフーズは2012年からずっと業績が悪く、大手のスーパーチェーンに買われるのではないかという予測もあった。起こるべくして起こったこと」と話す。最近ではエコバッグが日本人女性の間でも人気になっている「トレーダー・ジョーズ」などに押され、業績が伸び悩んでいたのだ。
今回の買収についてNYタイムズは「Amazonにとっては実験台のモルモットを飼ったようなものだ。最高額での買収だが、Amazonの資産からすると3%に満たない。ホールフーズの顧客リストが全部手に入り、これまでアマゾンが得意でなかった高級層を取り込める」と、両社のシナジーを指摘している。
伊藤氏によると、今後Amazonはホールフーズがすでに提供している「買い物代行業」や、ウォルマートなどが提供する「店舗受け取り」といったサービスを拡充する可能性があり、それはまさにスマホ、カード決済の普及が進んでいるアメリカでビジネスチャンスになるとした。
これまで大小様々な企業70社以上を買収してきたAmazon。Amazonは一昨年にシアトル、先月にはニューヨークでリアル書店「アマゾン・ブックス」をオープン。さらにドローンを使った配達システム「プライム・エア」の開発や、音声認識システム「アマゾン・エコー」の販売も進めている。一体、Amazonはどのような未来を目指しているのだろうか。
伊藤氏は「すべてのものをAmazonで買わせるという世界ではないか」とし、「Amazonがないと生活が成り立たないというところまで、ほとんど利益を出さずにビジネスを広げて、そこから全部総取りするのではないか」と話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)